スマトラ沖地震現地レポート(2005.10.04)
【スマトラ沖地震・インド洋津波】
日本人スタッフのニアス島への緊急支援事業報告
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンはスマトラ沖地震対応緊急支援事業として、日本から石川スタッフを現地に派遣し、インドネシア・ニアス島における緊急教育支援事業および子どもの保護事業を実現しました。これらの事業は皆様からのご支援およびジャパン・プラットフォームからの助成によって実施されました。
日本人スタッフのニアス島への緊急支援事業報告
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンはスマトラ沖地震対応緊急支援事業として、日本から石川スタッフを現地に派遣し、インドネシア・ニアス島における緊急教育支援事業および子どもの保護事業を実現しました。これらの事業は皆様からのご支援およびジャパン・プラットフォームからの助成によって実施されました。
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【石川スタッフの報告】
事業の内容について
1.緊急教育支援事業(ジャパン・プラットフォーム助成事業)
<概要>
被災した26の小学校を対象に、スクール・テント・学用品・レクリェーション用具を配布。
<目的>
震 災により校舎の倒壊、または倒壊リスクの発生から、授業が休校となったり、屋外で生徒が勉強しなければならなくなったりしたことを受け、校舎再築までの期 間、子ども達により安全で整った学習環境を提供する。中心地グヌンシトリ以外の小学校への支援が遅れていたことから、対象校選びにあたっては他郡の小学校 への支援に重点を置く。
<実施プロセス>
国連機関・地域の行政機関・他のNGOとの調整を図りつつ、県の教育局からの支援 要請リストを基に対象校が選定されました。原則として各校に3張のスクール・テント、加えて生徒・教員用の学用品のセットや多人数のレクリェーション用品 のセットを提供しました。配布開始前には、支援物資についての理解を深め、有効に利用してもらうために、県の教育局スタッフや教員代表を対象に、どのよう に配布物資を利用するのか、物資の獲得が困難な緊急フェーズの資源の有効利用に向けてどのような工夫ができるのか、を主要テーマとするワークショップを開 催。地元ボランティア、訓練を受けたテント設置者、村人が連携を組んで、物資の配布とテントの設置を実現しました。
2.子どもの保護事業
<概要>
被災した子ども達への遊び場(SPA:セーフ・プレイ・エリア)の提供。
<目的>
このプロジェクトでは被災による衝撃、破壊された生活環境や将来への不安、災害再発への恐れなどを抱えた子どもたちに安全な遊び場を提供し、ストレスを発散できるひとときが過ごせるようにする。
<実施プロセス>
セー ブ・ザ・チルドレン・ジャパンはグヌンシトリ郊外の3つの村(ペルムナス・ダハナス、トマリ・オーオー、ヒリナアア)に、地元NGOを通じた遊び場の設置 支援を行いました。また各遊び場にはスポーツ用のボールやバドミントン・楽器を含むレクリェーション用品を提供しました。子ども達を指導するスタッフに対 しては、事業の目的と遊び場の役割、集団で遊ぶ意義、ケガへの応急手当、子どもの権利と参加、地域アクターとの協力関係構築、レクリェーション用品の使用 法などについて、活動開始前に研修を実施しました。
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緊急教育支援事業で配布されたテントのサイズは6x8メートル(40人収容)。熱帯の気候を考慮して、太陽光を反射する白色のキャンバス地で、通気性のよい デザインが選ばれました。ニアス島にいるチームからしてみれば、被災地の子ども達に少しでも快適な環境を提供したい、という願いからの当然の注文だったの ですが、私たちをサポートするジャカルタのセーブ・ザ・チルドレンはその条件を満たすテントを迅速に探すために随分苦労したようです。候補が決まった後 も、テントの機能や安全性、組み立て方法や管理の難易をチェックするために、避難シェルターの専門スタッフが製造元の工場に派遣されました。
グヌンシトリ以外の小学校にも支援を届けるにはアクセスが大きな課題でした。各校へのテントを含む配布物資の重量は計1.2トン。トラック車両が通れる道が学 校まで続いていれば問題ないのですが、そうでなくて人力で運ばねばならないケースが多くありました。荷を背負って途中濁流をわたったり、徒歩で8kmも歩 かねばならなかったりしたこともあり、このような地域の学校への配布は、学校の状況改善を真に望む村人の協力なしには成り立ちえませんでした。
地方では電話などの通信手段も通じません。そこで物資運搬とテント設置の数日前に地元のボランティア・チームを各校に派遣し、損壊・支援状況についての情報 の更新と同時に村人への連絡調整と彼らの組織化を図りました。汚職や放置のトラブルを避けるため、テントは配布するだけでなく、訓練を受けたテント設置者 がセーブ・ザ・チルドレンより派遣され、村人達と共にテントを設置しました。
作業の遅れ、悪天候や悪路で、テント設置チームの村からの帰 りが深夜になることも度々ありました。被災地にあって、自分たちの生活も安定していない現地スタッフやボランティア達が、村の子ども達や教師の喜びの声を 聞いて、決して楽ではない自分たちの仕事を誇りに思っているのを知った時には、心が熱くなりました。
子どもの保護事業で遊び場が子ども達 の心理的な側面に果たす役割は大きかったのではないかと思います。家屋の破損や避難で、子ども達を取り巻く風景や物理的環境は大きく変わりました。家族や 親戚が命を落としたり、避難や求職のため移住したり、生活不安を抱えることになったりして、身近な社会環境も変わりました。更に大震災後も繰り返し続く地 震やニュースで、再び大震災や津波が起こるかも知れない、という不安が島を覆っていたのです。
私たちの事務所に勤める現地スタッフの妹(10歳)は、幸い大きな被害は受けなかったのですが、仲のよかった同級生4名が瓦礫の下敷きとなり、幼い命を失い ました。彼女は恐怖のあまり一人で眠ることが出来なくなり、自ら用意した避難用のナップザックを枕元に置き、居間で両親と一緒に寝るようになりました。
このような不安を忘れ、友人たちと思い切り遊ぶひとときは、大変重要だったようで、100人以上の子ども達が集まって遊び場のスペースが足りなくなる日も多 々ありました。「ここに来るようになってから、子どもが眠れるようになった」という両親からの報告も聞かれました。全てのニアスの子どもたちが安心して眠 りにつき、楽しい夢をみることが出来る日が、少しでも早く来ることを祈りつつ、島を発ちました。
2度の災害に見舞われたニアス島でテント 暮らしをしながら、4ヶ月にわたって支援活動を行ってきました。セーブ・ザ・チルドレン世界連盟のスタッフや現地の人々と協力しながら、無事支援活動を終 了することが出来ました。皆さまの暖かいご支援が、多くの子どもたちの未来へと活かされています。心より感謝申し上げます。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後もスマトラ被災地を始め、世界中の子どもたちを支援していきます。今後とも皆さまのご協力をよろしくお願いいたします。