国連子どもの権利委員会最終見解から見る子どもの貧困:SOAP(2010.07.01)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、子どもの貧困問題への取組み"Speaking Out Against Poverty(SOAP)〜夢や希望をうばわれないために〜"を実施しています。現在までに、調査や啓発を実施すると同時に、政策提言にも力をいれ、「子ども・若者ビジョン」や参議院選挙マニフェスト作成にむけた要望書を提出してきました。
今回は2010年6月11日に出された国連・子どもの権利委員会の日本政府の第3回報告書に対する最終見解で、どのように日本の子どもの貧困が取り上げられているのか、お伝えします。
※国連・子どもの権利委員会最終見解
2010年5月27〜28日にジュネーブにて行われた国連子どもの権利委員会による日本政府の第三回報告書審査を踏まえ、作成されました。
■子どもの貧困解決にむけ、踏み込んだ第3回最終見解■
今回の第3回最終見解では、前回の最終見解(2004年1月採択)と比べ、"子どもの貧困"に関連して、より踏み込んだ表現で、日本の子どもたちについての懸念や日本政府への勧告が行われています!(本審査でも、子どもの権利委員の方々から日本の子どもの貧困について言及した発言がしばしばみられ、討議がありました。)具体的には、下記のようなことが言及されています。
〜子どもの権利条約「実施に関する一般的措置」項目〜
・子どもたちの間に存在する不平等や格差に対応する、子どものための、権利を基盤とした包括的な国家行動計画が存在しないことを依然として懸念。子どものための国家行動計画の採択および実施を勧告。(パラ15、16 国家行動計画)
・日本の子どもの貧困がすでに増加し、人口の約15%に達していることに懸念。子どもの権利の観点から国および自治体の予算を検討し、それにもとづき予算配分をすることを勧告(パラ19、20 資源配分)
・貧困下の子どもを含め、子どもの権利侵害を受けるおそれがある子どもについてのデータが一部ないことを懸念。データ収集の努力を強化するように勧告。(パラ21、22 データ収集)
〜「基礎保健および福祉」項目〜
・日本の貧困率に言及しながら、財政政策および経済政策が、賃金削減、男女の賃金格差、子どものケアおよび教育のための支出の増加により、親およびシングルマザーに影響を与えている可能性があることを懸念。国が子どもの貧困を根絶するために適切な資源を配分するよう勧告し、その中には貧困削減戦略の策定も含むとする。(パラ66、67 十分な生活水準に対する権利)
このように第3回最終見解の中で、子どもの貧困に対し直接的に強く言及する箇所がいくつも見られました。
■子どもの意見の尊重の促進を勧告■
またSOAP事業の軸ともなる子ども参加についても、本審査で十分な審議の時間がとれなかったものの、下記のようにその重要性について言及しています。
〜「一般原則」項目〜
・政策策定プロセスにおいて、子どもおよび子どもの意見に言及されることがめったにないことを懸念。あらゆる場面において、自己に影響を及ぼすあらゆる事柄に関して、全面的に意見を表明する子どもの権利を促進するための措置を強化するよう勧告(パラ43、44 子どもの意見の尊重)
■子どもの声と参加で、子どもの貧困解決を■
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、現在まで政策提言として
・子どもの貧困解決のための包括的な取組みを実施するために、1)子どもの貧困の実態把握、2)子どもの貧困削減のための具体的目標の設定、3)削減計画の設定と実行を明記すること
・上記に際し、子どもの権利条約に基づき、権利の主体である子どもの最善の利益(第2条)、子どもの意見の尊重(第12条)を確保するために、当事者である子どもの参加の保障を明記すること
の上記2点を強く訴えてきました。
日本政府が国連子どもの権利委員会の第3回最終見解をふまえ、子どもの貧困解決にむけた積極的な取組みをしていくよう、今後もセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、子どもたちとともに働きかけていきます。