(公開日:2024.12.12)
【12月12日はユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)デー】 UHC達成に向けた政府の責任
- アドボカシー
12月12日は、国連が定めたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC: Universal Health Coverage)デーです。UHCとは、誰もが、どこにいても、お金に困ることなく、必要な時に質の高い保健医療サービスを利用できる状態を言います。UHCは、世界保健機関(WHO)が2005年に初めて提案し、その後、2012年12月12日の国連総会で、世界の国々が国際社会の共通目標とすることに合意。そして、毎年12月12日がUHCの大切さを呼びかける「UHCデー」として定められました[1]。
保健医療サービスを必要とする人々は増加の一途をたどり、世界人口の約半数である約45億人が、最低限の必須保健医療サービスを受けることができずにいます[2]。
保健医療サービスへのアクセスを妨げる要因は、物理的なもの、社会的なもの、経済的なものとさまざまで、例えば、医療インフラや保健医療人材の不足、誤情報などによる治療や予防接種に対する疑い、差別などがあります。
中でも、高額な医療費は、UHCを達成する上で最も困難な障壁です。WHOによると、世界人口の約20億人が経済的困難に直面しており、そのうち13億人は医療費の支払いが原因で貧困状態に追いやられています。さらにその中でも極度の貧困に陥っている人口は、3億4,400万人に上ります[3]。
また、総医療費のうち、自己負担額が占める割合の世界平均は2021年時点で28.16%ですが、アフガニスタン(77.21%)やバングラデシュ(72.99%)など、平均を大きく上回る国がまだあるのが現状です[4]。
UHCの達成は、持続可能な開発目標(SDGs)のゴール3「すべての人に健康と福祉を」のターゲット(3.8)にも含まれており、その達成度合いは様々な指標で測られています。指標の一つである「家計の支出又は所得に占める健康関連支出が大きい人口の割合」(3.8.2)をみると、家計の支出に対する健康関連支出の割合が10%以上を占め、壊滅的な医療費の自己負担を経験している世界中の人口の割合は、約14%にもなります[5]。
今年のUHCデーのテーマは、「健康は政府の責任」です。各国政府には、人々が高額の医療費を自己負担することなく、無料または支払い可能な金額で保健医療サービスを受けることができるようにするために、保健分野の国家予算を確保し、健康保険制度を確立するなど、医療費の公的負担を増やしていくという責任があります。
そのためには、持続可能な保健財政(ヘルス・ファイナンシング)の強化が不可欠で、それにはさまざまなステップがあります。まず、各国政府は、保健医療に使われる資金をコストとしてではなく、投資としてとらえ、国や社会全体、市民の健康と福祉を高めるために保健分野に資金を投入するという政治的意思が形成されなければなりません。そして、国内資金を保健分野に動員するだけでなく、それが衡平に使われるようにすることも重要です。また、各国政府が単独で取り組むだけでなく、特に低・中所得国に対しては、日本を含む先進国政府や国際機関・市民社会など、グローバルヘルスパートナーが連携し、資金面、技術面の支援を維持、継続しながら進めることが求められています。
日本は、1961年にいち早く国民皆保険制度を確立し、「UHC先進国」として、UHCの国際的な主流化に努め、SDGsへの導入を後押しするなど、その達成に向けリーダーシップを発揮してきました。またUHC達成のための努力は、幅広いSDGs の達成に貢献するとして、日本のグローバルヘルス戦略の中心に位置付けています。
しかし、日本国内でも貧困や差別、外国ルーツであることなどから、必要なサービスが受けられない人々がおり、UHCを達成できているとは言えません。社会から疎外され、より脆弱な立場に置かれた人々にリーチし、誰一人取り残されることなく保健医療サービスが受けられるよう、国としての責任を果していかなくてはなりません。
セーブ・ザ・チルドレンは、各国政府が責任を持ち、UHC達成に向けた取り組みを加速するよう、これからも働きかけていきます。
[1]Universal health coverage (UHC)
[2]Universal health coverage (UHC)
[3]Billions left behind on the path to universal health coverage
[4]Out-of-pocket expenditure as percentage of current health expenditure (CHE) (%), Global Health Observatory data repository, World Health Organization
[5]Billions left behind on the path to universal health coverage