さまざまな国の
親子のつきあい方を学ぶ
ローリさん
- 出身国:
- アメリカ合衆国
- 家族構成:
- 高校2年生(17歳)の息子、中学校3年生(15歳)の娘、夫、義父、義母
- 日本滞在歴:
- 25年(1995年~)
英語のアシスタントティーチャーとして来日し、その後、私立高校で勤務。10年ほど前から民間の英語スクールを立ち上げ、英語を教えています。日本人の夫と結婚し、2人の子どもの出産と子育てを日本で経験しました。
ある1日の過ごし方
- 7:00
- 起床、お弁当、朝食づくり
- 7:30
- 子どもたちは学校へ登校
- 9:00
- 勤務先へ出発
- 9:30
- 仕事開始
- 16:30
- 娘帰宅、通塾(週2日)
- 17:00
- 息子帰宅、塾(オンライン)
- 18:30
- 義母が夕食準備、夫と義父が帰宅
- 19:00
- 夫、義父、義母、子どもたちで夕食時間
- 21:00
- 仕事終了
- 21:30
- 帰宅、夕食を食べながら子どもたちと学校のことなどを話す
子どもたちは勉強したり、スマホ・タブレットを見たりして過ごす
- 23:00
- 就寝
子育て環境はどう違う?
アメリカと日本の子育てでは、
どんなところが
違うと感じますか。
「寝ること」について違いを感じますね。アメリカでは、赤ちゃんのときから子ども部屋で子どもだけを寝かせることが当然と考えられています。自立させるという考えが強いからかもしれません。私自身も子どものときから一人で寝ていたので、それが当たり前だと思っていました。
一方、日本では、親と小さい子どもが一緒に寝るのが当たり前ですよね。私は最初、どうすれば良いか悩んでいました。いろいろと調べてみると、多くの国で子どもと親が一緒に寝ていることを知り、結局、子どもとは一緒に寝るようになりました。アメリカの友だちにそんな話をすると、「大丈夫?一緒に寝たら(子どもを)つぶさない?」と驚かれました。
また、日本の学校で子どもたちが発表するとき、人前で原稿を読むだけのことがあったのです。そのとき、「これは発表じゃなくて、ただ読んでいるだけじゃない?」と思いました。アメリカでは子どもが小さい頃から「これについてどう思う?」と意見を聴かれたり、人前で自分の意見を言うよう教えられたりします。
アメリカでは、子どもの自立を促して、自分でなんでもできるようにさせます。それは良い面もあるし、良くない面もあると思います。何が正しいではなく、ただの国の考え方の違いなのかもしれません。
子育て環境については
違いますか。
我が家は共働きなので、同居している義母に助けてもらいながら子どもたちを育ててきました。子どもが小さいときは、保育園の送迎や面倒を見てもらうことが多かったです。アメリカだと、親と同居せず遠く離れて暮らすことが多いので、親を頼ることはできません。その代わりに家族以外に子育てを手伝ってもらいます。例えば、ベビーシッターや、仲が良い家族同士で子どもをお互いに預け合うこともあります。
また、子どもの安全に対する考え方が違うと思います。日本は治安が良いこともあり、子どもだけで電車に乗って学校に通ったりします。アメリカはすべての場所が危険というわけではありませんが、多くの子どもたちは、親と一緒に歩いて通うか、車やスクールバスで送迎します。私自身も、昔、アメリカへ子どもと帰省して買い物に行くときなどは「絶対私のそばから離れないで」と子どもに何回も伝えました。子どもが連れ去られるかもという心配がありました。親はみんな、子どもを安全に育てたいと思っていますが、国によって環境が違うので安全への意識が違うのかもしれないですね。
こんなとき、どうしてる?
子どもが駄々をこねたとき、
どのように対応していましたか。
外食しているときに子どもが駄々をこねることがありましたが、子どもに「ぐずれば自分の要求が通る」と学んでほしくなかったので、譲歩せずに子どもを抱きかかえて車に移動したり、家に帰ったりしていました。我が家では、私がしつけをする担当だったので、ダメなものはダメと伝えていました。その代わり、おばあちゃんやおじいちゃんが子どもたちをたくさん甘えさせていましたね。はじめの頃、私にダメと言われると、子どもたちは大きい声で泣いたりもしていましたが、少しずつ理解するようになっていったと思います。
子どもがぐずらないための工夫も考えました。例えば、事前に子どもと衝突しそうな場面を想定し、先回りして子どもたちに説明し、約束するのです。買い物の前に「今日はお菓子1個だけね」、「100円までね」と言うと、子どもたちも理解して自分の好きな物を選ぶことや計算に集中します。
外食の前には「今日は外で食べるけど、デザートは頼まないよ」、「今日はごはん食べるだけだから、おもちゃは買わないよ」と伝えておくと、子どもたちもその前提で行くことができます。それでも子どもたちは欲しくなってしまうこともあります。そのときは「さっき言ったよね」と話し、それでもぐずってしまうときは、ちょっと外に連れ出して落ち着くまで待ってから、また店に入るようにしていました。
「これは何?あれは何?」と
聞かれる時期は
どのように対応していましたか。
なるべく子どもの話を聴いて答えるようにしていました。子どもたちもいろいろなことに関心があって、気になるから質問したいし、質問するのは良いこと。だけど、子どもから質問され続けていると、だんだん疲れてきて「うるさい!」って言ってしまいそうになるときもあります。そういったときは「ママ、わからないからおじいちゃんに聞いてね」などと、家の中にいる大人が交代で答えるようにしていました。
あなたが
イライラしてしまったときは、
どんなことをしていますか。
イライラして子どもに当たってしまいそうなときは、子どもから離れて10秒から30秒数えてから戻るようにしていました。イライラした状態で子どものそばにいるとエスカレートしてしまいます。仕事のイライラを引きずりながら家に帰ると、ジュースをこぼしたとか、あとから振り返ればたいしたことじゃなくても、子どもにすごく怒ってしまったことがありました。子どもに当たってしまったのです。そういうときは、夜、子どもと横になりながら「今日ジュースをこぼしたときに、ママ、すごく怒ってごめんね。今日、ママいろいろなことがあってイライラしていたんだ。ジュースをこぼしたのはそんなに悪いことじゃないよ。言い過ぎてごめんね」と謝りました。
どんなときに子どもと衝突し、
それをどのように解決しますか。
子どもたちが中高生になり、最近は勉強と遊びのバランスについて子どもと話します。テストの結果を見て、点数が落ちていると「自分で決めた目標に向かうためには、自分で勉強していかないとダメなんだよ」と伝えています。中学校に入ってからはうるさく言わないのですが、少しずつでも自分で勉強するという習慣をつけないとやらなくなってしまうと思うので、時々そういう話をします。将来、子ども自身がやりたいことをできれば良いと思いますが、その選択肢や道を広げるために、今は勉強が必要だよと、子どもたちに言います。
受験が近づいてきているので、志望校の話でも衝突することがあります。子どもの行きたい進学先と私が良いなと思う進学先が違うときなど、なるべく本人の意見を尊重したいと思う一方で、子ども自身が「なぜその学校へ行きたいのか」をはっきり説明できるか確認します。最終的には子どもが納得して決めた進学先で勉強を頑張ってもらいたいと思っています。子どもは自分の気持ちを親に聴いてほしい、理解してほしいという気持ちが大きいと思うので、子どもの考えや気持ちをないがしろにしないようしたいと思っています。
大切にしていること
あなたの国やあなた自身は、
「子ども」をどんな存在として
考えていますか。
アメリカでは、子どもは「社会の将来を担う存在である」という考え方があります。将来、他者に対しての共感性を持って行動できる人間や、世界や社会のために貢献できる人間になってほしいと考えている人は多いと思います。
今、我が家の子どもたちは、地域の関わりも含めていろいろな人との関わり合いの中で、ほかの大人の意見を聞いて育っています。そのため最近は、私の考えと息子自身の考えとが違ってきていることが見えてきました。私自身も大学でさまざまな影響を受ける中で、親と違う考えを知り少しずつ変わってきたという経験があります。だから、子どもたちが自分と同じ考えでなくても良い。いろいろな人からの影響を受けながらでも、自分の考えをしっかり持てるようになると良いなと思っています。
「親子のつきあい方」で
大切にしたいことはありますか。
子どもが何をしても、何か困ったときには、なんでも相談できる存在でありたいです。たまに、子どもが困っていても親が怖くて話せないという話を聞きます。私はどんなときでも話してもらえるような関係をつくりたいと思っています。子どもが悪いことをしたとしても、愛していることに変わりはありません。
子どもを注意するときは「今、あなたがしていることに対して注意しているけど、愛しているということは変わらないよ」というメッセージを伝えるようにしています。でも、良い親になるための授業を受けたことはないので、すべてが経験です。失敗もたくさんしました。どんな親でも何百回と失敗はあると思います。
子どもに当たってしまったときは子どもにきちんと謝って次の日からまた頑張る。それしかできない気がします。