【報告】あらゆる子どもにまなびと体験の機会を-NPO向け助成プログラム「まなび・体験ファンド」2023年実施

子どもにとって、多様なまなびや体験を得ることは成長に欠かせない大切な権利ですが、経済的困難、障害のある、外国ルーツを持つなどの状況にある子どもたちは機会を十分に得にくく、体験格差が広がっている現状があります。

セーブ・ザ・チルドレンは、あらゆる子どもにまなび・体験の機会を保障することを目指して、非営利団体(NPO)向け助成プログラム「まなび・体験ファンド」を、2023年から行っています。

日本各地のNPOは、団体の専門分野や地域の特徴などを活かしながら、子どもたちに対してまなび・体験を提供する活動を多様に展開しています。子どもや保護者の個別ニーズなどにきめ細やかに対応しながら、身近で、しかし学校や家庭などとは違う場でのまなび・体験の機会を保障するためには、こうしたNPOの活動が欠かせません。

このプログラムではそうした活動を支援することにより、子どもの育ち、まなび、遊び、参加などの基本的な権利が守られることを目指しています。

2023年は、特に取り残されがちな子どもたちや保護者へ向けたまなび・体験の事業を行うNPOに対し、事業資金の提供と子どものセーフガーディング研修を行いました。夏休み期間である7月~9月の活動を対象とし、全国6団体の事業に助成を行いました。

助成対象団体および事業の詳細はこちら

このうち、団体の専門性や地域の特徴が発揮された例として2団体の事業の様子を紹介するとともに、今年の実施状況を報告します。


■NPO法人オルフルド「なつやすみ自然宿泊体験」(事業実施地:静岡県富士市)

オルフルドは東京都目黒区に拠点を置き、東京都や神奈川県の学校などで障害のある子どもの訪問支援を行っている団体です。

障害のある子どもたちが自然に触れる機会が極端に少ないことから、障害児支援の専門スタッフがサポートして安全に自然宿泊体験をできる機会をつくりたいと考え、今回の事業を企画しました。

8月、静岡県富士市の「富士山こどもの国」において1泊2日で実施され、参加した小中学生8人はいかだづくり、アスレチックなど多様な遊びを楽しみました。
遊ぶ内容は「子どもミーティング」で話し合い、それぞれの希望に合わせ小グループに分かれて行動しました。また、昼食で食べるものは自分で選ぶというように、全体を通して子どもの意思を尊重する活動方針となっており、子どもたちは終始リラックスした表情で過ごしていました。

参加後、子どもたちは「初めて一人で泊まって不安だったけど、みんなが優しくしてくれて寂しくなかった。」「いかだを初めて自分で作って漕ぐことができた。本当に水に浮かんで乗れたときは嬉しかった。」と感想を教えてくれました。保護者からも「強要されることを嫌うのでとても居心地が良かったようでした。」「お迎えに行ったとき、第一声が楽しかった!でした。」といった声が聞かれました。

団体からは、「障害や特性によって手数が多くかかることは想定内で案内、募集をしたが、保護者からは『迷惑をかけるのではないか』という心配が先立つことを改めて実感した。」という報告がありました。

障害のある子どもたちについて、保護者も心配することなく体験活動に送り出せることが少ない現状が感じられます。

また、「事前打ち合わせを2回行い、子どものセーフガーディングについて危険な事例の洗い出しなどを丁寧に行った。」との報告もあり、セーフガーディングの観点からリスク削減の取り組みが進められたこともわかりました。


■NPO法人きらり水源村「水源ファミリーキャンプ2023」(事業実地地:熊本県菊池市)

きらり水源村は、閉校となった中学校を拠点に地域づくりや野外体験などの活動を行っている団体です。今回の助成対象事業では、九州各県からひとり親家庭の親子37人が、9月に1泊2日のキャンプに参加しました。本プログラムの助成金は、参加者の交通費やプログラムの実施費用に活用されました。


キャンプ初体験という参加者も多かったですが、互いに協力してテントを張り、火おこしをして羽釜でご飯を炊くことに挑戦しました。竹とんぼや焼きビー玉づくり、そしてメインイベントの川遊びなどもたっぷりと楽しみました。

一方で、休みたいときにはいつでも休憩できるなど、ゆとりを持たせた運営の工夫もなされていました。


子どもたちからは「夏の思い出ができて、楽しかった、美味しかった。」など、キャンプを楽しんだ声が多く聞かれました。また、保護者からは「ふわっとしたやさしい雰囲気が安心できてよかったです。」「キャンプは初めての体験で、母一人では挑戦する勇気がありませんでした。」「何より金銭面での補助が本当に有難かったです。」などの声がありました。

団体スタッフは「シングルファミリー対象のキャンプは初実施でした。『楽しかった!』の声を多くいただき、スタッフも充実感を感じています。」と手応えを語っていました。

紹介した2団体以外からも、「子どもたちにも好評だったので、こうした機会を増やし、さまざまな困難を抱える子どもたちのレクレーションや語り合いの活動を企画していきたい」「子どものセーフガーディング研修を受けて、ほかの事業のスタッフとも共有や誓約書の読み合わせをしました」など、事業の結果が報告されました。

今回の実施結果から、日頃、まなび・体験の機会が得にくい子どもたちも、NPOの取り組みにより個々のニーズにあったサポートを受け、また、地域ならではの特徴を活かした活動に参加できることがわかりました。

「まなび・体験ファンド」による助成は、2024年も実施する予定です。子どもの権利を保障する活動が一つでも多く、安心・安全に実施されるよう、セーブ・ザ・チルドレンは今後も地域NPOの活動を支援していきます。

(国内事業部 瀬角 南)


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