母子の命を救う世界のコミットメントは半分しか及ばず(2010.06.27 )
G8首脳会談を終えて
去る6月25日にカナダのムスコカ・サミットで発表されたG8首脳宣言では、2015年までに130万人の子どもと6万4千人の母親を救うことが約束されました(WHO試算)。しかし、2005年の英国グレンイーグルズ・サミットにおける、「2010年までにアフリカに250億ドルを拠出する」という約束についての言及はどこにも見当たりませんでした。(※)
「今回G8が拠出を決めた『5年間で50億ドル』という額は、母親と子どもたちの命を救うためにセーブ・ザ・チルドレンが求めていた100億ドルという金額のわずか半額でしかなったことを残念に思います。しかしながら、妊産婦・乳幼児の死亡率削減に関して言及した『ムスコカ・イニシアティブ』を通して、具体的な数値目標が掲げられたことを歓迎し、今後G8各国にこれらの目標達成の責任を果たすよう求めていきます。母親と子どもたちに劇的な変化をもたらし、救えるはずの命を救うためには、説明責任と計測可能な目標設定だけでなく、より迅速で強固、かつ持続的な拠出が必要なのです。」
(セーブ・ザ・チルドレン・カナダ事務局長 デビッド・モーリー)
G8が約束した5年間で50億ドルの内訳は以下のとおり
カナダ11億ドル
米国13.46億ドル(2年間)
英国6億ドル(2年間)
日本5億ドル
ドイツ5億ドル
イタリア4.28億ドル(うち1.9億ドルは既に約束した額)
フランス4億ドル
ただし、このうちどれだけが新しく拠出される金額なのかはさらに明確化が必要です。
なお、今回の首脳宣言では、2005年のグレンイーグルズ・サミットにおいて約束されたアフリカへの追加資金250億ドルについての言及、また期限を迎えた今年、G8の拠出額がその半額にも届かなかったという結果への言及も一切含まれませんでした。
しかしながら、昨年のイタリアのラクイラ・サミットで約束された栄養と飢餓に関しては進捗もありました。ラクイラで発表された220億ドルのうち、65億ドルが既に拠出あるいは配分されたと今年のG8で確認されました。今回、G8が改めて栄養不良対策へのコミットメントを示したことで、飢餓との闘いに関し著しい進捗が見られました。栄養不良は子どもの死亡の要因の3分の1を占めますが、この「ラクイラ食料安全保障イニシアティブ」は、母子の栄養改善に著しい変化をもたらすことができるでしょう。
続いて開催されるG20では、中国、インド、南アフリカ、ブラジルなどの新興諸国の首脳がG8に加わり世界の経済復興や金融規制について話し合われます。韓国やサウジアラビアのような新しい援助国、また子どもと妊産婦の死亡率の問題を抱える中国やインドなどの国が話し合いのテーブルに着く機会が、今後に大きな進展をもたらすことを期待します。
※詳細は外務省ホームページをご参照ください。