【ロヒンギャ難民支援】生活環境改善事業完了報告

2022年9月1日から2023年2月28日まで、バングラデシュ・コックスバザール県のロヒンギャ難民キャンプにて、水・衛生支援とシェルター(住居)支援を実施しました。6ヶ月間にわたり実施した支援について報告します。(事業の背景や活動の詳細は、事業開始時の記事をご覧ください。)
 

シェルターの設置・修繕に関する能力強化研修に参加するロヒンギャ難民の女性たち


この事業では、水・衛生支援とシェルター支援の2つの活動が行われました。そして、それぞれの活動で、難民の人たちが地域住民と協力しながら自身の能力を活かして生活環境をつくり上げていけるように、支援を行いました。


<水・衛生支援>
給水施設や深井戸、手洗い場、トイレ、水浴び場といった水・衛生施設の老朽化が課題となっていたため、これらの施設の修繕・維持管理を行いました。

活動を通じて、給水施設3ヶ所、深井戸135ヶ所、トイレ324ヶ所、水浴び場96ヶ所、地域の人たちが通う学校6校のトイレ11ヶ所を修繕・維持管理しました。

修繕にあたっては子どもや女性、障害のある人からあげられたトイレや水浴び場などの女性専用スペースの安全性やバリアフリーに関する意見を取り入れたほか、スロープや手すりなどの環境の整備も行いました。

これらの施設を難民の人たちと地域住民が主体的に管理できるように、双方から選ばれた水・衛生委員会のメンバー411人に能力強化のための研修などを行いました。

さらに、地域の衛生環境を改善するため、ロヒンギャ難民と地域の人たちが参加する衛生促進ボランティア28人に対しても能力強化研修を実施しました。

研修後、難民の人たち1万4,221人と地域住民が通う学校の生徒・教員766人を対象に、衛生促進ボランティアが手洗いの方法やごみの管理方法など基本的な衛生習慣を学ぶ衛生啓発セッションを行いました。

加えて、水・衛生委員会や衛生促進ボランティアが中心となり、キャンプで発生するごみの分別や収集、清掃キャンペーンを実施して、2週間に1回キャンプの清掃を行いました。

これらの活動を通して、地域全体で衛生環境を維持することにつながりました。このほか、思春期の女子294人を対象とした月経衛生管理セッションも実施しました。


 難民の人たちと地域の人たちが行った清掃キャンペーン

水・衛生支援を通じて整備されたバリアフリーのトイレを利用するハリマさん(13歳、女性)は次のように話します。
「私がどれほど苦しんできたか、言葉では言い表せません。私は車いすを持っていないので、毎日這って移動しなければならず、外に出ると服が汚れてしまいます。今はトイレで用を足すことができ、手すりも付いているので使いやすくなりました。私はとても幸せで、気持ちよくトイレを使うことができています。」



<シェルター支援>
難民の人たちが自らシェルターの設置・修繕が行えるように、難民の女性53人を対象に能力強化を行いました。

研修参加者は、シェルター設置に必要な竹の扱い方、ロープの結び方、災害に強いシェルターの設置方法などを学びました。

研修を修了した難民の女性たちは、研修後にシェルター設置の現場で働き始め、15世帯分のシェルターの設置を行いました。

この活動を通じて、研修に参加したロヒンギャ難民の女性は、収入を得ることができるようになったとともに、シェルター設置・修繕における女性の働きについて男性や地域から前向きに受容されている様子も確認されました。

このほか、能力強化を行う研修センターに授乳や託児ができるよう女性と子どものためのスペースを設置しました。

  
シェルター支援を通じて能力強化研修に参加したアマナさん(46歳、女性)は、次のように話します。
「能力強化研修で得た学びは、シェルターの設置・修繕方法を理解するうえで役立ちました。シェルターの修繕は自分でできるようになったので、これから誰かの助けを借りる必要はありません。また、シェルター設置に従事することで、私や子どもたちが日々の生活必需品を購入する助けにもなり、今後シェルター設置により多く携わっていきたいです。」


 シェルターの設置・修繕に関する能力強化研修に参加するロヒンギャ難民女性


この事業を通して、多くのロヒンギャ難民の人たちに、安全な水や衛生的な水・衛生施設へのアクセス、安全な住居を届けることができました。

しかし、依然として、ロヒンギャ難民のミャンマーへの帰還の目途は立たず、安全な水や住居、栄養のある食事など、生きるために必要な基本的なサービスは限られています。

その一方で、国際的な関心や支援は、近年縮小傾向にあり、ロヒンギャ難民の人たちは一層困難な状況に置かれています。

そのため、セーブ・ザ・チルドレンは、ロヒンギャ難民の命や生活を守るために不可欠な支援を引き続き行います。

また、難民の人たちが中心となってキャンプ内の生活環境を改善していけるように、今後も難民キャンプで避難生活を送るロヒンギャの人たちに寄り添って支援を行っていきます。

本事業は、皆様からのご寄付と、ジャパン・プラットフォームからのご支援により実施しています。


(海外事業部 松田友美)
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