タイ族のお母さんと赤ちゃんの話1〜おんぶ紐とトイレ訓練〜(2011.8.22)
ベトナムでは、北部山岳地帯で子どもたちの栄養改善事業を行っています。今後、活動報告に加え、事業を行っている、イェンバイのバンチャン郡に住むタイ族のお母さんと赤ちゃんのお話をします。セーブ・ザ・チルドレンが活動を共にするお母さんと子どもたちの力を感じていただければ、とてもうれしいです。今回は、シリーズ第1回目。子育てに欠かせないおんぶ紐とトイレ訓練についてです。
タイ族は山岳地帯にすむベトナムの少数民族で米やもち米を主食としています。結婚すると女性は黒いスカートに色とりどりのスカーフを頭に巻く格好をします。
昔はこのスカーフも手作りで自分の家で作っていたようですが、今ではマーケットで完成品を購入するのが一般的だそうです。
今でも「手作り」と言えば、村に行くといつもひときわ目を引くのが、お母さんたちが赤ちゃんをおんぶするのに使っている"おんぶ紐"です。これらは、全てお母さんの手作り。各家庭に伝わるパターンがあり、一つひとつ手で刺繍して作られます。何百通りとあるパターンはどんなにたくさんのお母さんが集まってもどれ一つ同じものはなく、子どもへの深い愛情を感じます。
色々なデザインがあり、目を見張る
おんぶ紐と同じようにお母さんの手作りで作られているのが小学校のカバンです。これにはおんぶ紐と同じ刺繍が用いられています。子どもが大きくなると、おんぶ紐からカバンにリメイクさせるお母さんもいれば、新しく作るお母さんもいるようですが、刺繍バックを持っている子どもは何とも愛らしく、ついいつもバックを凝視してしまいます。
学校帰りの子どもたち
話を赤ちゃんに戻します。
ベトナムに来てこのタイ族のお母さんたちを頻繁に訪れるようになり、一番びっくりしたことがあります。それは、タイ族のお母さんたちが行う「トイレ訓練」の早さです。なんと、タイ族では生後2ヶ月から赤ちゃんのトイレ訓練は始まるのです。
なぜ、そんなに早くトイレ訓練を始めるのでしょうか。それにはここの気候が関係しています。一つは、ここが山岳地帯で寒く、子どもに常にズボンをはかせていないといけないから。(ズボンをはいていると、おもらしをしたら洗濯をしなければなりません=お母さんの重労働になる)通常、温かいところでは子どもは下半身裸で、おもらしをしたら、そのまま水で綺麗に流すというパターンが多いですが、寒いとそうはいきません。また、水の不足する時期はそんなに頻繁に洗濯もできません。
2時間おきに子どもに「シーシー」と言って根気強く呼びかけると、なんとたった生後2ヶ月の赤ちゃんがきちんとおしっこをするのです。ちなみに、私の姪っ子は3歳でトイレ訓練を始めたと言ったら、タイ族のお母さんに笑われてしまいました。
トイレ訓練をマスターした生後6ヶ月の赤ちゃんとお母さん
2ヶ月の赤ちゃんでも教えればきちんとおしっこができるようになる。タイ族のお母さんこそ、子どもが持つ潜在的な大きな力を信じているような気がしてなりません。
報告者:新井綾香(ベトナム駐在員)