(公開日:2022.10.05)
【報告】Global Financing Facility(GFF)アンバサダー Awa Marie Coll-Seckセネガル国務大臣との懇談会
- アドボカシー
Global Financing Facility for Women, Children and Adolescents は、リプロダクティブ・ヘルスや母子・青少年の健康・栄養(RMNCAH-N)の改善を目的に、2015年に世界銀行内に設立された資金調達プラットフォームです。
国連のミレニアム開発目標(MDGs)から「残された課題」として持続可能な開発目標(SDGs)に引き継がれたこれらの分野について、各国が主体的に取り組む施策の策定・実行を支援し、成果主義に基づいて資金を動員するとともに、各国におけるマルチステークホルダー・プラットフォームを通じて、優先計画の達成に向けた政府、開発パートナー、市民社会、民間企業などの連携を推進しています。
GFFの最大の特長は、事業実施国に対して新たな資金を供与することに加え、既存の資金を効果的に動員するための「触媒」的役割を果たすことで、2030年までに予防可能な理由によって命を落とす3,500万人の母子および青少年の命を守ることを目指しています注。セーブ・ザ・チルドレンも、GFF設立以来、重要な連携団体であり続けています。
対話の冒頭では、事務局長の高井明子より、開会のあいさつを行い、Coll-Seck大臣の来日、本対話への参加を歓迎するとともに、これまでの大臣の業績について紹介がされました。
次に、GFFアンバサダーであるColl-Seck大臣より、GFF設立の経緯やその意義について、スピーチがありました。
まず、2030年までにSDGsを達成するにあたり、すべての努力を集約させ、加速させる、より強固で柔軟なメカニズムが必要であると述べました。
新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、妊産婦死亡率や乳幼児死亡率が上昇するなど、母子保健や家族計画分野におけるこれまでの努力と成果が後退しつつある中、GFFのようなメカニズムが特に重要であることが強調されました。
また、当該分野のすべてのギャップを埋め、コミュニティレベルでの対応が急務であることが指摘されるとともに、政府、NGO、コミュニティなどすべてのパートナーを巻き込んで設置されたメカニズムであることが説明されました。そして、日本も、GFFの重要なパートナーであることを強調しました。
続いて、日本国際交流センター(JCIE)の鈴木智子氏より、コメントがありました。
JCIEでは、2018年より、GFFへの理解をより深めるために、GFFに関する調査、グローバルヘルスの政策決定者向けにセミナーを実施するなどの活動を実施しています。
2019年には、インドネシアとセネガルにおいて、出資の成果に関する調査を行い、結果が共有されました。GFFの特徴として、(1)課題の主流化に貢献していること、(2)各国主導で実施されていること、(3)触媒的役割を果たしてきたこと、があげられました。
また、市民社会の声を幅広く取り入れたことにより、透明性が高まったことなどが述べられました。
鈴木氏からの質問として、触媒的な役割について、どのような指標を以てそのインパクトをアピールできるかという点があがりました。
これに対して、Coll-Seck大臣と、GFFのSenior Partnership SpecialistであるBruno Rivalan氏より、GFFの成果はその触媒的な役割ゆえ、国全体の成果として表れると回答がありました。
たとえば、GFFの事業実施国の一つであるブルキナファソでは、避妊実行率が、22%から27.5%へと上昇し、この数値だけでは、GFFがどれほど直接的に貢献したのか分かりづらいものの、ブルキナファソの地域別データによると、GFFが特に活動を強化した地域で顕著な上昇が見られるなど、成果確認の可能性が示されました。
加えて、医療従事者やコミュニティヘルスワーカーなどの養成を通した母子保健、家族計画分野への貢献が見られること、さらに最も重要な目的および成果として、GFFが事業を実施する国では、すべての関係者や関係組織が協働するよう働きかけるといった話がありました。
参加者との対話セッションでは、GFFについてさまざまな角度から質問が出されました。まず、新型コロナウイルス感染症やウクライナ危機がGFFの活動にどのように影響しているか、またどの程度子どもの栄養問題に注力しているのか、といった点について質問が出されたほか、女性の健康以外の問題、たとえば教育や就労問題とどのように連携しているか、性的搾取など、国境をまたいだ問題にどのように対処するのか、といった質問も出されました。
Coll-Seck大臣からの回答として、まず、新型コロナウイルス感染症拡大により、病院が感染者でいっぱいになり、人々が通常サービスを受けるために病院へ行かなくなるという問題があげられました。
一方で、GFFの資金を使ってトレーニングされた医療従事者によるワクチン接種や予防対策の啓発活動など、柔軟な対応がとられたことが報告されました。
また、栄養不良や飢餓などの国境を超える問題については、全体として重要であるものの、国によって優先順位や対応が異なることが述べられました。
他の問題との連携については、女性を経済的にエンパワーすることで、保健サービスへアクセスしやすくなるように、現金支援などが行われていること、教育とHPVワクチン接種を結び付ける取り組みが行われていることなどが述べられました。
最後にBruno氏より、今後もGFFと日本の市民社会との対話の場を持ち続けていきたいというコメントがありました。
懇談会は、GFFの意義や国レベルのインパクト、マルチステークホルダー・パートナーシップなどについて、日本の市民社会が理解を深める貴重な機会となりました。
今後もGFFの取り組みと成果に注目しながら、連携を進めていきます。
注:GFFについては、日本国際交流センター(JCIE)の『グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)と日本』を参照。https://www.jcie.or.jp/japan/wp/wp-content/uploads/2018/10/GFF-and-Japan_final.pdf