子どもにやさしい教育環境創出のために〜マータラ県で新たな事業を開始〜(2011.08.01)
30年以上に及んだ内戦が2009年5月に終了したスリランカでは、ようやく復興が始まっています。一方で、スリランカでは2004年の津波や2011年初頭の洪水など自然災害が発生することも多く、このような状況の中で最も被害を受けるのは子どもたちです。内戦や自然災害が起こるたびに子どもたちが学ぶことのできる機会が失われてきました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(SCJ)はこれまでに、内戦終了後の北部や洪水のあった東部などで緊急援助では見過ごされがちな子どもたちへの支援として、遊び道具や文房具の提供、子ども広場や臨時学習所を運営してきました。
ただ、戦争や災害がない状態がそのまま子ども達が安心して学べる状況にあるとは必ずしも言えません。特に、スリランカでは、初等教育システムにおいて学校設備の貧弱さが一番の課題として挙げられています。特に農村部では安全に学べるスペースや衛生設備などが十分に整備されていなかったり、管理されていない状況が多く、生徒が学校に通わなくなる原因ともなっています。
スリランカ南部のマータラ県にあるハッタトゥワ小中一貫校もそのような学校の一つです。学校は山がちな場所にあり、土砂崩れの危険性があります。また、校舎がスリランカ政府の安全基準を満たしておらず、倒壊や雨漏りのおそれもあります。中には扉や窓がない教室もあり、生徒数に対して教室数が足りずに教員用の部屋も併用せざるを得ない状況です。
ハッタトゥワ小中一貫校の正面入り口です。山の斜面に位置しています。
同校で学ぶ子どもたち。
また、トイレはプライバシーがない状態で、あまりにも不衛生なため生徒、特に女の子が使用を敬遠しているほか、校内に井戸がなく飲料水や手洗いの水がないことなど、劣悪な環境の中で学校に通うことを余儀なくされています。
校舎の一つは壁がなく、吹きさらしの状態です。
トイレは非衛生的でプライバシーもなく、女の子たちは安心して使用できません。
この学校に通う生徒は、椰子、ゴム、茶葉などのプランテーションが広がる地域で日雇い労働などで生計を立てる貧しい家庭の子どもたちが大多数を占めており、保護者の協力があっても自助努力では施設の修繕にも限界があります。一方で、同校は教育設備こそ整っていないものの、教育にかける校長の意欲とリーダーシップは非常に強く、生徒の保護者から寄付を呼びかけるなどして、地域住民とともに出来うる限りの環境改善の努力を行っています。これまでにも地域住民から協力を得て、校内の階段の整備や植木の設置など行ってきました。また地域住民に、定期的な校内の清掃への参加や遠足への資金援助、運動会や体育で使用するスポーツ用品の提供などを呼びかけています。
設備は整っていませんが、地域住民の協力で学校の備品はきちんと管理されています。
SCJはハッタトゥワ小中一貫校に通う子どもたちにより良い教育環境を提供するため、学校設備の修復と衛生設備の改善を行う事業を2011年6月より開始しました。今回の事業を通じて、ハッタトゥワ小中一貫校に通う生徒250人、教員24人及び地域住民500人が学校設備の修復と衛生設備の改善によってより子供にやさしい環境で教育を受けることができるよう支援を行ってまいります。