海を渡ったトートバック(2010.01.05)
2009年3月から実施しているセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンによるスリランカ北部での国内避難民支援。このたび阪急百貨店より、国内避難民となった人々へトートバック900枚をご提供いただきました。このトートバックは、同百貨店が今年春日本国内で実施したチャリティーキャンペーンで販売されていたもので、最も多くの避難民を受け入れていた北部ワウニア県にある避難民キャンプで生活している3−5歳の子どもたちとその保護者や、キャンプから出てワウニア市内で生活をする家族に配布しました。
配布後、セーブ・ザ・チルドレンが設置した子ども広場に通う子どもたちの通園カバンとして、また子どもたちの保護者が衛生用品や生活物資などを受け取る際に使う袋として使用されています。
トートバックを子どもと一緒に受けとった親からは、「デザインがかわいいので子どもがとても喜んでいる」、「子どもがバックを受け取り喜んでいる姿が嬉しい」、「子どもが幼稚園に通う際に使わせたい」、ビニールでなく布製なので耐久性があり、長く使えるので便利。汚れてもすぐに洗えるのがいい」などの喜びと感謝の声が聞かれました。
今回の配布で、バックを受け取った一家から話を聞くことができましたのでご紹介させていただきます。
【トートバックを受け取った一家の話】
「私(母親)はサウジアラビアで家政婦として働いていたので、内戦には巻き込まれずに済んだのですが、子どもたち4人と祖母は国内に残っていたため、戦闘に巻き込まれてしまいました」
「祖母と長男は避難する途中で死にました。生き残った子どもたち3人は、ここワウニアに無事到着したのですが、3か月間キャンプ内で暮らしました」
「この子たちの父親は12年前の戦闘に巻き込まれ死んでいます。私がサウジアラビアに行ったのも、家族を養っていくために海外に出稼ぎに出なければならなかったからです。戦闘が激化したのを知り、急いで帰国したのですが、家族の消息は分かりませんでした。家族の行方を捜すために、私は毎日キャンプに通いました。そしてとうとうある日、長女がキャンプの金網越しに私の姿を見つけ、再会を果たすことができたのです」
「子どもたちは別々に避難したため、最初は別々のキャンプに入れられたのですが、長女が周りの人たちに聞いて回り、生き残った二男と三男とも再会を果たすことができました。そして私たちは幸運にも、キャンプを出て一緒に暮らすことが認められたのです。」
「子どもたちは戦闘が激化してから避難生活が続き、学校に通うことができませんでした。特に長女は18歳だったため、徴兵を恐れて身を隠す生活が続いていました。子どもたちの友達の消息はいまでも分かっていません」
子どもたちに将来の夢を聞いたところ、18歳の長女と16歳の二女からは「まずは学校をきちんと卒業したい」という答えが返ってきました。そして「トートバックは学校に行くときに使いたい。大きくて本などを持って帰るのにとても便利」と嬉しそうに話してくれました。
10月から避難民の帰還は本格化しています。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもたちが一日も早く心の安定を取り戻し、未来への希望を持ち続けることができるようにするため、帰還した人たちへの支援を引き続き行ってまいります。
(スリランカ駐在員 真嶋五月)