子どもの貧困に関する全国意識アンケート調査を実施:SOAP(2010.1015)
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)は、子どもの貧困問題への取り組み"Speaking Out Against Poverty(SOAP)〜夢や希望をうばわれないために〜"の一環として、一般市民を対象に「日本の子どもの貧困」に関する全国意識アンケート調査を実施し、大阪事務所では記者報告会を行いました。
■全国から寄せられた市民799人の声■
今回のアンケート調査は、日本の一般市民が子どもの貧困についてどのような意識をもっているかを把握することをねらいとしています。調査期間は、2010年8月からの1カ月間と短かったものの、全国の20代以上の男女779人から回答を頂き、下記のことが明らかになりました。
・日本で「子どもの貧困起きている」83%
日本で「子どもの貧困が起きている」と答えた人は83%、日本で「子どもの貧困は問題だ」と答えた人は91%にのぼり、問題の深刻さが改めて浮き彫りになりました。
・景気のよい時期でも貧困増、子どもの心理に影響
「子どもの貧困は問題だ」と答えた人のうち、「貧困が増えている」とした人は54%。増えた時期については、10年以上前が36%、5年以上前が28%となり、景気が低迷した2008年のリーマンショック以前から、日本で子どもの貧困が増えていると感じる人が多いことがわかりました。また貧困が最も影響を与える分野については、「教育」に次いで「心理」と答える人が多く、子どもたちが感じる疎外感や孤独感を懸念する声が寄せられました。
〜寄せられた市民の声〜
"経済的にも精神的にも通うのが苦しいと感じている生徒の存在に、家庭や学校、地域が見て見ぬふりをすると、子どもたちに無関心の価値観を与えている"(50代男性・教員)
"親に精神的ゆとりがないことで、子どもの自己肯定感もなくなる"(20代女性・子育て支援関係者)
"どうせ無理だろうと思わせる状況があり、夢を持ちにくい"(40代男性・会社員)
"我々が思う「当たり前の暮らし」ができていない子どもたちが本当にいっぱいいる。ごはんを作ってもらえない、親と一緒にいる時間を持てない等。それらが教育・心理・文化など子どもの健やかな成長・発達を阻害している"(60代女性・無職)
アンケート結果の分析にご協力いただいた国立社会保障・人口問題研究所の阿部彩氏は、
「景気のよい時期でも子どもの貧困率が悪化していたことを踏まえると、目先の景気回復だけではなく抜本的な子どもの貧困対策を今こそ打ち出していくべきである。生の声を発信していくことで、子どもの貧困が社会問題であるという認識が広まると感じ、その意味で、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの取り組みは非常に有意義である。」とコメントしています。
■大阪事務所にて記者報告会■
また2010年10月5日(火)には、マスコミを対象に全国意識アンケート調査の結果報告会を行い、全国から寄せられた779人の声を紹介しました。報告会には在阪マスコミ9社の参加があり、広く社会にむけ発信することができました。アンケート調査に回答をくださった皆様、貴重な声をありがとうございました。
■市民社会の声を政策提言に■
厚生労働省は昨年「日本の子どもの7人に1人が貧困下にある(※)」と発表しましたが、その後の詳しい調査は行われておらず、具体的な対策も講じられていません。
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、現在実施中のヒアリング調査を通じて集まっている子どもたちの声、今回のアンケート調査で集まった大人の声を、政府への政策提言に反映させていきます。
※18歳未満のすべての子どもの相対的貧困率14.2%