【食料危機 G7に向けて】48秒に1人が飢餓で死亡-アフリカ東部で干ばつ

2022年5月18日に セーブ・ザ・チルドレンとオックスファム(Oxfam)は、ケニアにある研究機関(the Jameel Observatory)と共同で、報告書『危険な遅れ2:無策がもたらす代償(Dangerous Delay 2: The Cost of Inaction)』を発表しました。報告書によると、干ばつによりエチオピアやケニア、ソマリアでは、48秒毎に1人の命が犠牲になっていると考えられ、国際社会は予防可能な災害の発生を防ぐための施策を講じることができていないと指摘しています。


国際社会による対応が遅れた2011年のソマリアで起こった飢饉では、26万人以上(その半数は5歳未満の子どもたち)が犠牲になりました。それから10年以上が経ち、世界はまたしてもアフリカ東部での壊滅的な飢餓を防ぐことに失敗しています。

現在、ソマリアとエチオピアの一部では、50万人近くが飢饉に近い状態に直面し、ケニアでは350万人が極度の食料不足に陥っています。この3ヶ国で極度の食料不足に直面する人の数は、2021年の1,000万人以上から2300万人以上となり、昨年比2倍を超えています。

こうした状況の背景には、10年間で3倍以上に膨れ上がった深刻な債務があり、2012年の207億米ドル(約2兆6,758億円)から2020年には653億米ドル(8兆4,410億円)になっています。債務返済のために公共サービスや社会的保護のための費用が削られています。

この地域の深刻化する飢餓の問題を、ウクライナでの紛争をはじめさまざまな危機がさらに悪化させており、緊急支援の呼びかけに対する各国政府からの資金拠出は著しく不十分な状況です。

報告書は、2011年以降の人道支援の仕組みについて検証しています。2017年のアフリカ東部の干ばつでは、人道支援の改善により広範囲で飢饉の発生が予防できたものの、政府や国際社会による対応の大半は、現在起こっている事態を防ぐためにはあまりにも遅く、限定的なものにとどまっていることを明らかにしています。

また、報告書では、早期警報システムの改善や、地域で活動するNGOの尽力にも関わらず、硬直した官僚主義と利己的な政治的選択が、世界が一丸となった行動を阻み続けていることを明確にしています。

 G7をはじめとする先進国は、新型コロナウイルス感染症やウクライナ紛争などのさまざまな世界的危機に対し内向きの姿勢に終始し、開発途上国に約束していた支援を撤回し、債務で破綻寸前に追い込んでいます。

そして、アフリカ東部の各国政府は、対応の遅れや足元の危機の深刻さを認めることを拒んできたこともあり、自らも責任を負っています。気候変動や経済的危機など、飢餓の要因に人々がより適切に対処できるよう、農業や社会的保護システムに十分な投資を行ってきませんでした。

報告書は、支援国政府や機関が、危機対応の最前線で活動する地域のNGOをはじめとする組織をないがしろにするという失策を繰り返したため、支援の準備が整っていたにも関わらず、対応がさらに遅れたことも指摘しています。

気候変動に起因する干ばつは、紛争による故郷からの避難や、新型コロナウイルス感染症流行による経済の混乱が重なり、人々の最後の対応能力をも奪っています。また、ウクライナで起こっている紛争で、すでに高騰していた食料価格が過去最高水準にのぼり、数百万人が食べ物を購入することができなくなっています。

加えて、ラニーニャ現象は、アフリカの角地域の干ばつをより深刻かつ長期化させ、この40年間で最悪の事態をまねいています。干ばつは、経済的な蓄えや家畜の数、人の健康へ深刻な影響を及ぼし、毎日十分な食事をとれない人が驚異的に増加している主な要因となっています。一方、この地域は、世界の二酸化炭素排出量の0.1%を占めるのみで、気候危機に対する責任を最も負っていない地域の一つです。

エチオピアやケニア、ソマリアに対して、現在、国連は44億米ドル(約5,687億円)を緊急支援として各国政府に対して拠出を呼び掛けていますが、そのうち、これまでに正式に資金が提供されたのはわずか2%にあたる9,310万米ドル(約120億3,460万円)です。2017年には、この3ヶ国に対して、19億米ドル(約2,456億万円)の緊急支援が届けられました。国際社会は4月に14億米ドル(約1,810億円)の支援を約束したものの、恥ずべきことに、そのうち新たな拠出はわずか3億7,750万米ドル(約488億円)でした。

セーブ・ザ・チルドレンとオックスファムは、アフリカ東部での飢餓の危機に対応するため、次にあげる措置を直ちに講じるよう訴えます。

●命を救うために、G7と欧米諸国は、国連が要請しているケニアやエチオピア、ソマリアに対する44億米ドル(約5,688億円)の緊急資金を今すぐ拠出し、最も必要とされるところに資金を活用できるよう柔軟性を確保すること

●支援国は、少なくとも25%の資金が緊急・人道支援の中心である現地で活動する支援者が使えるよう担保すること

●ケニアとエチオピア、ソマリアの政府は、国民が複数の影響に対処できるよう社会的保護の規模を拡大する必要がある。2014年のアフリカ連合マラボ宣言での合意に沿って、少なくとも国家予算の10%を農業、特に小規模農家と女性で農業に従事している人たちに対して投資すること

●政府は、政治よりも人の命を優先し、早期警報を認識し行動すること。そして、国家の緊急事態をいち早く宣言し、国の資源を最も必要としている人たちに提供し、気候危機に関連する影響に対応できるよう投資すること

●先進国のなかで二酸化炭素排出量が多い国々は、アフリカ東部地域に気候危機による損失と損害の代償を支払うこと。また、同地域の2021年から2022年の債務を帳消しにし、気候変動の緩和と適応のための支援や資源を提供すること

飢餓の危機に対し早期に対処することは、そこに暮らす人々の命を守るだけでなく、経済的損失を防ぐことにもつながります。米国国際開発庁(United States Agency for International Developmen:USAID) は、ソマリアでの早期対応とレジリエンス(回復力)に1米ドル(約130円)支援した場合、収入と家畜の損失を防ぐことで3米ドル(約400円)の効果があると推計しています。

G7閣僚級会合およびG7首脳会合に向けて、日本を含むG7各国が、世界的な飢餓の問題に対応するためのリーダーシップを発揮することを強く求めます。

■報告書の全文(日本語)はこちら
■報告書の全文(英語)はこちら
PAGE TOP

〒101-0047 東京都千代田区内神田2-8-4 山田ビル4F