• ニュース一覧
  • 定期発行物
  • プレスルーム
  • ボランティア情報

日本ユニセフ協会「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンに関する
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの見解

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、国連子どもの権利条約に定める子どもの権利の実現を目指す団体として、財団法人日本ユニセフ協会の「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンの趣旨に基本的に賛同し、その賛同団体となっております。

上記キャンペーンにおける財団法人日本ユニセフ協会の主張は以下の4点です(注1)。

  1. 児童買春・児童ポルノ等禁止法の処罰対象となるか否かを問わず、子どもに対する性的虐待を性目的で描写した写真、動画、漫画、アニメーションなどを製造、譲渡、貸与、広告・宣伝する行為に反対します。
  2. 政府・国会に対し、児童買春・児童ポルノ等禁止法の改正を含め、下記各点に対する早急な対応を求めます。
    (ア) 他人への提供を目的としない児童ポルノの入手・保有(単純所持)を禁止し処罰の対象とする(第7条)
    (イ) 被写体が実在するか否かを問わず、児童の性的な姿態や虐待などを写実的に描写したものを、「準児童ポルノ」として違法化する(第2条)。具体的には、アニメ、漫画、ゲームソフトおよび18歳以上の人物が児童を演じる場合もこれに含む。
    (ウ) 国及び地方公共団体による児童の権利に関する国民の理解を深めるための教育及び啓発を「義務」づける(第14条)
    (エ) 「児童ポルノ」等の被害から、心身に有害な影響を受けた児童の保護のための体制を整備する。そのために具体的な計画の策定を国に義務付け、担当省庁に実施結果を国会に報告する義務を課す(第16条)
  3. メディア、各種通信事業、IT事業、ソフト・コンテンツ製造・制作・販売等の各業者、業界、ならびに関連団体による上記@に示す著作物等の流布・販売を自主的に規制・コントロールする官民を挙げた取り組みを応援するとともに、より一層の取り組みを求めます。
  4. 検察・裁判所はじめ全ての法曹・司法関係者に対し、子どもポルノが子どもの人権ならびに福祉に対する重大な侵害行為であるとの基本認識の下、児童買春・児童ポルノ等禁止法事犯に対し厳格に同法を適用し、刑を科すよう求めます。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、上記主張を基本的に支持すると同時に、以下の見解をセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン独自のものとして公にいたします。

  1. 実在の子どもを対象とした子どもポルノの単純所持については、被写体とされたこと自体がすでに実在の子どもの人権侵害であるという事実を考えれば、他人に譲渡したり、販売することを目的とする所持ではないという理由で免責にはなりません。つまり、実在の子どもを被写体にした子どもポルノの単純所持も処罰すべきです(注2) 。
  2. 実在しない子どもが登場する擬似子どもポルノないし準子どもポルノについては、性犯罪との関係を確認するための科学的調査をただちに始め、その結果を踏まえて、適切な法的規制を検討すべきと考えます。
    なお、(実在しない)創作された子どもないし子どもと思われる者を対象として、プレイヤーが性的虐待を行うことができる一部コンピューターゲームは、その内容の悪質性を考えると、社会法益の侵害という観点からも問題にすべきです。
  3. 子どもポルノの被害に遭った子どもの保護については、福祉面での支援だけではなく、司法手続きにおける「子どもに優しい手続き」の導入も検討すべきです。
  4. 子どもポルノの処罰範囲を広げる以上、冤罪を避けるためにも、裁判所制度以外に個人申し立て等の救済制度を同時に整備すべきです。さらに、政府から独立した人権オンブズパースン制度や人権委員会の設置を同時に進めるべきであり、また、国内的救済措置を尽くして依然、冤罪の被疑者の救済が実現しなかった場合に備えて、各国際人権委員会に対する個人通報制度を利用できるように、各人権条約の選択議定書を日本政府は早期に署名・批准すべきです。

これに関連して、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは今年6月17日に国連人権理事会において国連子どもの権利委員会に対する個人通報を可能とする選択議定書策定のための作業部会設置決議が採択されたことを歓迎すると同時に、日本政府が同議定書の早期策定に向けて積極的な貢献をすることを強く求めたいと思います。

本見解に関するお問い合わせ先

森田明彦 シニア・アドバイザー/セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(東京工業大学特任教授)
電子メール morita@savechildren.or.jp


(注1)財団法人日本ユニセフ協会による「なくそう!子どもポルノ」キャンペーンについては、以下のURLを参照ください。

http://www.unicef.or.jp/special/0705/index.html

(注 2)2000年5月25日に国連総会で採択された「子どもの売買、子ども売買春および子どもポルノグラフィーに関する子どもの権利条約の選択議定書」(日本政府は2002年5月10日に署名、2004年8月2日に批准)は、同第2条(c)項で、子どもポルノを以下の通り定義しています。

「子どもポルノグラフィーとは、実際のまたはそのように装ったあからさまな性的活動に従事する子どもをいかなる手段によるかは問わず描いたあらゆる表現、または子どもの性的部位を描いたあらゆる表現であって、その主たる特徴が性的な目的による描写であるものを意味する」。

その上で、同議定書第3条第1項は、「各締約国は、最低限、次の行為および活動が、このような犯罪が国内でもしくは国境を越えてまたは個人的にもしくは組織的に行なわれるかを問わず、自国の刑法において全面的に対象とされることを確保する」と定め、子どもポルノに関しては、同条1項(c)で、「第2条(c) で定義された子どもポルノグラフィーを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売し、または上記の目的で所持すること」と定めています。

つまり、同議定書では、最低限、子どもポルノグラフィーを製造し、流通させ、配布し、輸入し、輸出し、提供し、販売し、または上記の目的で所持することを取り締まることを求めているのです。 さらに、国連子どもの権利委員会は、チリ政府およびコスタリカ政府の政府報告書に対する最終意見において、子どもポルノの単純所持も禁止することを求めています。

UN Committee on the Rights of the Child, Consideration of Reports submitted by States Parties under the OPSC, Concluding Observations on the Chile, op.cit.,paras 23-24 and on Costa Rica, op.cit.,paras 14-15 and 24-25.

PAGE TOP