スリランカ北部 避難民の少女の声

 

IMG_1346.JPG強い日差しが照りつけるスリランカ北部の避難民キャンプ。日中の気温は40度近くにまで上がる。
その日の物資配布は、避難民世帯を小さなグループに分け、それぞれに細かく設定した配布時間を事前に通知することで待ち時間が短かくなるよう配慮されていたが、それでも 30人ほどの人たちが茹で上がるような暑さの中、配布を待つ列に並んでいた。
その配布の様子を少し離れた所から見ていた私に、ひとりの女の子が話しかけてきた。好奇心いっぱいの目を輝かせながら 「名前は? どこから来たの?」と、習いたての英語で一生懸命に話しかけてくる。
彼女の名前はセルヴァ。今年14歳になる九年生で、避難民キャンプに母、兄、弟の四人で暮らしているという。彼女の話をもっと聞きたくて、現地スタッフに通訳をお願いした。
「きょうはお母さんと一緒に、食べ物を受け取りに来たの。配給食以外の食べ物は久しぶりだから弟がとても喜んでいるわ。お母さんはきっと私たちの好きな魚のカレーを晩ご飯に作ってくれるはず」。
キャンプの避難民に一律に配られている国連の配給食は小麦粉や豆類、油、砂糖など、必要最低限の食品に限られており、魚や野菜、香辛料といった副食はセーブ・ザ・チルドレンなどの NGOによって配布されている。
「キャンプに来てから一年になるの。来たばかりのころはとても混乱していて、お母さんも、私たちも大変だったわ」。
北部での戦闘が激化していた昨年三月、セルヴァとその家族は砲火の間隙を縫うように避難を繰り返し、時には真夜中に腰まで泥につかりながら逃げ続けた。彼女の父親はその避難の途中で行方不明になってしまったようだった。
「お父さんはまだ見つかっていないけど、仮設の学校や遊び場に友だちがたくさんいるから寂しくないわ。でも、先生や仲良しになった友達がキャンプからいなくなってしまう時は、ちょっと悲しい」。
一時は28万人にまで膨れ上がったキャンプだが、避難民帰還の本格化とともに規模の縮小が続いている。私たちの避難民支援も、キャンプでの支援から帰還・再定住支援へとその軸足を移しつつあった。
「私たちも、もうすぐ村に帰ることになると思う。けど、私はまだ帰りたくない。安全とは言い切れないし、お父さんも見つかっていないし、不安なの」。
これから彼女が帰る村は、内戦中に最も激しい戦闘があった地域にあり、家や学校、病院なども完全に破壊されてしまっただけでなく、無数の地雷が今なお埋まったままになっていると言われている。
「これまでに、いろんな人がケガをしたり死んでしまうのを見てきたから、将来はお医者さんになってたくさんの人たちを助けたい」という彼女。
内戦が終わった今、避難民となった何万人もの子どもたちが、このセルヴァのように、将来への不安と希望が入り混じった気持ちでいることだろう。彼らが安心して自分たちの家へ帰れるようにしたいという気持ちを強くしながら、再定住が始まっている村々に向かって車をさらに北上させた。

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