【ウガンダ】栄養事業:モロト県の生計向上支援と母子栄養指導


セーブ・ザ・チルドレンは、これまでウガンダの西部地域で、母子の栄養改善事業を実施してきました(同事業については、こちら)。


その知見を活かし、2023年3月から、さらに環境が厳しい同国北東部にて同様の事業を開始しました。

北東部に位置するカラモジャ地域には、歴史的に多くの牧畜民が居住しており、主に畜産と雨に頼った天水農業で生計を立てていますが、頻繁に干ばつが発生するため、人々は食料支援に頼らざるを得ない状況です。貧困率も60.2%とウガンダ国内で最も高くなっています [1]。

この地域にあるモロト県では、住民の50%が急性食料不安または人道危機レベルの飢餓リスクにさらされており、4割近くの子どもたちが慢性的な栄養不良の状態にあります [2,3]。


飛行機から見たウガンダ中央部とカラモジャ地方の比較。
右がカラモジャで乾燥しており茶色に見える。


土・藁・木を使った現地で一般的な家屋。

この支援では、妊娠中の人たちと2歳未満の子どもの栄養状態が改善されることを目指し、主に農・畜産業支援を通じた生計向上と、母子栄養に関する保健サービスの改善に取り組んでいます。


これまでの取り組み:
■農・畜産業支援を通じた生計向上
モロト県タパッチ準群で、セーブ・ザ・チルドレンとウガンダ国立農業研究機構の専門家から研修を受けた20人の混合農業普及員が、100人の農民を対象に、農・畜産業に関する技術研修を実施しました。さらに、それぞれが20人からなる5つの小規模生産者グループを設立し、モデル農園を開園しました。

この農園では、グループのメンバーが共同で使用できる農業道具や野菜の種子を提供し、実践的な研修を行っています。

農業には水の確保が欠かせませんが、対象地域では各家庭や農地に水道が引かれておらず、近隣のため池や一時的に水が流れる川、砂地の表面を掘って確保する地表近くの水を水源として生活しています。

これらの水源は農地から離れている場合も多く、農作物への散水が課題でした。そこで、本事業では足踏み式ポンプ(写真、下)を各グループに供与し、モデル農園で使用しています。

自転車のペダルのような足踏みが付いた手動式のポンプで、足で踏むと水をくみ上げ送ることができ、燃料を使わずに動くため、コストもかからず環境にも優しいといえます。また、乾燥した地域に適した生計向上手段として、養蜂の導入を支援しました。



足踏み式ポンプで水をくむ様子

ここで、小規模生産者グループの活動の一部を紹介します。


モデル農園でトマトを収穫する人たち

小規模生産者グループの一つであるロイェラボスグループは、本事業で供与した農業用具を活用し、ササゲ、玉ねぎ、スクマウィキ(ケール)、トマト等の野菜を育てています。

収穫した野菜は、家庭で消費するだけでなく、市場で販売もしています。同グループの秘書を務めるマリアさん(写真、上右)は、「この事業に大変感謝しています。

特に、足踏み式ポンプのおかげで、乾季の間も作物に水やりができています。皆さまのおかげで、私たちの子どもが飢えをしのぐことができます。」と話します。

グループメンバーの農民たちは、肥料や種子などの農業資材を購入するための資金が手元になく、貸付などの金融サービスへのアクセスも限られています。そのため、この事業では、農家の資金調達能力を高めるため、各グループで村貯蓄貸付組合を創設することを支援し、貯蓄や投資についての研修を開催しました。

同グループでは、野菜の販売から得た収入を組合に貯金し、現在までに計450,000シリング (≒18,000円)を貯蓄することができました。


改良式巣箱を持ち帰る人たち

また、別のロラブルグループでは、この事業で供与した改良式巣箱(写真、上)に加え、各メンバーが各家庭で丸太などを用いて伝統的な巣箱を作り、意欲的に養蜂に取り組んでいます。

3人の子どもを育てる24歳のレベッカさん(写真、上左)もグループから供与された改良式巣箱1基に加え、自身で手作りした4基の巣箱で養蜂を行っています。

現在までに、すべての巣に蜂が住み着いていることが確認できており、蜂蜜の収穫を心待ちにしています。「巣箱を供与してくださり、大変感謝しています。

改良式の現代的な巣箱を受け取ったことで養蜂に対するモチベーションが上がりましたが、同時に、伝統的な巣箱の良さにも気づくことができました。」と言います。

同グループのイサックさんも「私たちのグループでは、生計向上のために家庭で養蜂を行うことをメンバーに進めています。養蜂の可能性を気付かせてくださったことに心から感謝しています。」と述べています。


■母子栄養に関する保健サービスの改善
対象準郡の保健サービスを改善するため、同地域の保健医療施設職員と村落保健チームに対し、栄養の基礎、妊娠時から授乳中の栄養管理、乳幼児への授乳と離乳食の与え方などの研修を実施しました。その後、同研修の受講者が中心となり、毎月定期的に母親や地域住民を対象に栄養啓発活動を行っています。

また、村落保健チームによる、村落レベルでの栄養スクリーニング活動も開始し、2歳未満の子どもの栄養状態を定期的に評価し、栄養不良と診断された場合は、子どもの状態に応じ、病院や保健施設へ紹介しています。

さらに、事業地域内の5ヶ所の保健施設に栄養相談窓口を設置し、それらの施設に体重計や身長計、上腕周囲径テープなども備え付けることで、事業地域で乳幼児の栄養・保健に関するサービスを受けられるよう整備をしました。


栄養啓発活動にて調理実習を行う参加者たち


村落保健チームによる栄養スクリーニング


本事業は、日本NGO連携無償資金協力とサラヤ株式会社様、株式会社資生堂様からのご支援により実施しています。

(海外事業部 酒井萌乃)


[1]Uganda Bureau of Statistics- Distribution of Poverty in Uganda across regions2016/17 - Last Updated on 17th February 2020, https://www.ubos.org/explore-statistics/33/

[2]The IPC Population Tracking Tool, https://www.ipcinfo.org/ipc-country-analysis/population-tracking-tool/en/

[3]Ibid. Uganda Demographic & Health Survey 2016, Situation of Food Securityand Nutrition in Karamoja 2022

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