子どもたちのための民間の国際援助団体(NGO)セーブ・ザ・チルドレンは、母の日を機会に母親に注目することで、子どもについて考えるきっかけを作るため、毎年、母親になるのにベストな国ランキングを含む「母親指標(Mother's Index)*1」を発表しています。記念すべき10回目となる今年は、昨年より12ヶ国対象国が増え、過去最多の158ヶ国における母親と子どもの状態を分析しています。
その結果、日本は34位となり、昨年の31位から3つ順位を落としました。2005年にランキング対象国となって以来、最低のランキングになっており、2006年以降毎年順位を下げています (2005年14位、2006年12位、2007年29位、2008年31位)。
今回も母親指標の上位は北欧の国々が、下位はサハラ砂漠以南のアフリカの国々が占めています。トップと下位の10ヶ国では、母親と子どもの健康面や教育、経済状態など、すべての指標において依然著しい格差が浮き彫りとなっています。
順位 | トップ10位の国 | 順位 | ワースト10位の国 |
---|---|---|---|
1 | スウェーデン | 149 | ジブチ共和国 |
2 | ノルウェー | 150 | エリトリア |
3 | オーストラリア | 151 | アンゴラ |
4 | アイスランド | 152 | スーダン |
5 | デンマーク | 153 | イエメン |
6 | ニュージーランド | 154 | コンゴ民主共和国 |
7 | フィンランド | 155 | ギニアビサウ共和国 |
8 | アイルランド | 156 | チャド |
9 | ドイツ | 157 | シエラレオネ |
10 | オランダ | 158 | ニジェール |
母親指標(総合) | 女性指標 *2 | 子ども指標 *3 | |||
---|---|---|---|---|---|
1 | スウェーデン | 1 | オーストラリア | 1 | スウェーデン |
2 | ノルウェー | 2 | スウェーデン | 2 | イタリア |
3 | オーストラリア | 3 | ニュージーランド | 3 | ドイツ |
4 | アイスランド | 4 | ノルウェー | 4 | フランス |
5 | デンマーク | 5 | アイスランド | 5 | オーストリア |
34 | 日本 | 36 | 日本 | 8 | 日本 |
*1「母親指標(Mother's Index)」
158ヶ国における母親の状態は、下記の母親と子どもの指標をベースに比較しています。
*2「女性指標(Women's Index)」は、主に母親指標の1〜8を中心に比較しています。
*3「子ども指標(Children's Index)」は、主に母親指標の9〜15を中心に比較しています。
日本のランクは、母親指標で34位、「女性指標」で36位、「子ども指標」で8位となっています。「子ども指標」では、5歳未満の子どもの死亡率が低いことや、就学率が高いことなどから、昨年の6位からは順位を落としたものの、上位にランクされています。一方、「女性指数」では、今年一位のオーストラリアや北欧に比べ、国政への女性の参加率の低さや男女間賃金格差などから順位が低く、母親指標のランキングを低下させる結果となりました。
ランキングトップ常連国のスウェーデンと最下位国ニジェールを比較すると、ニジェールは昨年より改善がみられるものの、あらゆる指標にその格差が表れています。
例えば、スウェーデンの出産時の妊婦の死亡率は17,400人に一人に対し、最下位国ニジェールでは7人に一人です。一般的なスウェーデンの女性は、17年 間の公教育を受け、平均余命は83歳、65%の女性が現代的避妊法を用い、5歳未満の子どもの死亡率は333人に一人です。
対照的にニジェールでは、一般的な女性は3年以下しか教育を受けられず、平均余命は56歳で、5%の女性しか現代的避妊法を用いておらず、6人に一人の子どもが5歳の誕生日を迎えられません。
開発途上国間の比較分析〜School Success Index〜
今回のレポートでは、初めて世界最貧100ヶ国における幼児期の子どもを取り巻く環境がその後の学校教育に及ぼす影響について分析しました。5歳未 満の子どもの生存率、進級度合い、女子の識字率、出生率などに加え、就学年齢で学校に行っていない子どもの数と、初等教育最終学年における在学率から統計 を出した結果、南アジアやサハラ砂漠以南のアフリカの国々が、極度な貧困、劣悪な健康管理状態、学校不足などの要因からランキングで低い順位を占めまし た。
下位5ヶ国にランキングしているチャド、アフガニスタン、マリでは、女子の80%が読み書きができません。これらの 国では、およそ5人に一人が5歳まで生きることができません。また、ギニアビサウ共和国やニジェールでは50%以上、パキスタンでは34%の子どもたちが 学校へ行っていません。これらの数には、最初は学校へ行くものの、栄養不良や、就学前の幼児教育がないためその後の学校環境になじめず、初期段階で退学し てしまう子どもたちが多く含まれます。事実、多くの開発途上国では退学は小学校一年生の段階から見られます。
そして、下位31ヶ国のうち20ヶ国が近年紛争の被害にあっているか、紛争直後、もしくは隣国の紛争による大量の難民を受け入れている国であり、紛争が幼児期の教育の機会を奪っているのは明らかです。
先進国間の比較分析〜幼児教育Index〜
一方、先進国25ヶ国を対象に、出産・育児休暇制度や、3歳未満児への育児サービス、4歳児への早期教育に対する政府の助成制度、育児従事者の訓練 の度合い、またその教育レベルや子どもの数に対する割合、基本的な子どもの健康福祉などからなる10項目で幼児教育に対する各国の取り組みを検証していま す。
この10ポイントすべてを満たしているのはスウェーデン1ヶ国のみです。日本は、産休・育休制度、育児や早期教育に 関する政府助成の不足などから、10ポイントのうち4ポイントしか満たしていません。10ポイントのうち8ポイントを満たしているのは、デンマーク、フィ ンランド、ノルウェーなど北欧諸国及びフランスです。
カナダとアイルランドが最下位で1ポイントを満たすのみ、オーストラリアは2ポイントです。アメリカ合衆国、メキシコ、スペイン、スイスも3ポイントとい う低いレベルにとどまっています。また、GDPの1%以上を幼児教育の予算にあてているのは、25ヶ国のうち6ヶ国しかありません。
母親指標では貧困各国を比較し、紹介しています。そこには数字を通して過酷な事実が表れています。