富裕層と貧困層の子どもの格差は、1990年以来最大に
~セーブ・ザ・チルドレンが不平等に関する新しい報告書を発表~(2012.11.01)

「過去20年以来最大の格差に、最も貧しい子どもたちが直面している」とセーブ・ザ・チルドレンは新しい報告書『平等に生まれて』(Born Equal)で報告しています。不平等は子どもたちの健康、教育、そして生存に大きな影響を及ぼし、子どもたちが病気に苦しみ、精神的にも身体的にも発育が阻害され、学校を退学せざるを得ない状況に追い込んでいます。


(C)Raghu Rai/Magnum for Save the Children

本報告書では、裕福な子どもと貧しい子どもの格差が1990年以来世界的に35%拡大していると報告しています。これは成人間の格差の約2倍となり、子どもたちがより格差拡大のインパクトを受けていることを示しています。国によっては5歳前に亡くなる貧しい子どもの数は、裕福な子どもの約2倍となります。

32カ国のデータを分析し、また8カ国の低中高所得国での調査を経た本報告書は、ロンドンで11月1日に行われる第2回ポスト2015年開発目標に関する国連ハイレベルパネル会合とタイミングを同じくして発表されました。この会合では、国連ミレニアム開発目標に続く世界の貧困根絶に向けた開発目標設定のための新しいアプローチが議論され、英国のデービッド・キャメロン首相、リベリアのエレン・ジョンソン・サーリーフ大統領、インドネシアのスシロ・バンバン・ユドヨノ大統領が共同議長を務め、日本からは菅直人前首相がパネルメンバーとして参加しています。

「持てる者と持たざる者との拡がる格差の影響を最も受けるのは子どもたちです。全ての子どもが生存と健やかな成長のために等しく機会が与えられ、成果の恩恵を受けるためには、不平等の課題に取り組まなければなりません」とセーブ・ザ・チルドレン・インターナショナルのジャスミン・ウィットブレッド事務局長は言います。

格差の大きい国の中には、富裕層と貧困層の差が約180%にも及ぶ国もあります。富裕層がさらに裕福になった一方で、ボリビア、ペルー、ザンビア、コート・ジボワール、ガーナ、カメルーンなどの国々では、最も貧しい人々の所得は減り、さらに格差が拡がっています。世界における極度の貧困は、1990年の20億人から現在は13億人以下に削減され、子どもの死亡率も半減したものの、これらの成果は多くの場合、最も貧しい人々に届いていない現実を覆い隠しているとセーブ・ザ・チルドレンは指摘しています。

世界の最も貧しい人々の70%(約10億人)は、いまや中所得国に住んでいます。これらの国々で成長の利益がより効果的に共有されるよう不平等に取り組むことは、最も重要な課題です。例えば、一般的に保健や社会保護プログラムへの投入で称賛されるタンザニアでは、最も裕福な子どもの死亡率は1,000人中135人から90人に減りましたが、その間、最も貧しい子どもの死亡率は1,000人中140人から137人とほとんど改善は見られていません。格差の影響は先進国でも見られ、例えばカナダでは低所得家庭の子どもは視力や聴力、言語能力、運動能力に何らかの問題がある確率が2.5倍高くなるという結果が出ています。

セーブ・ザ・チルドレンは、ポスト2015年開発目標に関する議論において、不平等への取り組みが中心に位置づけられるよう主張しています。そのためには不平等を減らすための具体的な目標が設置され、強固なモニタリング・システムによる進捗の確認が不可欠です。


*『平等に生まれて』(Born Equal)報告書(英語全文)はこちら
『平等に生まれて』(Born Equal)報告書(要旨和訳)はこちら

(報告: 海外事業部 堀江)

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