おやこのカタチ

さまざまな国の
親子のつきあい方を学ぶ

オルガさん

出身国:
ウクライナ
家族構成:
小学3年生(8歳)の息子、実母
日本滞在歴:
6年(2000年〜)

大学卒業後に帰国しましたが、結婚、出産を経て、子どもが1歳9ヶ月の時に再び来日。日本で仕事をしながら、一緒に来日した母と協力して子どもを育てていました。しかし、日本の気候に息子の体が慣れず体調を崩すことが多くなり、1年ほどで帰国。今はウクライナで生活しています。

ある1日の過ごし方

7:00
起床
7:30
息子と母と朝食
8:00
息子を学校に送ったあと、家事をする
11:00
在宅ワーク開始
13:00
息子を学校へ迎えに行き、昼食
14:00
息子を課外活動(水泳、英語、数学)に送る
17:00
在宅ワーク終了、息子を迎えに行く
18:00
帰宅後、息子の宿題を一緒にする
18:30
息子、母と夕食
19:30
リラックスタイム(テレビやインターネットを見て過ごすことが多い)
22:00
就寝

子育て環境はどう違う?

ウクライナと日本の子育てでは、
どんなところが違うと感じますか。

ウクライナに比べて、日本は子どもがやりたいことを自由に、いろいろと経験させるようにしていると感じます。幼い子どもが公園で地面に座ったり、砂遊びをすることに対しても寛容ですよね。ウクライナでは家の外に出かけるとき、近所の公園などでも、奇麗な服を着て出かけることが多いです。親は子どもが服を汚さないように、公園の砂場であっても「座ってはいけません」と言ったり、アイスクリーム屋さんを通っても「外では食べてはいけません」と言うなど、ウクライナでは“ちゃんとする”ということに対して厳しく言います。

日本の保育園に息子を預けていたとき、こんなことがありました。まだ小さな息子はコップでうまく水が飲めず、服をよく汚していました。保育園の先生たちは、子どもがこぼしながらも一生懸命に水を飲んでいる様子を写真に撮って見せてくれました。

ウクライナでは、子どもが失敗しそうなことをほとんどやらせないように思います。コップで飲めなければ、大人が飲ませたり、吸い口付きの容器で飲ませたりするなど、子どもが失敗しないように、という考え方が根強いです。

日本の保育園の活動や学校の授業を見ていると、先生が子どもにやさしく接し、いろいろな工夫をして一生懸命に教えようとしていると感じました。

保育園などでは、紙でお花を手づくりしたり絵を描いたりするなど、保育士の先生が子どもたちの創造性を豊かにするようなアクティビティを提供していますし、小学校では、授業時間外であっても子どもに対応し、子どもから質問があればいつでも説明しています。ウクライナの保育園でも、絵を描いたり、工作をしたりすることはありますが、日本に比べると子どもが楽しみながら表現する機会は少ないと感じます。また、私が知っている多くの学校の先生は、授業時間だけ教えて、それ以外の時間は子どもに対して何もしないのが普通のようです。

子育て環境については違いますか。

日本の都会では、子どもが自然と触れ合うことが少ないですね。日本で、ある子どもが魚の絵を描いてと言われて、刺身の絵を描いたという話を聞いたことがあります。ウクライナは、都会でも木々が多い公園がたくさんあり、自然が豊かです。

私は都会で暮らしていますが、アヒルやニワトリなどを飼っている家も多く、子どもたちが動物と触れ合うことも多いです。少し離れるとヤギや牛を飼っている家がたくさんあります。また、夏休みが3ヶ月もあるので、その期間に自然豊かな地方に暮らす親や親戚に子どもを預けることが多いです。子どもたちの多くが自然の中で遊んだり、動物と触れあったりする体験をたくさんします。

一方で、日本には「子ども向けのもの」がたくさんある印象です。子ども向けのイベントやアニメ、子どもが無料で体験できることがたくさんあります。また、子どものオムツ替えをできるトイレが、駅をはじめいろいろなところにありますし、手軽にオムツを買うこともできます。子どものための機能が街の中で考えられていて、小さな子どもでも連れて出かけやすいと感じます。

ウクライナでは、子ども向けのイベントや体験講座がすべて有料で、数も限られています。わざわざ探してお金を払わないと参加できないので、親と子どもに「自分たちで考えて勝手に過ごしてください」と言われている感じがします。

また、小さな子どもを連れて出かけるのはとても大変です。まず、地下鉄にトイレがありません。喫茶店やレストランに入ればトイレはあるけれど、お金がなければ入れません。木の下でオムツ替えをすることもあります。そうなると、家の近所には行けるけれど、遠くに行くことはまったくできません。

どうしても遠くに行く必要があるときは、オムツや水など、必要なものはすべて準備して車で出かけるしかありません。小さな子どもが出かけるということが社会で考えられていないのです。子どもにとっては、日本の方が快適だと感じます。

こんなとき、どうしてる?

子どもが駄々をこねたとき、
どのように対応していましたか。

息子が2、3歳の頃に、泣いたり怒ったりして「いや!」と言うようなときや、「これ、欲しい!」とどうしても譲らないようなときは、怒って言い聞かせるのではなく、「あ、犬がやってくるよ!」とか「ほら、友だちの〇〇くんがいるよ!」などと言って気をそらすようにしていました。

子どもの注意を別のところに向けると、子どもはどうして泣いていたのか、怒っていたのかを忘れてしまったり、そうした気持ちが落ち着いたりするようになります。それでもダメなときは、「時間を置いて待つ」ということもしました。気持ちが収まるまで、次の行動ができないときもありますからね。

あとは、子どもが「これ欲しい!」と騒いでしまうような場面を回避するには、「おもちゃ売り場を通らず別のところに行く」というのも一つの手です(笑)。こういう方法は、ある子どもには有効だけど、ほかの子には効かないということもあります。いろいろやってみて、自分の子どもに合った方法を見つけるしかないですよね。

「これは何?あれは何?」と
聞かれる時期は
どのように対応していましたか。

「それ何?これ何?」と聞かれたときは、できるだけ子どもの質問にちゃんと答えることを心がけていました。どうしても時間がなくてすぐに答えられないときは、「あとで答えるね」と言って、落ち着いたときに対応するようにしました。

ないがしろにせず質問に答えていかないと、子どもはそれが何かわからないままだし、ママは自分と話したくないのかなぁと感じたり、無視されたと思ってしまったりするかもしれません。

あなたが
イライラしてしまったときは、
どんなことをしていますか。

子どもを預けることができるときは、友だちと会って話をしたり、映画を見に行ったり、本を読んだり、1人で散歩に出かけたりします。

でも、私自身はきょうだいがいないし、頼れる親戚も近くにいないので、長い時間をとって一人で過ごすことはなかなかできません。子どもを預けられても2時間から4時間くらい。一緒に住んでいる母にも、長時間子どもを預けるお願いはできません。

どんなときに
子どもと衝突しますか。

最近、息子はスマホでゲームをして過ごすことが多く、そのことについて衝突があります。私から、何度か「もう、見すぎだよ、やめなさい」と注意しても、ずっと無視して遊び続けることがあります。そういうときは、強めに注意をして、しばらく待ちます。このあいだは、強く注意した私に、息子は「なんでそんなこと言うの!」とものすごく怒りました。

ウクライナでは小学校1年生くらいからスマホを持つ子どもが多く、ゲームやスマホの長時間使用が大きな問題になっています。スマホをし続けると次の行動ができないんです。取り上げたりすると息子は泣いたりもするし、本当に困ってしまいます。どうしたら良いかわかりません。

大切にしていること

あなたの国では
「子ども」はどんな存在として
考えられていますか。

ウクライナでは、子どもは「家族の中心として大切な存在」と考えられています。親は自分のことよりも、まず子どものことを大事に考えて、子どもの世話を一生懸命しています。また、他人の子どものことも、とてもかわいがります。

外で子どもを連れていると「かわいい、かわいい」と言って周りの人たちは声をかけてきます。バスや電車を利用するときも、周りの人は、率先して席を譲ってくれたり、子どもに何かものをくれたりします。

息子が小さかった頃は、近くにいる男の人たちがみんなでベビーカーを持ちあげてバスにのせてくれたり、駅の階段で担いで持ってくれたりしました。これは、ウクライナの男性が女性に対してやさしいという文化から来ているのかもしれません。女性が重い物を持っていたりすると、周りにいる男性は率先して手伝ってくれます。

日本では、女性が重い荷物を持っていても、周りが手伝うというようなことはあまりなかったように思います。日本の人にとって、率先して手伝うことは恥ずかしいという思いがあるのかもしれませんね。

「親子のつきあい方」で
大切にしたいことはありますか。

いつでも困ったときには相談してくれるような、「友だちのような関係」であったら良いなと思っています。親だから、子どもは全部言うことを聞きなさいという感じではなくて、子ども自身も自分の意見を持ってお互いに話し合いができると良いなと思います。

子育てで一番問題だと感じるのは、子どもが恐怖を感じて言いたいことが言えなくなってしまったり、そのせいで、子ども自身が自分には権利がないと感じてしまったりすることだと思います。だから、子どもが学校などで困ったことがあれば、子ども自身が「怒られるかも」と怖がって相談しにくくならないよう、いつでも味方になってあげられるようにしたい。

ときに厳しく、大きな声で「~やりなさい!」って叱るときもあるけど、なるべくやさしくするようにしたいと思っています。子どもって、「あとでやる」「うん、わかった」って言いながら、やらないときはやりませんよね。でも、私がそこで息子に対して、わーって怒っても、結局うまくいかないことがわかっているので、なるべく感情的にならず、落ち着いた言い方で伝えようとしています。

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