子どものための子どもによるNGO「Child for Child」をご紹介します。(2011.11.2)
日本の皆さま、こんにちは。モンゴル事務所で子どもの教育支援を担当しています、ドラムスレンです。同僚たちからは、「ドヤ」と呼ばれています。
ドヤ
私は2004年からセーブ・ザ・チルドレンの運営するチャイルドセンターのセンター長として働き始め、その後、子どもの保護事業を担当してきました。そして現在は、2011年8月から開始された「子どもにやさしい幼稚園推進」プロジェクトの事業運営スタッフとして働いています。
セーブ・ザ・チルドレンの支援活動に7年間かかわる中で、最も忘れることができない出来事は、モンゴルで初めての、子どものための子どもによるNGO、「Child for Child(チャイルド・フォー・チャイルド)」を立ち上げたことと、当時の団体のリーダーであったB.ツォグゲレル君が、2010年10月にジュネーブに訪問し、国際連合の子ども人権委員会の場で、世界中から集まったNGO代表者と肩を並べ発表する機会を得たことです。
「Child for Child」の代表メンバー。右上がリーダーのB.ツォグゲレル君
今回のブログでは、この子どものための子どもによるNGO「Child for Child」について少し述べてみたいと思います。
このNGOの成り立ちは、2009年に立ち上がった「保護クラブ」にまでさかのぼります(*)。初めは、27人の子どもたちが集まり、モンゴルの子どもたちの権利を守るためには何が必要か、といった調査を子どもたちで行いました。子どもたちはグループに分かれ、市場やゴミ山、貧困層の居住区、孤児院、警察署などで、合計180人の子どもたちへインタビューを実施しました。子どもたちは、深刻な課題の前に圧倒的な無力感に襲われると同時に、使命感をより強くしていきました。そして2010年5月には、このクラブがNGOとして国から認定を受けました。
クラブのメンバーたち
当時18歳だったリーダーのB.ツォグゲレル君は、国際連合子ども人権委員会の場で、こんな感動的な発言を行いました。
国連人権高等弁務官事務所前で
「モンゴル国は1990年に子どもの権利条約の締約国となってから20年が経ちました。しかし、子どもの人権、特に保護の分野で、未だに多くの深刻な問題を抱えています。誰もが生まれたその瞬間から、掛け替えのない生命が守られる権利を持っています。しかしこの国では、本当の意味での子ども守るためのシステムが機能していません。
そして、そのシステムをうまく機能させ発展させるためには、何よりも私たち自身の参加が必要であり、私たち一人ひとりが声を上げなくてはいけません。私はこのことを、自分が今まで続けてきた調査活動を通して学びました。調査活動を続けて行く中で、多くの子どもたちのこんな悲しい嘆きを聞いたからです。
『将来なんてどこにもない』
『だれもわたしを守ることなんてできっこない』
そこには、家族に、社会に見捨てられ絶望した、子どもたちの叫び声がありました。私は、この子どもたち一人ひとりの声を世界へ発信するために、この調査活動を行っているんだ、この声を、どうしても世界に届けなくては、という強い思いに駆り立てられました。私たちは、これからも、すべての子どもたちの権利を守るために活動して行きます」
私は、この声をモンゴルから、世界中の人たちに発信できたことを、本当に心から誇りに思っています。
子ども人権委員会での発表の様子
私は、今年8月から、「子どもにやさしい幼稚園推進」プロジェクトのスタッフとして関わっています。この事業では6歳以下の子どもたちが対象ですので、今までのように実際の子どもの声を届けるという事は出来ないかもしれませんね。でも声にならない子どもの声を、そしてその保護者の声をすくい上げ、またモンゴルから発信していきたいと思っています。
<「Child for Child」の参考情報>
「Child for Child」は、2011年に、「the San Marino-Alexander Bodini Foundation Children's Awards」より、子どもによる子どものための自主的な活動を実施する団体として表彰を受けました。また、「Child for Child」の活動は、2冊の本にまとめられ出版されただけではなく、映像の形でも、社会へと発信されました。以下に、英語版の活動紹介映像のリンクをご紹介します。
(*)この「保護クラブ」は、オーストラリア政府(AusAID)からの資金援助を受けてたちあがりました。