絵本が作ったきっかけ(2010.04.01)
ヨルダン事業では、現地移管作業が佳境を迎え、担当スタッフは、センターやボランティアの間を毎日駆け回っています。そんなスタッフが教えてくれた、絵本をきっかけとしたイラク人家族のエピソードを1つお伝えします。ある女性が語ってくれたお話です。
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バグダッドの家の近くに爆弾が落ちた時、当時1歳だった私の娘ヒバは聴覚を失いました。
イラクからヨルダンに移ってきて4年目になりますが、とにかく生活が苦しく、娘のために治療どころか、何もしてやることができていませんでした。また、私の主人は癇癪(かんしゃく)を起こすようになり、子どもへの興味もなくなってしまったようでした。
絵本作りワークショップへ参加の誘いが来た時、びっくりしましたが、とても嬉しくて、主人と参加したいと思いました。主人を説得するのは大変でしたが、私の参加を許してくれ、また彼自身も参加してくれることになりました。でも、2日間のワークショップの間、主人の顔を見ていても、特に興味をひかれたようでも、楽しそうでもありませんでした。
ワークショップも終わり、私が家で夕食の準備をしている時、他の部屋から声がしたので覗いてみると、主人がヒバと一緒にお絵描きをしていました。ワークショップでもらってきた、布でできた花を紙に貼ったり、色を塗ったり...ヒバは主人の膝に座り、本当に嬉しそうにしていました。私は、涙が止まりませんでした。
3年以上もこんな気持ちになったことはなかったように思います。「私の物語」事業に感謝するとともに、私たち家族の間に確かにお互いを思い、愛する気持ちがあることを感じ、本当に嬉しく思いました。
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ヨルダンの首都、アンマン県の北東部にあたるザルカ県の家族の話です。日々の活動に追われるスタッフですが、各施設担当者とのミーティングやワークショップ訪問を通じて、このような話を聞き、また親がワークショップの中で子どもとの時間の大切さに気付く瞬間を目の当たりにして、活動の価値を改めて感じるとともに、その活動が確実に人々に広まっている手ごたえを感じています。
あらためまして、こんにちは。ヨルダン事務所駐在員の林田です。今日はボランティア指導者たちが影絵のワークショップを受ける横でブログを書いています。今回のワークショップは、指導者研修応用編です。前回のブログで紹介したように、この事業では「絵本作り」「物語作り」を通じた支援活動を行っていますが、今回の研修では、物語を表現する方法として、新たに人形劇、影絵の研修を実施しています。参加しているボランティアたちは、すでに、子どもの保護や心のケア、また早期幼児教育といったトピックについて研修を受けていて、絵本作りのワークショップをヨルダン各県の親たちを対象に実施した経験も持ちます。 研修では、参加者は人形劇や影絵の方法を学ぶのはもちろんですが、これまで各地でワークショップを実施した経験を共有しています。うまくいった、参加者がとっても喜んでくれた、と話すボランティアもいれば、上手く伝えられたか自信がない、わからないことを質問されて困ってしまった、といった体験談もあります。研修内でのセッションはもちろんですが、お茶休み中にも、ボランティアたちは、どうしたらより良い対応ができたのか、さらにワークショップを充実させるためには、どんなことができるだろうと、ボランティア同士、そして施設のスタッフと熱心に意見交換をしながら、より良い指導者への道を探っている様子がみられます。 はじめに紹介したように、現在ヨルダン事業では現地移管を進めています。活動のノウハウを研修を通して身につけ、さらには一緒に活動を実施することで、幼稚園やコミュニティセンター、そしてそこで活動するスタッフやボランティアたちへ移管していきます。そして、現地移管を成功させる上でも、上に書いたような、ボランティア間のネットワークは非常に重要な役割を果たします。活動の中で行き詰った時、その施設だけで解決しようとするのではなく、同じように活動する施設のスタッフ、ボランティア同士で相談することができれば、互いの経験を照らし合わせながら、より良い対応策を見出すことが可能となります。 セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンのヨルダン事業は、皆様からのご寄付とジャパン・プラットフォームの助成、また電通リサーチさまからのご寄付により実施しています。実施中の現地移管作業を無事完了できるよう、スタッフ一同、現地コミュニティと一緒に邁進してまいります。