「国連子どもの権利委員会に申し立てできる制度を作ろう!キャンペーン」:議長案が採択されました!(2011.2.21)
2009年10月に立ちあげられた本キャンペーンは、国連「子どもの権利条約」に第3番目の議定書をつくり、子どもたちが自分たちで国連子どもの権利委員会へ申し立て(通報)ができる制度をつくるため、世界650以上のNGO(非政府組織)と共に日本からの提言をしてきました。
そして2011年2月16日、この議定書の内容がステファニク議長のリードの下、各国政府団とともにまとめられ、議長案が採択されています。SCJからは、森田シニア・アドバイザーが現地入りをしました。帰国したばかりの森田より、ご報告いたします!
■ ドラマティックな作業部会は、最終日に議定書案を採択〜そして閉会
2011年2月10日から5日間にわたって開催された国連人権理事会第2回作業部会の後期(前期の報告)は、最終日夜7時過ぎに新たな議定書案を採択して閉会しました。子どもの権利条約NGOグループの率いるアニータさんも言っていましたが、この1週間は「ドラマ」のような日々でした。
今回の審議は今年1月に各国政府代表に配布された改訂議長草案(A/HRC/WG.7/2/4)に基づき始まりました。議論を重ねるなかで14日(3日目)朝、ステファニク議長が、議定書案を?前文、?Cluster1(おおむね合意できそうな条項)、?Cluster2(合意が近いと思われる条項)、?Essentials Package(もっとも議論がある条項)に分け、合意が容易そうな条項からまとめての審議を提案。
その提案通り順調に会議が進む一方、もっとも議論がある条項に関する非公式協議が断続的に行われていました。が、しかしこの日の午後5時過ぎ、議長よりこのもっとも議論を必要とする審議事項(6, 7, 13, 16, 24条)を全部議定書に盛り込むか、議定書案から削除するのいずれかで採択を目指す、という提案が出されます。
これに対し、ヤンギー・リー子どもの権利委員会議長が厳しい口調で失望の意を表明し、政府代表に対し、この議長提案を拒絶するように要請しました。ステファニク議長は、各国政府代表に対して、この提案に対する対処方針を各国の首都に確認するように求め、この日の審議は終了になりました。
最終日の16日、各国政府は立場を表明。日本政府は11カ国の政府団と同様「議長提案に関して合意に至ることは可能である」という支持の姿勢を表明しました。しかしながら、この後、ユニセフなどが相次いで、否定的なコメントを発表し、子どもの権利条約NGOグループ、セーブ・ザ・チルドレンやプラン・インターナショナルなど、市民社会からも議長提案の拒否を締約国政府に訴えるメッセージが発表されました。また、ツィルマータン国連子どもの権利委員会副議長からも、このままでは議定書が幅広すぎて、委員会としてどのように扱っていいか判断し兼ねると発言がありました。
上記の議論を受けた議長は、自らの提案を撤回し、協議継続のための非公式協議の開催を決定。午後6時過ぎ再開された会議では議長から新提案が出され、7時過ぎに再々度集められた会議において、ついに(いくつかの留保を付しつつも)議長の新提案が全会一致で承認されたのです。
■ 第3議定書は次のステージへ
今回採択された「新議定書案」は、今年6月の第17回国連人権理事会に提出・採択され、その後、国連総会に提出・採択される見込みです。
各国政府による報告書の提出制度以外には、人権に関する保障メカニズムを持たなかった唯一の国際人権条約「国連子どもの権利条約」がついに、「個人通報制度」「暫定措置」「友好的解決」「国家間通報」「調査制度」を備える時代が、もうそこまで来ています。子どもの権利の新しい時代の幕開けといえるすばらしい成果です。
引き続き、みなさんのご支援をよろしくお願い致します。
***
セーブ・ザ・チルドレンは、「国連子どもの権利委員会に申し立てできる制度を作ろう!キャンペーン」の日本での事務局を務めています。今後も、キャンペーンの参加団体と連携し、日本政府とも協力しながら、この選択議定書がよりよいものになるよう、積極的に働きかけを行っていきます。更に詳しい内容に関しては、キャンペーンブログをご覧ください。