カンボジアスタッフ訪問記

【日本人スタッフがカンボジアの子どもたちの様子をお伝えします】

今回、藤畑スタッフと本多スタッフが訪問したのは、首都プノンペンから100km北西、コンポンチュナン県のツック・フォー地区にあるタニー村です。この地区は内戦後、住むところをなくした人々が移り住んだところで、カンボジアの中でも特に深刻な貧困状態にあります。


【藤畑・本多スタッフの報告】

イメージ:カンボジアの子どもたち

タニー村は200世帯の小さな村で、村人は農業に従事しています。主食は米ですが、蛙やカタツムリ、空心菜という繁殖力の強い野菜も食べています。しかし1日に3回食べることができる家庭は多くありません。

村に医者はいません。家にトイレはありません。栄養面と衛生面から子どもたちは病気になることがあります。医者のいる町までは遠く、また薬を買うお金がないため薬草を利用していますが、子どもたちは生命の危機にさらされることが多いのです。

セーブ・ザ・チルドレンが支援を始めた10年前まではタニー村に学校はありませんでした。村人は教育を受けたことがなかったため、教育の必要性を全く理解していませんでした。私たちは子どもにとって教育が大切であることを長い時間かけて説明し、やっと子どもたちは教育の機会を持つことができるようになったのです。学校設立にあたって、地域の人々が資材や労働力を分担したり、自ら募金活動を行ったり、カリキュラムの検討や教師を探したりするうちに、「自分たちの学校である」という意識が高まり、今では学校は村の人々にとってなくてはならない存在です。

イメージ:カンボジアの小学校で学ぶ子どもたち

タニー村の小学校は最初トタン屋根と柱だけでしたが、今では皆の努力で壁も窓もあります。子どもたちはこの学校に元気いっぱいに通ってきます。カンボジアの学校には制服があり、白いシャツに紺のズボンかスカートを着ることになっています。しかし、この村で制服を強制すると学校に来られない子どもがいるので服装は自由です。

カンボジアの学校は午前・午後の2部交代制です。午前クラスは7:30から、午後クラスは13:30から4時間です。給食はありません。タニー村の小学校も同様です。村にはおもちゃ屋も本屋もありませんし、テレビがある家はわずかです。子どもたちは教科書を大切にし、学校で勉強ができることを何よりも楽しみにしています。

カンボジアでは内戦や戦争のため3世代にわたり教育を受けていません。このため現在、教師不足が大きな問題となっています。カンボジアの教師の給料は大変安く、副業を必要とするほどです。タニー村のようなところでは副業がないため、教師になかなか定着してもらえません。セーブ・ザ・チルドレンは、教師の確保のために、主婦をトレーニングしたり、僧侶にボランティアで教えてもらったりといった工夫をしています。

【子どもの未来がカンボジアの希望】

イメージ:カンボジアの小学校で学ぶ子どもたち

全国的には約80%の小学校就学率が、セーブ・ザ・チルドレンの活動地の小学校ではほぼ100%に達しています。村のある男の子に「何をしてる時が一番楽しい?」と聞いてみたところ、このような答えが返ってきました:

「学校に来てる時。勉強が楽しいから。友達に会えるのも嬉しいよ。毎日学校に来られたら良いな。」

子どもたちは素朴でシャイで元気いっぱいです。しかし、この村の子どもたちは将来の夢を語ることができません。「将来何になりたいの」と聞いても困った顔をするだけで、答えは返ってきません。これには大変ショックを受けました。ここでは農業に従事することが当たり前です。子どもたちには教科書以外の本はありませんし、テレビを見る機会も少ないので、どのような職業の選択があるか分からないのです。

私たちは子どもたちが笑顔で夢を語ることができる日が来るよう、活動していきたいと思います。

カンボジアはフランスからの独立以降、ポル・ポト時代がくるまでの20年間で劇的に教育システムが向上しました。その質の高さから近隣諸国より多くの留学生が来ていたほどです。教育に対する意識が高い国民なのです。不幸な歴史による心の傷跡は深いのですが、訪問した村の人々やセーブ・ザ・チルドレンのカンボジアスタッフの話を聞くと、国の復興と子どもの教育への意欲は非常に強く、この国の未来に大いなる希望を抱きました。


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