【イエメン】食料危機:タイズ県で現金支援を通した食料安全保障改善事業を開始

中東の湾岸地域に位置するイエメンでは、2011年以降、度重なる戦闘により、これまで1万人以上の子どもたちが死傷しています1


イエメン南西部。破壊された学校と子どもたちによって描かれた花の絵


長引く紛争に加え、2020年からは新型コロナウイルス感染症の流行が国内の経済状況を悪化させています。また、2022年に始まったウクライナ危機の影響から市場に出回る小麦量などが激減したため、食料の平均価格が2018年頃に比べ4倍近くまで急上昇しています2


その結果、食料を手に入れられない人が増え続け、緊急レベルの飢餓に苦しむ人は2022年末までに730万人、5歳未満の子どもでは220万人にものぼると考えられています3。イエメン全土で経済状況が悪化する中、多くの世帯が生活を維持するために日々の食事量を減らしたり、家や土地、家畜や家財などを売ったりしています4


しかし、食料が確保できず、十分な栄養を摂取できない世帯が増加した結果、栄養不良に陥る5歳未満の子どもの人数も徐々に増加し、2021年時点で、保健医療施設で栄養状態を確認した5歳未満の子どものうち、22%が消耗症、45%が低体重、48%が発育阻害と診断されています 5。国連は、こうしたイエメンの食料危機を「史上最悪の飢餓」と呼んでいます 6


栄養不良で保健医療センターにやってきたオマールさん(7ヶ月、タイズ県)


セーブ・ザ・チルドレンは、2017年からイエメンで水・衛生や教育、子どもの保護分野における支援活動を続けてきました。しかし、人々の置かれた状況は、長引く紛争や新型コロナウイルス感染症、ウクライナ危機などさまざまな要因から悪化しています。これらの状況を受け、2022年12月から飢餓が深刻と言われる南西部タイズ県で、現金支援を通した食料安全保障改善事業を開始しました。


この活動では、最も脆弱な状況に置かれた412世帯・2,884人を対象に、食料を購入するための現金を1ヶ月に1回、計6ヶ月間提供します。6ヶ月という期間は、世帯全員の栄養状態が改善するために最低限必要な期間と言われており、栄養不足で命の危機に瀕している子どもを守ることができると考えられています。

上腕部の太さを計測した結果、栄養不良と判断されたナビルさん(18ヶ月、タイズ県)


セーブ・ザ・チルドレンは、イエメンだけでなく、長年栄養不良の子どもたちへの支援を継続してきました。授乳期や幼児期の子どもの栄養不良は、集中力の低下や、健全な発達を阻害し、子どもの将来に負の影響を及ぼします。


銃弾で傷ついたサミルさん(8歳、ホデイダ県)


イエメンに暮らす子どもたちが世界から忘れ去られることなく、健全に成長するための支援をイエメン事務所のスタッフとともに続けていきます。


※本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 金子由佳)

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1.OCHA, “Humanitarian Needs OverviewYemen 2022”, p.75

2. WFP, “Yemen Food Security Update, December 2022”, p.12

3. ユニセフ・FAOWFP共同声明,イエメン史上最悪の飢餓、飢饉レベル5倍増

4. Govt. Yemen, “Yemen Socio-Economic Update, Issue 69 - February 2022”, p.12

5. Govt. Yemen, “Yemen Socio-Economic Update, Issue 69 - February 2022”, p.4

6. ユニセフ・FAOWFP共同声明,イエメン史上最悪の飢餓、飢饉レベル5倍増



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