パキスタン洪水から6か月 被災による家計負担から、児童労働や早婚のケースも(2011.01.28)
2,100万人に影響を及ぼした破滅的な洪水がパキスタンで発生から6カ月が経過しました。
被災地の子どもたちは、今でも災害による不安やストレス、恐怖と闘っています。
激しい洪水は町と村をのみ込み、2,200万キロ?以上の農地を破壊、穀類、米、砂糖、新鮮な果物や野菜が不足し、何十万人もが失業して生計手段を失いました。こうした家計の経済負担が、児童労働や少女の早婚を招いていることもわかりました。被災地域では、実に300以上の早婚のケースが判明しています。
セーブ・ザ・チルドレン(以下SC)はこれまでに、最も被害の大きかった地域に174の「子ども広場」(チャイルド・フレンドリー・スペース)を開設し、130,308 人の子どもたちに、アートセラピーやグループカウンセリング、遊びを通して精神的なケアを行い、避難民キャンプでの日常に対処する方法も教えています。また、SCは、精神分析法の1つである『Draw A Person(DAP)』(人物画法)*を使用して、子どもたちの感情と心を調査しました。その結果、多くの子どもたちは、助けを求めているか、水でおぼれているか、学校から逃げている少年と少女の絵を描きました。また、何かに邪魔され、混乱し絵を描き終えることができない子どももいました。
【ナイラ(10才)の場合】
「洪水の後、ハイデラバード市内の避難民キャンプへ移りました。家から離れ、食べ物も友人もいない、それは恐ろく、私の人生において最悪な日々でした。キャンプの人々の態度はとても悪く、彼らは貧しい人や女性をよくからかっていました。そこでの生活は好きではありませんでした。
今は、学校に行けるし、遊ぶ場所もあるからとても幸せです。洪水のいやな記憶もほとんど忘れました。子ども広場に来るのが好きです! 勉強して、一日中遊びたい。日曜日は、家にいると何もすることがないから退屈してしまいます。ここで一番好きなことは、勉強できることと友達と一緒に遊べること。そして、ここの先生が好きです!」
ナイラの描いたキャンプの絵 シンド州ジャコババード郡 (2011.1.24.)
DAPによると、子どもたちの87%がストレスを感じたり攻撃的になり、75%が自己表現ができず、70%は人や水、開けた土地や暗闇に対して恐れを抱き不安を感じていることがわかりました(次頁グラフ)。「この結果から、未だに子どもたちが被災によるひどい打撃を受けていることがわかります。多くの子どもたちが悪夢を見たり、災害について触れようとしません。服もなく、おもちゃも失い、未だに学校は閉鎖しています。これらの喪失は、精神的問題を解決する十分な支援がなくては、今後の彼らの人生において、自尊心や自信の欠如を招く恐れがあります。」
(デビッド・ライト; SCパキスタン カントリーディレクター)
◆これまでの支援実績
・食糧 140,000世帯以上に食糧を配布。
・シェルター・生活必需品 85,478世帯に避難生活に必要なシェルター、生活必需品を配布。
・水・衛生 約117,500人に生活用水や飲料施設などを支給。
・子どもの保護 174ヶ所に「子ども広場」を設置。
・教育 123,448人(子ども114,299人)に緊急教育事業を実施。
・生計支援 268,640人分の食糧券34,265枚を配布。
SCは、洪水発生から現在まで、2,622,000人以上の被災者に救急治療、テント、調理用具、簡易ろ過装置、食糧などの配布、精神的ケアと教育支援を提供してきました。今後、2カ年計画で、特に脆弱な子どもとその家族、女性、孤児、障害者に重点を置いた400万人を対象に、健康と栄養、シェルターと生活必需品、子どもの保護、教育、食糧確保と生計の5つの分野において継続的に支援を展開していきます。
*『Draw A Person』(DAP)
子どもたちが落ち着ける場所で紙に好きな人物を描いてもらう。時間制限を設けず、「老若男女は問わず、漫画のような描写ではなく、人物を描いてください」とだけ告げて、子どもたちに思い思いに描かせる。描いている間に子どもたちが話したことを元に、子どもたちの自信、躊躇、不安、回避、衝動性、記憶障害のレベルを分析する。
5〜15歳に実施。
(C) Fauzan Ijazah for Save the Children