(公開日:2020.06.23)
【タイ 水の事故予防事業】障害のある子どもたちを水の事故から守るために
- タイ
都市部においても川や湖などの水資源が豊富にあり、洪水やサイクロン、津波などの自然災害が多発するタイでは、毎年約500人から800人の15歳以下の子どもたちが水の事故に巻き込まれて亡くなっており、水の事故が子どもの死亡理由の1位となっています。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちが安全に暮らせる社会を目指し、2019年3月より、バンコク市内の学校を対象に2年間の水の事故予防事業を開始しています。
心肺蘇生法についての講習を受ける子どもたち
事業1年目には、学校側に子どもの水の事故予防に対する関心と、積極的に活動に協力する意思があることを基準に、公立と私立の小学校計8校を事業の対象校としました。
セーブ・ザ・チルドレンは、まずこの8校の教師たちに対する指導者研修を実施し、その後、各学校で、この研修を受けた教師が中心となり、各学校で子どもたちに対する水の事故予防のための講習や、泳法訓練、救命のための訓練を実施しました。
子どもたちは、どのような場所で水の事故のリスクが高まるのか、どのように事故を予防するのかなどについて学びました。また、泳法訓練では、水の中で救助を待つ間にとるべき姿勢を練習し、救命のための訓練では、ロープやペットボトルなど水に浮くものを使い、溺れそうになっている人を安全に救助する方法や心肺蘇生法を学びました。
また、特に障害のある子どもが水の事故に巻き込まれるリスクが高いことから、本事業では、障害のある子どもが水の事故予防についての知識を理解・習得しやすいように教えるための教師向けガイドラインづくりや、障害のある子どもを水の事故から守るために国レベルでのプログラムが実施されるよう、教育省などへの働きかけも行っています。
事業に参加している学校では、肢体不自由がある子どもや、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など、さまざまな障害のある子どもが学んでいます。そのため、指導者研修では、教師自身が目隠しや手足を固定した状態で水の中に入り、どのように感じるかを考えたほか、ロールプレイを通して自閉スペクトラム症と診断された子どもたちとのコミュニケーションについても学びました。
研修の参加者は障害のある子どもが水の中でどのように感じるか意見交換を行いました
また、ある学校の体育教師は、自閉スペクトラム症の診断を受けた子どもに泳法を教えた経験を他の学校の教師たちに共有しました。「私は、子どもたちの感情をいかに理解し、支えられるかが鍵だと思っています。彼らは、上手に水に浮くことができる時もあればできない時もあります。できない時も、泳ぎたいという気分でないだけである、ということを、私たちは理解しなければなりません。* また、水深が浅いところと深いところがあることや、水中に安全な場所と危険な場所があることを認識することが難しいため、安全性を確認せずに水に入ってしまうことがあることも、理解しなければなりません。」
こうした意見や、ロールプレイなどを通した教師からのフィードバックを得て、セーブ・ザ・チルドレンは、事業1年目に、自閉スペクトラム症と診断された子どもたちを水の事故から守るための教職員や保護者向けのガイドラインを作成しました。2年目にはさらに、他の障害に焦点を当てたガイドラインの作成を進めていく予定です。
すべての子どもたちが予防可能な事故から守られるように、セーブ・ザ・チルドレンは、水の事故予防のための活動を実施していきます。
学校周辺で水の事故のリスクがある場所を分析する子どもたち
本事業は、皆さまからのご寄付および株式会社ファミリーマートからのご支援により実施しています。
(海外事業部 タイ事業担当 福田直美)
*国際的に使用されているガイドラインでは、自閉スペクトラム症の診断基準の一つに、興味や関心の幅が限定されがちであることが挙げられています。
心肺蘇生法についての講習を受ける子どもたち
事業1年目には、学校側に子どもの水の事故予防に対する関心と、積極的に活動に協力する意思があることを基準に、公立と私立の小学校計8校を事業の対象校としました。
セーブ・ザ・チルドレンは、まずこの8校の教師たちに対する指導者研修を実施し、その後、各学校で、この研修を受けた教師が中心となり、各学校で子どもたちに対する水の事故予防のための講習や、泳法訓練、救命のための訓練を実施しました。
子どもたちは、どのような場所で水の事故のリスクが高まるのか、どのように事故を予防するのかなどについて学びました。また、泳法訓練では、水の中で救助を待つ間にとるべき姿勢を練習し、救命のための訓練では、ロープやペットボトルなど水に浮くものを使い、溺れそうになっている人を安全に救助する方法や心肺蘇生法を学びました。
また、特に障害のある子どもが水の事故に巻き込まれるリスクが高いことから、本事業では、障害のある子どもが水の事故予防についての知識を理解・習得しやすいように教えるための教師向けガイドラインづくりや、障害のある子どもを水の事故から守るために国レベルでのプログラムが実施されるよう、教育省などへの働きかけも行っています。
事業に参加している学校では、肢体不自由がある子どもや、自閉スペクトラム症、注意欠陥多動性障害(ADHD)、学習障害(LD)など、さまざまな障害のある子どもが学んでいます。そのため、指導者研修では、教師自身が目隠しや手足を固定した状態で水の中に入り、どのように感じるかを考えたほか、ロールプレイを通して自閉スペクトラム症と診断された子どもたちとのコミュニケーションについても学びました。
研修の参加者は障害のある子どもが水の中でどのように感じるか意見交換を行いました
また、ある学校の体育教師は、自閉スペクトラム症の診断を受けた子どもに泳法を教えた経験を他の学校の教師たちに共有しました。「私は、子どもたちの感情をいかに理解し、支えられるかが鍵だと思っています。彼らは、上手に水に浮くことができる時もあればできない時もあります。できない時も、泳ぎたいという気分でないだけである、ということを、私たちは理解しなければなりません。* また、水深が浅いところと深いところがあることや、水中に安全な場所と危険な場所があることを認識することが難しいため、安全性を確認せずに水に入ってしまうことがあることも、理解しなければなりません。」
こうした意見や、ロールプレイなどを通した教師からのフィードバックを得て、セーブ・ザ・チルドレンは、事業1年目に、自閉スペクトラム症と診断された子どもたちを水の事故から守るための教職員や保護者向けのガイドラインを作成しました。2年目にはさらに、他の障害に焦点を当てたガイドラインの作成を進めていく予定です。
すべての子どもたちが予防可能な事故から守られるように、セーブ・ザ・チルドレンは、水の事故予防のための活動を実施していきます。
学校周辺で水の事故のリスクがある場所を分析する子どもたち
本事業は、皆さまからのご寄付および株式会社ファミリーマートからのご支援により実施しています。
(海外事業部 タイ事業担当 福田直美)
*国際的に使用されているガイドラインでは、自閉スペクトラム症の診断基準の一つに、興味や関心の幅が限定されがちであることが挙げられています。