「高校生、大学生にとって必要な支援とは」-食の応援ボックスを受け取った保護者Fさんの声

セーブ・ザ・チルドレンは、2020年から、経済的に困難な状況にある家庭を対象に、食料品などを提供する「子どもの食 応援ボックス」を行ってきました。


2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響をより大きく受けたと考えられる地域を中心に提供してきましたが、2022年からは対象を全国に広げ、夏休みと冬休みの学校の長期休暇の時期に「子どもの食 応援ボックス」を実施しました。


今回、「冬休み 子どもの食 応援ボックス」を利用した世帯の保護者に、申し込んだ経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。


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「お金がないとか、母子家庭とかで、チャンスを失っちゃうのはかわいそう。そこだけは絶対やらせてあげようと思う。」
(Fさん 関東地方在住)


離婚とけがにより家計がぎりぎりの状況
お話を聞いたFさんは、6年ほど前に離婚し、現在は、高校3年生の子どもと、大学生で地方に住んでいる子どもの3人家族です。
離婚後すぐにけがをして、フルタイムで働くことが難しくなってしまいました。低収入に加えて物価高が続き、家計がぎりぎりだというFさん。再手術が必要な状況にもかかわらず、手術の費用がなく、また、手術のために仕事を長期間休んでしまうと収入がなくなってしまうので、手術も受けられない状況だと言います。


「お肉を控えたりすることが多くて、もちろん、あまりおやつとかを買わないので、少しでも子どもに食料をあげられたらなという気持ちで応募しました」と、応募理由について話してくれました。


「入っていたお餅は、お正月まで取っておいて、この間食べました。お菓子は、子どもがよろこんでいました。自分用っていうのがあるのがよかったみたいで、すぐに部屋に持って行っていました。」


「応援ボックス」が届いたことでお正月の楽しみが増えたことや、子どもにもよろこんでもらえた様子が伝わってきました。


スポーツに関する出費の負担
大学生と高校3年生の2人の子どもは、小さいころからスポーツを続けてきたため、食べ盛りの時期の食費に加え、遠征費やシューズなどの用具代がかさんだそうです。


「部活や遠征におにぎりを持っていくので、お米の消費が多かったです。遠征費用は自腹なので、毎回必要でした。合宿は、新型コロナウイルス感染症流行下のためほとんどなくて、費用がかからずかえって助かりました。スパイクが高い。ダメになっちゃうと(新しいスパイクを)買わないと試合に出られないので大変でした。」


過去にセーブ・ザ・チルドレンによる高校生向けの給付金も利用して、シューズ代や遠征費、合宿費に充てたと言います。


「子どもたちが好きでやっていたので。やりたいということはできる限りやらせてあげたいので、お金がないとか、母子家庭とかで我慢しなければいけないというのは、かわいそうだなと思って。欲しいものがちょっと買えないくらいの我慢はいいけど、ここっていうチャンスを失っちゃうのは。そこだけは絶対やらせてあげようっていう気持ちでした。」


母子家庭向けの貸付制度や奨学金などの制度も使って、厳しい家計の状況でもなんとか子どもたちがスポーツを続けられるようにしてきたFさんの言葉からは、子どもたちの希望をかなえようとする強い気持ちが伝わりました。


行政の窓口の対応次第で気持ちが楽になることも
貸付制度や奨学金、また食料支援などをしている地元の団体のことなども、行政の窓口で相談した担当者がFさんに教えてくれたそうです。




「もし窓口で教えてもらえなかったら、自分で調べたり周りの友だちに聞いたりもできたけど、その窓口の職員さんに会わなかったらもっと大変だったと思う。役所は冷たいと感じたこともあったけど、そこはほんとに、ちゃんと親身に相談に乗ってくれるんだなっていうのがありました。」


一方、Fさんはまったく違う対応も経験したと言います。
6年前にけがをしたときに、収入がなくなってしまうために生活保護を申請しようと病院から行政に電話したときは、元夫から養育費をもらう手続きをすすめられたそうです。
「ここぞという時、本当に助けて欲しいから相談したのにダメだった。助けてもらえないんだなって思いました。」


離婚の条件として元夫が養育費を払わないことに合意したFさんは、それ以上役所で生活保護の話を進めてもらうことができず、残念な気持ちになったと言います。


切実な大学生向け支援の充実
国や社会に伝えたいこととして、Fさんは大学生への支援の充実を訴えます。
現在大学生の子どもは給付型の奨学金を利用していますが、Fさんは「それだけではぜんぜん賄えない。もうちょっと金額があがらないと大学に必要な費用はカバーできない」と言います。これから大学生になる下の子についても、お金の心配は尽きません。


「奨学金を利用しても足が出てしまうので、どこまで持つかなという感じです。大学に行く条件として、子ども自身がバイトをすることにしているので、その辺は苦労をかけます。」


また、医療費も高校3年生までは無料ですが、それ以上は費用がかかるので、特にスポーツを続けている子どものことを考えると、けがをするたびに医療費を払うことに不安があると言います。


「社会人になるまでのサポートということで、必要ある人だけ医療費が無料になる制度を申請できたらいいな。それができたらもっと安心できると思うんです。」


「大学生にももっと支援をしてもらえるとうれしい」というFさんの切実な声を、もっと国や社会にも伝えていく必要があると感じました。




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今回お話を聞いたFさんは、食費や燃料の物価高騰のなかでも子どもたちのために何とか生活をやりくりしようとしていました。しかし、物価高によって全国的にも家計負担が増加する今、個人や家庭の努力だけで解決するには限界があります。


Fさん一家のように、スポーツや進学など子ども自身が経済的な不安を持たずにやりたいことを選択できるよう、特に経済的に厳しい状況にある子どもたちへの支援を手厚くするなど制度改善の必要があります。
また、Fさんのお話からは、生活保護など制度はあるものの、行政の対応によっては実際の利用に結びつかない実態もうかがえました。困難な状況に置かれたとき、最後の砦であるセーフティネットを利用しやすくすることは、子どもや子育て世帯が安心して暮らしていくためにも不可欠です。
2022年にこども基本法が成立し、2023年4月にはこども家庭庁が発足します。政府は「子ども予算倍増」や「異次元の少子化対策」を掲げ、子どもの貧困対策もこども家庭庁が所管することで子ども支援が前進し、拡充されるという期待もあります。


一方、それらの議論は子どもの権利を保障し、経済的状況に左右されずすべての子どもの育ち、学びを保障していくというよりは、子育て支援や少子化対策の色合いが濃いことも事実です。そうした視点はもちろん重要ですが、Fさんのお話でも、子どもたちの学びや育ちが経済的理由、制度の不足によって揺らいでいる状況は明らかです。


今こそ、子どもたちのいのちと暮らし、学びの環境が守られるよう、そして、どのような状況の子どもたちでも自分らしい選択ができるような子ども支援制度の拡充が必要です。セーブ・ザ・チルドレンは、国政においても子ども施策が焦点となっている今、速やかな子ども施策の拡充に向け訴えを続けていきます。


※給付金を受け取った保護者Aさんのインタビューはこちら、BさんCさんのインタビューはこちら
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Dさんのインタビューはこちら、Eさんのインタビューはこちら


(国内事業部 鳥塚早葵)
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