【報告】シンポジウムに参加しました(2010.02.15)
2月13日(土)、「イラク難民のこころ:ヨルダンにおける心理社会的ケア」と題されたシンポジウムが開催され、盛況のうちに終了しました。当団体からは、一時帰国した林田麻理子ヨルダン事務所駐在員(JPF事業統括)が、発表者、また、パネリストの一人として参加しました。
第一部では、主催者である共生人道支援研究班の調査に参加された山尾大さん(京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科)より、2003年の開戦以後のイラク情勢やイラク難民の歴史と現状が説明され、第二部では、ヨルダンにおいてイラク難民の心理社会的ケアに取り組む日本のNGOのスタッフより、それぞれの活動についての報告がありました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからも、ヨルダン駐在員の林田スタッフが、現地で行っている絵本や影絵などの「物語作りを通じた家庭におけるこころのケア」について発表しました。
人の心は、トラウマになるような経験があったかどうかだけではなく、住む場所や食事などが安定して得られるのか、教育を受けたり仕事をしたりすることができるのか、将来に希望が持てるのか、人とどのような関わりをもっているのかなど、生活の根本的な部分を含めて様々な事柄に大きく影響されます。イラク難民の場合、家族が誘拐された、目の前で殺されたなど戦争に関連する悲惨な経験に加えて、ヨルダンでの不安定な生活が彼らのこころに大きくのし掛かっています。
そのように幅広い原因があるので、心の病の症状や深刻さもさまざま、そしてその対処法もさまざまです。投薬や精神科医によるカウンセリングといった医療アプローチを必要とするもの、イラク人やヨルダン人の関係作りなど、生活環境を整備することで心の安定につながるもの、遊びや劇を通した自己表現による心の健康を図るものなど、支援団体によって、対象としているイラク人によって様々な取り組みが行われています。
第三部のパネルディスカッションでは、共生人道支援研究班の調査に参加された専門家の方々、第二部で報告を行ったNGOのスタッフがパネリストとして参加し、「こころの変化をどう測る?−心理社会的ケアのアカウンタビリティをめぐって」というテーマで議論しました。
<パネリスト>
- 齋藤和樹(日本赤十字秋田看護大学)
- 佐々木恵子(国境なき子どもたち)
- 中川政治(日本国際民間協力会)
- 早川香苗(ジャパン・プラットフォーム)
- 林田麻理子(SCJ)
- 山尾大(京都大学大学院)
上述の通り、心理社会的ケアと同じ言葉で括られてはいても、活動は多岐に渡り、全て同じ方法によって成果を判断できません。また、こころの変化は、簡単に測れるものではなく、誰が見てもわかるように数値化することは非常に困難です。そのような中、自分たちの活動の成果を正しく評価して今後の活動の改善に結びつけるため、さらに寄付してくださる方々や他の支援団体にしっかりと成果を説明できるようにするため、各々の団体では様々な取り組みが行われています。
イラクの情勢は安定してはおらず、ヨルダンに滞在する難民の未来は依然としてはっきりしていません。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、これからもヨルダンにおいて、イラク難民への支援を続けていきます。