「アフガンに生きる子どもたち」 第八回

北部をゆく (下)

 

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        アフガニスタンの教育課題に取り組むカギは私たちおとなにある、と語るハンガマ

 

 

 

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 ファリアブ州ゴザリ女子学校のダリ語の授業風景

 

 

「村の子どもはオレたちが守る。治安の悪化、女子の不就学の課題、おとながしっかり責任を持って解決していくしかない――

 

アフガニスタン北部のサリプル州で村の地域PTAとして、子どもの教育問題に取り組む男たち。鋭い眼光で相手を見据えるその様は、戦乱と貧困を生き抜いてきたアフガン人特有の迫る力を感じさせる。それでも、その表情には何か、村の子どもを分け隔てなく思い遣る優しさ、村を背負う責任感もにじむ。

 

アフガニスタンでは地域によって、その社会文化的な慣習上、血縁関係のないおとなの男性と女性が一室に集まり議論を交わすことははばかられる。そのため、各学校区には男女別々のPTAがそれぞれ設立される場合が多い。

 

女性のPTA組織も教育の推進を下支えする。ハンガマはファリアブ州ゴザリ女子学校で教員を務める28歳の女性。家に帰れば二児の母親でもある。そのゴザリ学校で、女性PTAを率いる彼女は、その役割と可能性をこう語る。

「村の教育問題を解くカギは私たちおとなにある。PTAがきっかけになって、親たちがもっと村の学校運営や問題解決の議論に関与できれば、女子の就学率と定着率をもっと安定させることができると思う。紛争のせいで、たくさんの女性が教育機会を奪われ、その結果、多くが読み書きのできないまま。でも、だからこそ、私たち女性、母親って、教育の大切さを誰よりも理解しているのよ」。

 

ハンガマは、親の多くは教育の重要性を十分に認識しているという。そして、それこそが教育復興を推し進める原動力になると信じる。彼女は、子どもが学校に通えない理由に、家庭側の要因があるだけではなく、整備が行き届いていない学校環境や、授業をしっかりと担う指導力を持った教員が少ないことを挙げる。アフガニスタン全土に共通する大きな課題だ。

 

サリプル州コルシド学校のアブドゥル・ワハブ(54歳)は、セーブ・ザ・チルドレンが行う指導能力強化研修を受ける学校教員の一人。首元までかかるグレーのあごひげに手をやり、「20年以上も続いた紛争が、私から教育の機会を奪った」と静かな口調で話してくれた。彼は、教職員の中でも年配の位にあたる。小学校を卒業しただけの学歴に引け目を感じることもあったという。

 

アフガニスタンの学校現場を訪問すると、おとなが威嚇のための棒や体罰に頼って子どもを指導する光景を目にすることがある。

「戦渦のアフガニスタンで、暴力はいけないなんて誰も教えてくれなかった。紛争の歴史が、教育現場にも暴力をごく自然と持ち込ませたんだ」。アブドゥルも以前までは片手に棒きれを握りしめ、時に生徒を叩き、授業を進めていたという。「教えることにあまり自信がなかった。だから生徒たちを黙らせながら授業を終わらせるのに必死だった」とかつての自分を振り返る。

 

 

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教員としての責任感を高めるアブドゥル

 

 

しかし、こうしたおとなたちも教育への想いは熱く、自分を変えるきっかけを求め、試行錯誤している。教員向けの教授法や暴力に頼らない指導法(ポジティブ・ディシプリン)の研修に参加したアブドゥルは表情を緩め嬉しそうに話してくれた。「授業中、もう棒きれは使わない。その代わり、研修で教わったグループワークをよく試しているよ。子ども同士がお互いに意見を交わし、教え学び合う機会が増えた。生徒たちも喜んでいるようだ」。さらに、アブドゥルは自分のことにも触れた。「実は私自身も気持ちに変化があった。自分が教えたことの結果、つまり、子どもたちの将来についてその責任をこれまで以上に感じるようになったんだ」。

 

学校教員は教育復興の礎といえる。でも、国内14万人以上の学校教員のうち、高等教育を卒業した割合はわずか17%といわれる。女子の不就学に拍車をかける女性教員の不足も深刻だ。子どもを取り巻く教育問題を改善していくには、おとなたちへの働きかけは不可欠である。

 

園田『解放教育』(明治図書)201011月号より

 


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