(公開日:2023.02.24)
【調査報告】国際協力に関する意識調査で、子どもの4人に3人が 「国際協力を進めるべきだ」と回答
- アドボカシー
セーブ・ザ・チルドレンは、日本政府が実施する国際協力がより脆弱な立場に置かれた子どもたちのためになるよう、政策提言活動を行っています。その一環として、2023年1月に、国際協力に関する意識調査を実施しました。これは、子どもを含む市民が国際協力にどのような意識を持っているかを明らかにすることを目的としています。また、2023年前半には国際協力に関する日本政府の方針等を定めた「開発協力大綱」が改定されることになっており、調査から見えてくる日本の子ども・大人の声を新しい大綱に反映させることも目的の一つです。
今回、アンケート結果がまとまりましたのでご報告します。
対象:47都道府県在住の、?15歳~17歳の子ども、➁18歳以上の大人
実施期間:2023年1月27日(金)~1月29日(日)
方法:インターネットリサーチ「Quick」※調査委託先:マクロミル
有効回答数:12,369人
(内訳)15歳~17歳の子ども1,213人、18歳以上の大人11,156人
調査主体:公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
【国際協力を「進めるべき」と答えた人は6割近く、子どもは4人に3人】
「日本はこれからの国際協力についてどのようにしたらよいと思いますか」という質問に対し、「積極的に進めるべきだ」(18%)と「ある程度進めるべきだ」(39%)を合わせると約56%となり、進めるべきだと回答した人は6割近くに上りました。一方、「減らすべきだ」(6%)、「やめるべきだ」(1%)と回答した人は約7%に過ぎず、1割に満たない結果となりました。
同質問に対する子どもの回答を見ると「積極的に進めるべきだ」(35%)、「ある程度進めるべきだ」(40%)と回答した子どもは7割以上、つまり4人に3人の子どもが国際協力を進めるべきと考えていることが明らかになりました。
【ODAに関する国際的な目標の達成も4割が支持、子どもは6割以上】
国際協力に対する前向きな捉え方は、国際的な目標に対する意識でもほぼ同様の傾向が見られました。日本政府および政府機関が公的な資金を使って実施する国際協力活動は、主にODA(Official Development Assistance、政府開発援助)と呼ばれます。ODAの量は、国民総所得(GNI)の0.7%とすることが国際目標として設定されていますが、2021年時点で、日本が拠出した金額は、GNI比で0.34%にとどまっています。
「日本はODAの拠出金額を国民総所得(GNI)の0.7%にするという国際目標を達成すべきだと思いますか」という質問では、「とてもそう思う」、「ややそう思う」を合わせると約40%となり、4割の人が0.7%目標達成を支持していることがわかりました。
同質問の回答を、子どもと大人別に見ると、「とてもそう思う」(10%)、「ややそう思う」(28%)と回答した大人の割合は、4割ほどにとどまりましたが、一方、「とてもそう思う」(25%)、「ややそう思う」(40%)と回答した子どもの割合は6割を超え、大人を上回る結果となりました。
【目的、原則、対象国~「平和と安定のために、人権に負の影響を与えず、最も貧しい国に対して行う】
国際協力に対する意識として、目的(なぜ必要か)、原則(守らなければいけないこと)、重点国(どのような国を対象にすべきか)も聞きました。目的については、「国際社会の平和と安定のため」が53%となり、半数を超えました。原則については、「基本的人権や民主主義に負の影響を与えないこと」が51%で同じく半数を超えました。
また、重点とすべき国は1位から3位を選んでもらったところ、「経済的に貧しい国、貧困・格差が深刻な国」が1位という結果になりました。
【重点分野としては、教育・保健医療などの社会サービス分野がトップ、続いて人道支援】
「日本が国際協力を行うときに、どの分野に重点をおくべきだと思いますか(複数回答)」という質問では、57%の人が、「教育(学校や教員等)、保健医療(制度や人材育成等)などの社会サービス分野の支援活動」と回答しました。次に、「紛争や災害などの緊急時に行う人道支援活動」が45%と続きました。
新型コロナウイルス感染症、紛争、気候変動などの影響により、世界の最も弱い立場に置かれた人々、特に子どもたちの状況はさらに悪化しています。ODAは、開発途上国、特に最貧国や脆弱国にとっては重要な資金源です。ODAを増額して0.7%目標を達成することに加え、日本政府が国際協力の柱としている人間の安全保障の観点からも、より直接的に人々に裨益する社会サービス分野を優先することが非常に重要です。今回の調査結果からも、日本の子ども・大人が国際協力の拡充や保健・教育などの分野を優先することを支持する傾向があることがわかりました。
一方、2019年の「主要DAC(開発援助委員会)諸国の二国間ODAの分野別配分」によると、日本政府の社会サービス分野への配分は13.7%、緊急援助・食糧援助分野への配分は3.6%となっており、それぞれDAC平均の36.5%、14.9%を大幅に下回っています[1]。持続可能な開発目標(SDGs)の理念である「誰一人取り残さない」世界を実現するためには、貧困、不平等や差別、気候変動の影響を最も受ける、最も疎外され周縁化されたコミュニティを優先したプログラムやサービスへの投資を優先させ、それぞれの分野の配分を、少なくともDAC平均レベルまで引き上げることが必要です。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後も日本が国際協力を積極的に推進し、最も脆弱性の高い国や地域の子どもたちの権利の実現に貢献するよう、これからも働きかけを行っていきます。