封鎖緩和も、パレスチナ人の苦難続く〜国際NGO26団体が共同報告書〜(2010.12.15)

26の人道支援団体が共同で、"Dashed Hopes - Continuation of the Gaza Blockade" (打ち砕かれた希望‐継続するガザ封鎖)という報告書を発表し、封鎖が緩和されても、未だにガザに住むパレスチナの人々を取り巻く環境は改善していないことを訴えています。セーブ・ザ・チルドレンからは、セーブ・ザ・チルドレン・UKとセーブ・ザ・チルドレン・ノルウェーが共同報告者として参加しています。

【報告書の概要】

2010年6月20日、イスラエル政府は、ガザ地区の封鎖緩和を発表しました。これにより、イスラエル政府が作成した規制リストに含まれていないすべての物品の搬入が可能になりました。また、国際社会からの支援プロジェクト用の建設資材の搬入の促進・拡大、検問所の条件付き開放、そして医療や人道的理由によるガザ自治区・イスラエル間の入境許可取得の緩和、加えて支援活動従事スタッフの入境許可の取得を緩和するなどの施策の変更を発表しました。

しかし、緩和から5カ月経っても、150万人のガザ市民(うち、半分は子ども)の生活にはほとんど改善がみられず、80%のガザ市民は国際社会からの支援にいまだ頼らざるを得ない状況におかれています。食料などの搬入は増え、安い値段で購入できるようになりましたが、それでも仕事のないガザの人々にとっては容易に手に入るものではありません。また、ガザの経済を立て直すためには、素となる原材料が必要ですが、それらの搬入は依然として規制されています。一方で、ガザ内でかろうじて生産された製品は、封鎖の緩和で流入した安い製品に対する競争力はありません。

その他、国際社会からの支援プロジェクト用建設資材の搬入を拡大すると発表したものの、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)による学校や保健センターなどの建設は、全体計画のうち7%しか承認がおりておらず、承認されたプロジェクトの資材納入も遅れています。発表では、検問所の開放や入境許可取得についても、その必要性が確認され治安状況などの条件が満たされれば緩和するとしているものの、必要とされる人・物の移動制限は依然続いているといえます。

封鎖緩和の発表の結果、封鎖解除へ向けた国際社会によるイスラエルへの圧力は弱まっています。しかし、今回のような封鎖緩和の約束は往々にして履行されない場合が多く、未だ困難な状況は続いています。報告書は、パレスチナの人々の生活を改善するために、即時かつ無条件の封鎖解除を訴えています。

【ガザ地区の概況】

・80%の人々が人道援助に頼った生活を送っています。
・61%の人々が食料支援を必要としています。
・失業率は約39%、世界でも高い率となっています。
・1日に4−6時間は停電しています。
・60%の人々は、4〜5日に1回、約6〜8時間水が使用できるだけです。
・1日に5,000万リットルから8,000万リットルの汚水が未処理のまま海に流されています。
・ガザに供給されている水の90%が、塩分と硝酸塩による汚染のため、飲み水としては使えません。
・2008年末から2009年初めのイスラエルによる攻撃で破壊された家屋のうち、78%がまだ修理されていません。

【封鎖が阻む様々なこと〜ケース・ストーリー〜】

・白血病で苦しむ2歳の女の子。イスラエルの病院へ治療に行くための許可がなかなかおりず、許可を待っている間に女の子は亡くなってしまいました。

・ヨルダン川西岸(同じパレスチナ自治区)の大学院から入学許可をもらった女性。しかし、ガザ地区からヨルダン川西岸へ行く許可がおりず、教育の機会が奪われました。

 

より詳しい内容が分かる原文の報告書(英語): Dashed Hopes-Continuation of the Gaza Blockade

ガザ封鎖の解除を求めた過去の緊急声明(2010年6月)はこちら


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