全国の新中学1年生・新高校1生を対象に「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 ~新入学サポート2022~」を実施しました

セーブ・ザ・チルドレンは、新入学に関わる経済的負担を軽減するために、経済的に困難かつ生活上で特定の困難がある世帯の中学生・高校生を対象にして給付金を提供する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 ~新入学サポート2022~」を行いました。

2016年から東北沿岸部において新入学時の給付金提供を実施してきましたが、東日本大震災から10年を一区切りとし、2021年をもって終了しました。2022年より東北沿岸部に限らず、より困難な経済状況や生活上の困難な状況にある子どもたちへの支援を幅広く行うため、対象地域を全国に拡大しました。2022年は1月から募集を開始し、新中学1年生273人へ3万円、新高校1年生358人に4万円、計631人(574世帯)に対し給付金を届けました。




申請時の内容から、どのような子どもたち、世帯が今回の給付金を利用したかご報告します。(申請数:631人、きょうだいが利用した世帯もあるため同一世帯の申請も有)

<給付金利用者の属性について>
1. 給付金利用世帯のうち保護者の続柄として母親を選択した申請は全体の85%以上でした。一方、父親やその他の保護者による申請は15%以内でした。

2. 都道府県別の利用者については、東京都からの利用者が一番多く12.8%、続いて福岡県、岡山県、神奈川県での利用者が順に多い結果となりました。地域別でみると、関東地方からの利用が全体の32%、中国地方が16%、九州地方からの利用が15%と続き、全国42都道府県からの利用となりました。

<世帯・就業状況について>
3.申請した世帯をみると、ひとり親家庭世帯が8割にのぼり、約5人に4人になります。

4. 保護者の就業状況については、パート・アルバイトが4割近くとなり、無職も4人に1人にのぼりました。正社員の世帯は1割にとどまっています。

<生活上の困難について>
5.今回は経済的な困難に加え、生活上特定の困難がある世帯の子どもたちを対象としました。申請時に生活の状況について確認したところ、「対象となる子どもや保護者に疾病または障害があり、日常生活を送る上で著しい困難があって支援が必要な状態にあるか、または介護を必要」という世帯が7割近くにのぼりました。

続いて「
対象となる子どもが、本来大人が担うべき役割・責任を抱え、主に疾病・障害などのある保護者や兄弟姉妹・祖父母など生計を同じくする同居家族のケア・お世話をしている」という世帯が約3割でした。「子ども・父母の両方、またはどちらかが日本語を母語とせず、日常生活を送る上で日本語によるコミュニケーションにサポートが必要な状況にある世帯」も1割にのぼりました。



■経済的困難かつ生活上の困難がある子育て世帯の厳しい状況
今回、受給世帯より寄せられた声から、生活上の困難が経済的な困窮に直結している実態が見えてきました*。
*保護者の声は、原文から一部を抜粋し、文意が変わらない範囲で編集しています。

【対象となる子どもや保護者に疾病または障害があり、日常生活を送る上で著しい困難があって支援が必要な状態にあるか、または介護を必要な世帯からの声】

● 母は療養中で長年働いておらず、ずっと収入がありません。今は引きこもっています。(関東・新高校1年生の祖母)

● 母親がうつ病で、自傷行為や暴れるため一人にできない状況です。父親が母親のケアを行っているため就労が出来ず、収入が足りていません。(東北・新高校1年生の父)

● 息子が発達障害であると診断をうけ、日常生活で普通にできる事と、多動性もあり、ついてまわらないと危険が生じてしまうため、フルタイムの勤務が難しいです。特別児童扶養手当を申請しましたがギリギリのラインで許可がおりず、生活がとても厳しいです。(関東・新高校1年生の母)

【対象となる子どもが、本来大人が担うべき役割・責任を抱え、主に疾病・障害などのある保護者やきょうだい・祖父母など生計を同じくする同居家族のケア・お世話をしている世帯からの声】

● 母にうつ病でパニック障害、対人恐怖症、幻聴・妄想があります。母は家事が全くできないので子どもが洗濯や料理をやっており、町内の行事にも子どもが参加。病院にも子どもが付き添ってくれています。(中部・新高校1年生の母)

● 姉、妹が、知的障害があるため、わからない宿題や、食事の準備や後片付けを新高1の息子が手伝ってくれています。パニックをおこす時などは、母では力が足りないので兄と一緒に押さえるなどして、見守りをしてくれます。母は体調の波があるので、息子は大変だと思います。身体が痛いなど動くこともできない日も多々あります。(関東・新高校1年生の母)

【子ども・父母の両方、またはどちらかが日本語を母語とせず、日常生活を送る上で日本語によるコミュニケーションにサポートが必要な状況にある世帯からの声】

● 今、ひとり親になって母親は日本語がうまく話せない状態で仕事探しやコミュニケーションとかの壁があります。(九州・新中学1年生の母)

● 子どもの日本語の理解力がないため授業が困難に近いです。母親は決まった日本語は理解できるが話し方や学校や公共のことについては理解できません。(中部・新中学1年生の父)

● 日常生活にかかわることも、日本語ではできないため、買い物等も子どもの支えが必要。(北海道・新高校1年生の母)

【在留資格がない、難民申請中、無国籍、無戸籍等の理由により公的支援が利用できない世帯からの声】

● 一家全員、在留資格のない難民申請者であり、住民登録もされないため、ほぼ全ての公的支援を受けられていません。(関東・新高校1年生の一家の支援者)

● 父親は難民申請中であり、かつ在留資格がなく(仮放免)、就労できません。父親以外は、父親同様に難民申請中で、特定活動の在留資格があるものの「就労不可」とされており、母親も就労できない状況です。 (関東・新中学1年生の一家の支援者)

■子どもの新入学を手放しに喜べない家計の状況
また、本来であれば喜ばしいはずの子どもの成長に対しても、家計の厳しい状況によって心配や不安を抱える保護者の姿も浮かび上がっています。

● 進学する子どもが3人いるので、高校、中学、小学校と入学が被り、金銭的に余裕がない。父親だけの収入で、コロナ禍で給料も減って生活も厳しいです。(九州・新中学1年生の母)

● 双子が4月に中学入学します。一気に二人分の制服代、運動着、裏履き、靴、カバンなど、かかる費用が2倍なので、いくらかかるのか今から不安です。制服だけでも10万円以上かかると聞いています。その前に小学校のアルバム代や卒業式服など、不安です。(関東・新中学1年生の母)

● コロナ禍における失業からうつ病になってしまい、再就職先もなかなか決まらず、入学資金の工面が難しいです。(北海道・新中学1年生の母)

● 都立高校に娘が合格したが、授業料以外に制服や教材、パソコンなどを購入することが難しいです(関東・新高校1年生の父)

保護者や支援者の声からは、生活上の困難がある世帯では就労でも困難があり、経済的な状況にある様子が浮かび上がりました。そうした世帯においては新型コロナウイルス感染症拡大による影響も受けやすく、新入学に関わる家庭の高い費用負担が家計を圧迫する要因となっています。

そのような状況の中、保護者からは、今回の給付金によって子どもの入学の準備ができたという声も寄せられました。

● 現在私は障害支援事業所でパートをしていますが、体調不良もあり短時間勤務のときもあり金銭的に大変でした。就学援助もありますが、やはり入学には制服から始まり何十万はかかります。娘の笑顔をありがとうございました。(北海道・新中学1年生の母)

● わが家は兄弟も多いため、特に春はお金がかかり、春が近くなることが恐怖でした。子どもたちは普段からあらゆる面で我慢することが多く、申し訳ない気持ちでいっぱいなのですが、この度の給付金で子どもの新生活のために使うことができると思うと嬉しい気持ちでいっぱいです。 (関東・新中学1年生の母)

● ひとり親で親が近くにいない、またコロナ禍もあり、子どもの成長について悩んでいました。経済的にも不安があり、子どもにも焦らせる言葉掛けになっていたところ、このようなご支援をしり、心が軽くなりました。私は1人で子育てをしているのではないと思い、泣きました。本当に感謝致します。(関東・新高校1年生の母)




セーブ・ザ・チルドレンは、今後、今回の給付金でつながった子どもや保護者からより詳細な経済的、生活上の困難について話を聴く予定です。それによって、まだ社会や政策では十分に議論されていないけれども、子どもの学びにとって必要である支援や制度改善はどのようなものがあるかを明らかにしていきたいと考えています。そうした内容をもとに、すべての子どもが環境に左右されず、すこやかな成長や学びの機会を持てるよう、国や自治体に対して行政の支援施策の充実を求めて提言活動も継続していきます。

(国内事業部 岩井)

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