【新型コロナウイルス感染症】報告書『Protect A Generation』発表 パンデミックが子どもたちやその家族に及ぼす影響が明らかに

セーブ・ザ・チルドレンは報告書『Protect A Generation』を発表し、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)が、子どもたちやその家族へ及ぼす影響について、およそ2万5,000人の子どもや親・養育者からの回答をもとに報告しています。



調査結果から、以下のことが明らかになっています。
・3分の2の子どもたちは、ロックダウン(都市封鎖)の期間に、学校の教師と全く連絡を取っていない。10人に8人の子どもたちが、休校中ほぼ何も学んでいない、もしくは何も学んでいないと感じている。
・新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより収入が半分以上減少した世帯の93%が、保健医療サービスの利用が困難になったと回答。また、貧困世帯のうち45%が、医薬品の購入が難しくなったと回答。
・学校に通っていた時の家庭内暴力発生率は8%であるのに対し、休校中は17%と約2倍になった。
・女子は63%が家事を任されると回答したのに対し、男子は43%であった。
・教育、保健・栄養、メンタルヘルス、セーフティネットへの投資が早急に求められている。


今回の調査結果から、経済的に困難な世帯の方が、そうでない世帯より減収の影響を受ける可能性が高くなることが分かっており、新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、貧富やジェンダーの格差をさらに拡大していることが明らかになっています。

また、今回調査対象となった貧困世帯のうち遠隔学習に必要なインターネットへのアクセスがあると回答した子どもは1%未満であったのに対し、そうでない世帯では19%の子どもがインターネットにアクセスできると回答しました。

さらに、学習教材の購入では、貧困世帯のおよそ37%、そうでない世帯では26%が購入できないと回答しました。ロックダウン期間中、3分の2の子どもたちが教師と全く連絡を取っていないと回答しましたが、東部・南部アフリカ地域ではその割合が10人中8人と増加傾向にあります。


ザンビアに住む、プリスコヴィアさん(17歳)は次のように話します。
「政府には、私たちが自宅で学習できるように、ラジオやテレビ、インターネット教材を配布するといったことに、もっとお金を使ってほしいです。地方に住む子どもや貧困家庭の子どもも、学ぶ機会を得られるようにしなければいけません。私たちの住む地域に、移動図書館が来て欲しいと思います。」

学習に遅れが生じてしまう子どもたちは、学校を退学し、児童労働や児童婚、その他搾取にあう危険性が非常に高くなります。今回のパンデミックは史上最大の教育危機を引き起こしており、セーブ・ザ・チルドレンは、およそ970万人の子どもたちが今年中に復学することができないと推計しています。


エルサルバドルのソンソナテ地域に住むダヤナさん(15歳)

エルサルバドルのソンソナテ地域に住むダヤナさん(15歳)は、次のように話します。
「お母さんは、ベビーシッターの仕事をしていました。でも、この感染症の影響で、仕事に行けなくなってしまいました。いままでも家の掃除はしていましたが、病気にならないようにこれまで以上に綺麗にしなければいけません。生活が変わってしまい、多くの人は、以前やっていたことがもうできないと悲しんでいます。」

さらに、セーブ・ザ・チルドレンの調査によると以下のことが明らかになっています。
・10人中8人以上(83%)の子どもたちがネガティブな感情を抱くことが増えた。
・およそ3世帯に2世帯(62%)が、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの間、栄養価の高いさまざまな食事を食べることができなかった。
・暴力を報告した世帯の19%は、新型コロナウイルス感染症により収入が減った。

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長のインゲル・アッシンは次のように話します。
「新型コロナウイルス感染症は、既に存在していた格差をさらに拡大させました。貧しい人はより貧しくなり、それが子どもたちの保健医療サービスの利用や食料、教育、そして安全へ深刻な影響を与えています。

この世代を守り健康で安定した未来のために、各国政府は緊急に低所得国、社会や経済、政治が不安定な国々に対して債務救済措置を講じ、子どもたちの生活を守ることに投資できるようにすべきです。子どもたちのニーズや意見は、過去数ヶ月間に世界が失ったものを再建するためのあらゆる計画の中心に据えられるべきであり、子どもたちが最も重い代償を払うべきではありません。」

セーブ・ザ・チルドレンは、各国政府に対し、休校中の子どもたちが質の高い遠隔学習教材を利用できるようになること、学習に遅れが生じてしまった子どもたちには補習授業が提供されること、そして、すべての子どもたちが学校再開後に平等な学習環境を得られるようになることを要請します。

将来、パンデミックによる打撃を避けるためにも、特に最も脆弱な世帯を守るために、政府は社会的なセーフティネットと堅固な保健・栄養サービスを構築する必要があります。また、親・養育者向けの体罰のないしつけに関するプログラムの早急な準備も必要です。そして、子どもたちが虐待や搾取などの暴力の被害にあった場合に支援が利用できるよう、ロックダウンの最中もその後も、子どもたちを守るための包括的な子どもの保護の体制の構築と、メンタルヘルスに関する支援も重要です。
■報告書(全文、英語)はこちら
■概要(日本語)はこちら



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