(公開日:2024.11.28)
子どもの貧困と子どもの権利意識、国内最大規模の全国3万人調査結果
半数の大人が子どもの貧困の実態を「聞いたことがない」、5年前から認知度大幅減
貧困解決に必要な施策1位は「高校までの教育無償化」
困窮子育て世帯が求める施策「給付充実」などは、モニター層とは異なる意見に
- 日本/子どもの貧困問題解決
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、「子どもの貧困」と「子どもの権利」に関して国内最大規模となる、「全国3万人意識調査」を2019年以来5年ぶりに実施しました。
本調査は、Webアンケートを用い、全国の15歳から80代以上までの3万人(15歳~17歳の子ども2,163人、18歳以上の大人2万7,837人)を対象に行いました。「子どもの貧困」については、その実態の認知度や誰が解決すべきか、解決のためにどのような施策が必要かなどを聞き、「子どもの権利」については、「子どもの権利条約」の認知度や大切だと思う権利、守られていないと思う権利などを聞きました。
また、経済的に困難な状況にある当事者(子ども、保護者)にも調査を実施し、全国13歳から70代以上までの2,393人から回答を得ました。(13歳~17歳の子ども 177人、18歳以上の大人2,216人)
【報告書全文】: https://www.savechildren.or.jp/news/publications/download/ishiki_hinkonkenri202411.pdf
<本調査で明らかになった主な5点>
【1】 約半数の大人が子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答、2019年調査より大幅に増加
【2】 一方、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として優先度が高いと回答、子ども約8割、大人約6割
【3】 子どもの貧困問題を解決するために必要な施策、第一位は「高校までの教育の無償化」
【4】 経済的に困難な状況にある当事者は「ひとり親への給付充実」など、モニター層とは異なる施策を求めている
【5】 「子どもの意見表明権」は、子どもと大人で認識に大きな差
【1】 約半数の大人が子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答、2019年調査より大幅に増加
2019年調査時と比べて、子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答した大人の割合は28.8%から48.9%と20.1ポイントも増加しました。また、子どもも31.0%から43.7%と12.7ポイント増加。
「子どもの貧困」への社会からの関心低下が危惧される結果となりました。
日本の相対的貧困率は2021年時点で11.5%(厚労省2023年に公表)で、改善傾向にあります。一方で、ひとり親は半数近くが相対的貧困下にあります。
子どもの貧困問題は解消したわけでなく、依然として対策が必要な状況です。
なお、2019年調査と同様に、子どもの権利条約を内容までよく知っている大人は、子どもの貧困の実態の認知度も高くなる結果が見られました。
【2】 一方、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として優先度が高いと回答、子ども約8割、大人約6割
子どもの貧困問題に「とても関心がある」「まあまあ関心がある」と回答した割合は、子どもが60.2%に対し、大人は半数を切る45.8%でした。また、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として「とても優先度が高い」「まあまあ優先度が高い」と回答した割合は、子どもで78.2%、大人で63.7%と高い結果となりました。
子どもの貧困問題への対策を推進していくためには、市民社会の賛同が大きな力となります。
子どもの貧困問題は解決すべきという声が半数を超えた今回の肯定的な結果は、これからの国や行政による取り組みを後押しすると、セーブ・ザ・チルドレンでは捉えています。
【3】 子どもの貧困問題を解決するために必要な施策、第一位は「高校までの教育の無償化」
子どもの貧困対策として国や自治体が取り組むべきと思うことでは、子どもも大人も、モニターも当事者も「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること(制服代や教材費、給食費などを含む)」が最も高い結果となりました。
【4】 経済的に困難な状況にある当事者は「ひとり親への給付充実」など、モニター層とは異なる施策を求めている
経済的に困難な状況にある当事者は、子どもの貧困対策として国や自治体が取り組むべきと思う施策を選択する方が、モニター層の子どもや大人より多く、また、必要と考える施策もモニター層と異なる結果となりました。例えば、「ひとり親に対して給付される制度が充実すること」「子どものいる保護者に対して給付される制度が充実すること」を必要だと7割以上もの当事者の大人が選択していますが、モニター層の大人は25.7%にとどまりました。
本調査結果から、セーブ・ザ・チルドレンは、国や自治体に対し、当事者の子ども・保護者の意見を、より反映した対策を進めていくことを、引き続き求めていきます。
【5】 「子どもの意見表明権」は、子どもと大人で認識に大きな差
子どもの権利条約の中でも中核をなし、こども基本法でも重視されている子どもの意見表明権(自分の意見を聴かれる権利)について、大切だと考える子どもは4割以上だったのに対し、大人は3割未満でした。また、この権利が守られていないと子どもの27.6%が考える一方、大人は18.1%で、8ポイント以上の大きな差があります。
さらに、2019年調査時と比べて、子どもの権利について、そもそも「考えたことがない」と回答した大人の割合は13.3%から19.8%と6ポイント以上増加しました。
国やこども家庭庁において、子どもの権利についての普及啓発が十分ではないことを表しています。
<本調査結果を受けての「セーブ・ザ・チルドレン」の今後の活動>
本調査結果から、子どもも大人も子どもの貧困の認知度は2019年と比べて減少したものの、子どもの貧困への関心度や社会の優先課題であるという認識は高い傾向が見られました。
子どもの貧困率が改善傾向にあるとは言え、物価上昇などによって経済的に困難な状況にある子どもや保護者へのさらなる影響が危惧される今、対策を一層推進する必要があります。
セーブ・ザ・チルドレンは、当事者の子ども・保護者それぞれの声に真摯に向き合いながら子どもの貧困の解消に向けて対策を進めていくこと、より良い対策を推進するために子どもの権利条約のさらなる積極的な普及啓発が必要であることを、こども家庭庁および関係省庁、自治体に訴えていきます。
また、日本社会が子どもの貧困への認知を高め理解を深めるために、子どもの権利に基づいて子どもの貧困を知り、考えられるような社会啓発にも取り組んでいきます。
本調査は、Webアンケートを用い、全国の15歳から80代以上までの3万人(15歳~17歳の子ども2,163人、18歳以上の大人2万7,837人)を対象に行いました。「子どもの貧困」については、その実態の認知度や誰が解決すべきか、解決のためにどのような施策が必要かなどを聞き、「子どもの権利」については、「子どもの権利条約」の認知度や大切だと思う権利、守られていないと思う権利などを聞きました。
また、経済的に困難な状況にある当事者(子ども、保護者)にも調査を実施し、全国13歳から70代以上までの2,393人から回答を得ました。(13歳~17歳の子ども 177人、18歳以上の大人2,216人)
【報告書全文】: https://www.savechildren.or.jp/news/publications/download/ishiki_hinkonkenri202411.pdf
<本調査で明らかになった主な5点>
【1】 約半数の大人が子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答、2019年調査より大幅に増加
【2】 一方、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として優先度が高いと回答、子ども約8割、大人約6割
【3】 子どもの貧困問題を解決するために必要な施策、第一位は「高校までの教育の無償化」
【4】 経済的に困難な状況にある当事者は「ひとり親への給付充実」など、モニター層とは異なる施策を求めている
【5】 「子どもの意見表明権」は、子どもと大人で認識に大きな差
【1】 約半数の大人が子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答、2019年調査より大幅に増加
2019年調査時と比べて、子どもの貧困の実態について「聞いたことがない」と回答した大人の割合は28.8%から48.9%と20.1ポイントも増加しました。また、子どもも31.0%から43.7%と12.7ポイント増加。
「子どもの貧困」への社会からの関心低下が危惧される結果となりました。
日本の相対的貧困率は2021年時点で11.5%(厚労省2023年に公表)で、改善傾向にあります。一方で、ひとり親は半数近くが相対的貧困下にあります。
子どもの貧困問題は解消したわけでなく、依然として対策が必要な状況です。
なお、2019年調査と同様に、子どもの権利条約を内容までよく知っている大人は、子どもの貧困の実態の認知度も高くなる結果が見られました。
【2】 一方、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として優先度が高いと回答、子ども約8割、大人約6割
子どもの貧困問題に「とても関心がある」「まあまあ関心がある」と回答した割合は、子どもが60.2%に対し、大人は半数を切る45.8%でした。また、子どもの貧困問題は解決すべき社会問題として「とても優先度が高い」「まあまあ優先度が高い」と回答した割合は、子どもで78.2%、大人で63.7%と高い結果となりました。
子どもの貧困問題への対策を推進していくためには、市民社会の賛同が大きな力となります。
子どもの貧困問題は解決すべきという声が半数を超えた今回の肯定的な結果は、これからの国や行政による取り組みを後押しすると、セーブ・ザ・チルドレンでは捉えています。
【3】 子どもの貧困問題を解決するために必要な施策、第一位は「高校までの教育の無償化」
子どもの貧困対策として国や自治体が取り組むべきと思うことでは、子どもも大人も、モニターも当事者も「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること(制服代や教材費、給食費などを含む)」が最も高い結果となりました。
【4】 経済的に困難な状況にある当事者は「ひとり親への給付充実」など、モニター層とは異なる施策を求めている
経済的に困難な状況にある当事者は、子どもの貧困対策として国や自治体が取り組むべきと思う施策を選択する方が、モニター層の子どもや大人より多く、また、必要と考える施策もモニター層と異なる結果となりました。例えば、「ひとり親に対して給付される制度が充実すること」「子どものいる保護者に対して給付される制度が充実すること」を必要だと7割以上もの当事者の大人が選択していますが、モニター層の大人は25.7%にとどまりました。
本調査結果から、セーブ・ザ・チルドレンは、国や自治体に対し、当事者の子ども・保護者の意見を、より反映した対策を進めていくことを、引き続き求めていきます。
【5】 「子どもの意見表明権」は、子どもと大人で認識に大きな差
子どもの権利条約の中でも中核をなし、こども基本法でも重視されている子どもの意見表明権(自分の意見を聴かれる権利)について、大切だと考える子どもは4割以上だったのに対し、大人は3割未満でした。また、この権利が守られていないと子どもの27.6%が考える一方、大人は18.1%で、8ポイント以上の大きな差があります。
さらに、2019年調査時と比べて、子どもの権利について、そもそも「考えたことがない」と回答した大人の割合は13.3%から19.8%と6ポイント以上増加しました。
国やこども家庭庁において、子どもの権利についての普及啓発が十分ではないことを表しています。
<本調査結果を受けての「セーブ・ザ・チルドレン」の今後の活動>
本調査結果から、子どもも大人も子どもの貧困の認知度は2019年と比べて減少したものの、子どもの貧困への関心度や社会の優先課題であるという認識は高い傾向が見られました。
子どもの貧困率が改善傾向にあるとは言え、物価上昇などによって経済的に困難な状況にある子どもや保護者へのさらなる影響が危惧される今、対策を一層推進する必要があります。
セーブ・ザ・チルドレンは、当事者の子ども・保護者それぞれの声に真摯に向き合いながら子どもの貧困の解消に向けて対策を進めていくこと、より良い対策を推進するために子どもの権利条約のさらなる積極的な普及啓発が必要であることを、こども家庭庁および関係省庁、自治体に訴えていきます。
また、日本社会が子どもの貧困への認知を高め理解を深めるために、子どもの権利に基づいて子どもの貧困を知り、考えられるような社会啓発にも取り組んでいきます。