【インタビュー】子どもと親のしんどさをまとめて受け止められるセーフティネットになりたい:外国につながる子ども支援を行うMinamiこども教室 後編

国内に住む外国につながる子どもたちの割合は年々増えていますが※1、そうした外国につながる子どもたちへの支援は、言葉の支援も含めて十分とは言えません。今回、外国につながる子どもたちへの支援活動を行っているMinamiこども教室の実行委員長 原めぐみさんに、活動が始まったきっかけや活動の中で見えてきた子どもたちを取り巻く課題、国や社会に向けた思いなどを、うかがいました。 


記事は2つに分けて紹介します。前編の記事はこちら 
※1参考:厚生労働省「人口統計資料」(2023)表4-2 父母の国籍別出生数:1987~2021年  

 
Q. 新型コロナウイルス感染症拡大によってどのような影響があったのでしょうか。 

相談に来る保護者は、サービス業の自営業、あるいはインバウンド向けの販売・流通、ホテル清掃の方が多いです。感染症の流行下で収入が途絶えてしまったという相談が2年半ぐらい続きました。その都度、使える制度を調べ、給付金の申請を一緒にしたり、社会福祉協議会と連携したりしました。 

そうした対応は、長期的に大変と感じて転職をした保護者も多いです。今まで夜間の仕事が多かったけれども、その仕事だけでは難しいと気づき、昼の仕事を見つけた人もいます。他の職を探している人たちをできる限りサポートしてきました。  

夜間の仕事で日当を稼いで羽振りが良く見えるんだけれども、いろいろな支払いをして子どもたちの費用を払うと、貯金がない状態の人が多いです。コロナ禍では、明日食べるものを買うお金がないというぐらいに追い詰められていました。そのため2020年5月に、こども教室主催で初めてのフードパントリーをやりました。その後も地域のほかの団体と協力して、定期的に大規模なフードパントリーを開催しています。  


Q. そうした保護者の経済的な状況では、Minamiこども教室に通っている子どもたちは奨学金を利用して大学や専門学校に進学することが多いのでしょうか。 

家族滞在ビザ以外の子どもたちは、JASSO(日本学生支援機構)の奨学金を受けつつ、他の奨学金も組み合わせ、自分もアルバイトしながら頑張って進学しています。  

ただ、中華料理屋やネパール料理のコック、ALT(英語授業の補助教員)や英会話教師の子どもなどで家族滞在ビザの子どもたちは、現時点で大学や専門学校に進学するときにJASSOの奨学金の対象になっていないため利用できません。このことについて、Minamiこども教室は、JASSOに条件を見直すように提言書を送りました。また、地方の企業が行っている小口の奨学金や給付型奨学金などもJASSOの募集要項と同じような書き方で、家族滞在ビザの子どもたちが除外されていることがあります。  

そうした奨学金を使えないことで、子どもたちが進学を諦めることは多いです。国立大学に入るのは一般的に難しく、手に職をつけるために専門学校や短大に行きたいという子が多いですが、学費で少なくとも300万円は必要になります。そこまでの余裕はないし、それを全部自分が負担できるようにアルバイト漬けになると、勉強する時間がなくなります。  

さらに家族滞在ビザの子どもの場合、就労時間が週に何時間と決まっているため、大学・専門学校の費用のために働いて貯めることもできません。奨学金を利用できないと進学が無理に等しい状況です。親が入学金を身近な人から借りて、給料が出るたびに、ちょっとずつ返していくとこともあります。 
 


 
Q. 子どもたちとの関わりの中で、どのような子どもの権利が守られていないと感じますか。また、そうした子どもの権利が保障されるために、国や社会にはどのようなことが求められますか 

教育を受ける権利は守られていないケースがあります。先ほどのように、大学・専門学校への進学が経済面や制度上、難しいことがあります。また、こども教室にはヤングケアラーの子どもが多く、教育へ影響があることがあります。 

保護者が忙しく、年上のお兄ちゃんお姉ちゃんが、年下の子どもの世話をするために不登校気味になることや、保護者の日本語をサポートするために学校に遅刻することもあります。赤ちゃんが熱を出したときに、病院に小学校の子どもを通訳として連れていくことなどよくあります。行政の窓口に行くときに子どもを連れていくこともあります。そうしないと保護者も生きていけない、それ以外の術がないのです。子どもたちは通訳ケアや書いたり読んだりといった行政の事務手続きのケアも担っています。そういった意味で、全体として教育を受ける権利について課題が多いと感じます。 

こども教室には日本で生まれ育っていても母語が上手に話せる子どもが多いです。保護者とコミュニケーションが取れないといろいろな意味で生活に支障を来してしまうからだと思います。それが感覚的に分かるから、最低限度の母語ができるのではないでしょうか。 

また、外国人の保護者のSOSの中で、夜の仕事で出会った人から暴力を受ける、あるいはパートナーから金銭的に援助を受けているため逃げられず、家の中でDV状態から抜け出せないなど、暴力に巻き込まれてしまうケースが多々あります。その暴力を子どもたちが見る、あるいは母親のパートナーから実際に子どもが暴力を受けることもあります。子どもが守られる権利が侵害されてしまう状況があり、対応が難しかったこともありました。  


Q.そうした子どもたちの教育を受ける権利や守られる権利が保障されるために必要なことはなんでしょうか。 

私たちができることは限られていますが、Minamiこども教室は地域の力を信じて活動しています。保護者はもう120%頑張っているから、これ以上の圧力にはなりたくないと思っています。できる限りずっと伴走者として、保護者にも子どもたちにも一緒に課題解決できる相談窓口であり、信頼できる相手でありたいと思います。 

きっかけとなった事件では、SOSを出せなかった人たちがいて、そこにSOSを出しやすい環境や関係性づくりをしていく必要があります。そうした活動は保護者や子どもたちに近い人がやるべきだと思います。そういう地域の力を信じながら、地域のサポートのネットを張り巡らせていきたいです。 

どの地域にもこういうお節介なおじさんおばさんが居て、同じような熱意を持った団体がそれぞれの地域で活動をし、つながっていけたら良いなと思います。こども教室で誰かとつながったり、専門家に実際のケースを請け負ってもらったりなどネットワークも大事にしています。 

自分たちが、個々の人たちができることに思いを巡らせるだけでも変わってくることもあると信じています。そうしたことで子どもたちの権利を守ることにつながっていくと思っています。 


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今回話を聞いたMinamiこども教室は、そこに通う子どもたちや相談に来る保護者たちに寄り添い、困りごとをまるごと受け止めて一緒に解決していこうと活動を続けています。こども教室につながる世帯には、女性、外国人、ひとり親家庭であるという保護者の状況が複雑に絡み合い、経済的な困窮につながっているケースが多いと、原さんは話します。 

そうした幾重にも重なる困りごとに寄り添いながら必要な支援を届けるネットワークが、今、地域で求められているのではないでしょうか。セーブ・ザ・チルドレンは、今後も外国につながる子どもたちの生活状況や学びの環境について当事者や支援者の話を聞き、こうした仕組みづくりや制度の改善を訴えていきます。 

(報告:国内事業部 岩井) 


 
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