【インタビュー】子どもと親のしんどさをまとめて受け止められるセーフティネットになりたい:外国につながる子ども支援を行うMinamiこども教室 前編

日本国内に住む外国につながる子どもたちの割合は年々増えていますが※1、そうした外国につながる子どもたちへの支援は、言葉の支援も含めて十分とは言えません。今回、外国につながる子どもたちへの支援活動を行っているMinamiこども教室の実行委員長 原めぐみさんに、活動のきっかけや活動の中で見えてきた子どもたちを取り巻く課題、国や社会に向けた思いなどを、うかがいました。  


記事は2つに分けて紹介します。後編の記事はこちら 
※1参考:厚生労働省「人口統計資料」(2023)表4-2 父母の国籍別出生数:1987~2021年  


Q. Minamiこども教室は、現在、どのような活動をされていますか。 

外国につながる子どもの学習支援・居場所づくりと保護者の相談事業の二本柱で活動しています。小学生のための学習支援教室は、週に1回夕方に行っています。塾のように勉強させることが目的ではなく、そこに帰属意識や居場所があることを感じてもらえるようにしています。何でも悩みがあったら打ち明けられるような関係性をつくる、行ったらちょっとホッとできる、そしてそこに来る子ども同士のつながりを大切にしています。  

教室では学校の宿題のサポートや日本語の補助的な指導も行います。「今日は勉強したくない」、「色ぬりだけする」、という子がいるときは、スタッフが隣に座り子どもの様子を見守ります。「何か変わったことがあったのかな」と思いを巡らせながら、子ども同士でケンカしたとか親との間で何かトラブルがあれば、学校と連携したり家庭訪問に行ったりします。  

保護者の相談事業については、新型コロナウイルス感染症の拡大以降、多くの方がサポートを必要とする状況となったためシステム化し2020年度に相談窓口として開設しました。複雑な家庭環境にある子どもも多く、生活や学校など保護者の困りごとについてあらゆる相談を受けて対応しています。  

Q. Minamiこども教室の活動が始まったきっかけはなんですか。 

活動のきっかけは、大阪市で起きた外国籍母子の無理心中です。当時、この事件を機に、この地域が特に外国につながるシングルマザーが多いことが分かってきました。そこに支援の枠組みが存在しなかったために起こった悲しい事件でした。こうした事件を二度と繰り返させない、子どもと親のしんどさをまとめて受け止められるセーフティネットになりたいと2013年に活動を開始し、これまで10年活動をしてきました。 



Q. 子どもたちや保護者が安心してMinamiこども教室の活動に関われるように工夫したことを教えてください。 

亡くなった子どもが通っていた学校の校長先生がMinamiこども教室の発起人として立ち上がり、子どもの人権を守るのは学校だけではできない、地域を巻き込んで、みんなで一緒に解決していこうというスタンスだったのは大きいです。「校長先生が誘ってくれてるなら大丈夫」と、Minamiこども教室への保護者の心理的なハードルが低くなりました。 

ただ、保護者の相談事業への関心は低く、相談に来てもらうのには時間がかかりました。保護者は夜の仕事で昼夜逆転した生活をしていたり、日々回していくので精一杯な状況だったりと、こども教室に出向いて何か相談するまではいかなかったのです。 

 最初は子どもたちから、お母さんがしんどそうだとSOSを聞くこともありました。そこから家庭訪問をして、お家のことを少しずつ聞くことを積み重ねました。「いつも子どもの勉強を見ている先生だよ」、というのを皮切りに少しずつ慣れていってもらいました。  


Q. Minamiこども教室が外国につながる子どもたちの支援で補っている部分とは何でしょうか。 

私たちが活動する地域の小学校には、外国につながる子どもたちが多く通学しているため、日本語指導員のいる日本語教室があります。日本語指導の必要な子どもたちは、取り出し授業という形で日本語教室に通います。しかし、人数が多いことと制度の運用上、ある程度話せるようになったら日本語教室を卒業します。基礎的な漢字を書けるようになったところでまでで、学習言語としての日本語はままならない状況です。 

さらに、来日したばかりの子どもたちが優先的に日本語教室に入るので、日本生まれ日本育ち、あるいは幼稚園ぐらいのときに来日した子どもたちは日本語教室で学ぶ優先順位が下がってしまう状況があります。そのため、十分な日本語学習を受けることができず子どもたちも言語、学習面で大きなしんどさを抱えます。そうした子どもたちは家庭内言語が日本語でない家庭も多く、日本語の語彙力が付きにくく、学習言語が追い付かないことがあります。 



学校はカリキュラムに従って進まざるを得ないので、そうした学校のジレンマをMinamiこども教室が補完して学習サポートを行います。私たちの教室では自主的に絵本の読み聞かせをしたり、絵本を使った対話的な学習を取り入れたりして日本語の学習も行っています。 


Q.自治体ごとの学校の日本語支援の差は子どもたちにどのような影響がありますか。 

日本語支援の制度が整っていないこともそうですが、教育委員会によって支援の方針が異なり、来日し住んでいる市区町村あるいは都道府県によって、受けられる支援体制が異なるのは問題だと感じます。活動の中心としている学校では、こうしたサポートを受けられるのに、隣の学校へ行ったら全然違うということもあり、子どもたち、保護者たちはとても混乱します。 

以前、こども教室に通っていた子どもで、他区に引っ越した家がありました。校区が違うので別の学校に行くことになりましたが、学校の対応も受けられる支援も、そして雰囲気も異なり、子どもが「こんなはずじゃなかった」、「なんであそこの学校に行っちゃったんだろう」と、こども教室に来て泣き出したことがありました。しんどくなって、不登校になってしまった子どももいます。どこの学校や地域に行っても同じように、制度や雰囲気に、外国につながる子どもを受け入れる度量があってほしいと感じます。 


Q. 外国につながる子どもたちと貧困との関連性を感じることはありますか。 


外国につながっているから貧困と関連性があるということではなく、外国につながっていて、かつ、女性でひとり親であるというところで三重苦を抱えている保護者が多いです。こども教室に来ている子どもたちの約7割が母子家庭で、その状況がマイノリティではないので、いじめられたり孤立したりすることはありません。外国人であることもそうだし、ひとり親だということも恥じていません。 

それでも大学進学のタイミングで経済的な壁が出てくるため、そこに貧困の連鎖はあると感じます。こども教室に小学校の頃から来ている子どもたちから大学に行きたいと相談を受けることもありますが、これまでのお母さんとのやり取り、お母さんの生活状況、他のことを考えても、進学は難しいと判断することもあります。なるべく色々な奨学金を紹介したり、奨学金の書き方を見たり、作文の手伝いをして、進学したい子にはできるようサポートしています。 

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Minamiこども教室は、外国につながる母子家庭の無理心中をきっかけに活動が始まり、外国につながる子どもやその保護者の困りごとを受け止められるよう地域で活動を続けています。そうした活動の状況から、現行の学校制度では外国につながる子どもたちへの言語の支援や安心できる居場所づくりが十分ではないといった社会の課題も浮かび上がります。 

続いて、後編の記事ではMinamiこども教室の活動の中でも感染症による影響や困難を抱える子どもたちの状況についてお聞きしました。 

後編の記事はこちら⇒https://bit.ly/3uASgwy 
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