（公開日：2020.06.10）
イエメン 病院閉鎖が深刻なアデン―新型コロナウイルス感染症に似た症状による死者が増加
- イエメン
アデン県は、5月4日の週に、少なくとも385人が、新型コロナウイルス感染症に似た症状で亡くなったと発表しました[1]。これは1日あたり50人以上が亡くなっている状況であり、1日あたり10人の死者が報告されていた5月7日時点と比較し、死者の数は5倍にのぼっています[2]。新型コロナウイルス感染症が感染拡大するなか、同県では複数の病院が閉鎖し、適切な防護具が不足しているため医療従事者が業務を拒否している状況にあります。
イエメン・タイズ県の保健医療施設に勤務する医師アブダラ。施設は一度閉鎖されたがセーブ・ザ・チルドレンによる支援で再開
5月11日の週より公立病院2ヶ所が救急医療のみ診療を開始し、呼吸器症状のない発熱患者の治療のみ行っている状態です。また、小児科でも入院患者の受け入れを停止し、産婦人科では分娩のみ行われています。
アデン県内の多くの私立病院は休業し、呼吸器症状や熱のない持病のある患者の治療のみ行われています。すでに、必要な治療を受けられなかったことにより、人々が亡くなっているとも報じられています。
セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所 プログラムディレクター モハメド・アシャマは次のように話します。
「現場で活動するスタッフは、人々が呼吸困難や倒れこむような状態で病院から送り返される姿を目にしています。人々は、通常ならば受けられる治療が受けられずに亡くなっているのです。病院から病院へ転々とし受け入れ先が決まらない患者もいます。私たちは、ここ数週間のあいだに、大切な人を2、3人も失ったと話す家族たちの話も聞きました。
こうした状況はすべて、この国に感染症の世界的な流行が迫っていることを示す兆候です。私たちが支援している治療施設では、来るべき事態に備えてあらゆる策を講じていますが、防護具やベッド、人工呼吸器が必要です。
アデン県は、紛争やデング熱、チクングニア熱や新型コロナウイルス感染症など致死的な病のリスクに直面しています。呼吸器や熱、虚弱などの症状を示した後に死亡した患者の急増は、同県から報告されているよりも多くの新型コロナウイルスの感染者がいるのではないかという懸念を生じさせています。」
5月13日時点では、アデン県における新型コロナウイルス感染者数は41人、うち死者は5人 とされています[3]。また、タイズ県とイッブ県では、3人の陽性者が確認されており、世界保健機関(WHO)は、その時点でイエメン国内全体で72人の感染者と13人の死亡 を確認したと報告しています 。
イエメンの保健医療施設は、今回の感染症流行に対応できるほど整っていません。感染拡大が確認されるまでに、すでに国内にある保健医療施設のうち半数しか完全に稼働しておらず、病院が閉鎖し始めてからはその数は減る一方です。くわえて、イエメン全土で人工呼吸器が500台しかなく、新型コロナウイルスの検査を行っているのは4ヶ所だけです。5月2日時点において、検査が完了した人数は200人と報告されています[4]。
既存の保健医療施設のなかには、隔離施設として利用されている施設もあり、国内に38ヶ所の新型コロナウイルス感染症隔離施設が設置され、集中治療室にベッド520床が用意されました[5]。
セーブ・ザ・チルドレンは、4ヶ所の隔離施設と約75ヶ所の保健医療施設を支援し、感染症予防に関する啓発活動も行っています。
セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所代表ザビエル・ジュベールは次のように話します。
「新型コロナウイルス感染症は、この国を限りなく危機的な状況へと追い詰めています。アデンで急増している死者は、このウイルスが非常に速いスピードで感染拡大することや、現在確認されている感染者数よりも実際の感染者数が多いことを示唆しています。病院は次々に閉鎖するなか、患者は追い返されるか、亡くなるまで放っておかれているのです。
紛争当事者たちは恒久的な停戦を実現できておらず、それが新型コロナウイルス感染症や他の病気による死者の急増という事態を招いています。すべての当事者たちはその責任を問われるべきです。今すぐに紛争をやめ、イエメンの人々や医療従事者、人道支援団体が新型コロナウイルス感染症の影響を最小限におさえることに注力できるようにすべきです。
また、アデンだけでなく、国全体で適切な防護具の供給や感染症の検査能力を高めることもとても重要です。医師が自らの仕事を恐れ、患者が必要な治療を受けられない場合、直接の影響を受けるのは、栄養不良の子どもたちや他の病気により脆弱な状態にある患者たちです。イエメン国内での死亡者数の急増は、保健医療体制と人々が脆弱な状態に置かれていることを示す凄惨な証拠なのです。」
[1] Press Announcements of Civil Status and Civil Registry Authority in Aden, 7-12th May
[2] Civil Registration Department at Yemen’ Ministry of Interior
[3] Yemen’s Ministry of Health
[4] Yemen Humanitarian Country Team (HCT)
[5]https://reliefweb.int/report/yemen/yemen-covid-19-preparedness-and-response-snapshot-9-may-2020-enar
イエメン・タイズ県の保健医療施設に勤務する医師アブダラ。施設は一度閉鎖されたがセーブ・ザ・チルドレンによる支援で再開
5月11日の週より公立病院2ヶ所が救急医療のみ診療を開始し、呼吸器症状のない発熱患者の治療のみ行っている状態です。また、小児科でも入院患者の受け入れを停止し、産婦人科では分娩のみ行われています。
アデン県内の多くの私立病院は休業し、呼吸器症状や熱のない持病のある患者の治療のみ行われています。すでに、必要な治療を受けられなかったことにより、人々が亡くなっているとも報じられています。
セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所 プログラムディレクター モハメド・アシャマは次のように話します。
「現場で活動するスタッフは、人々が呼吸困難や倒れこむような状態で病院から送り返される姿を目にしています。人々は、通常ならば受けられる治療が受けられずに亡くなっているのです。病院から病院へ転々とし受け入れ先が決まらない患者もいます。私たちは、ここ数週間のあいだに、大切な人を2、3人も失ったと話す家族たちの話も聞きました。
こうした状況はすべて、この国に感染症の世界的な流行が迫っていることを示す兆候です。私たちが支援している治療施設では、来るべき事態に備えてあらゆる策を講じていますが、防護具やベッド、人工呼吸器が必要です。
アデン県は、紛争やデング熱、チクングニア熱や新型コロナウイルス感染症など致死的な病のリスクに直面しています。呼吸器や熱、虚弱などの症状を示した後に死亡した患者の急増は、同県から報告されているよりも多くの新型コロナウイルスの感染者がいるのではないかという懸念を生じさせています。」
5月13日時点では、アデン県における新型コロナウイルス感染者数は41人、うち死者は5人 とされています[3]。また、タイズ県とイッブ県では、3人の陽性者が確認されており、世界保健機関(WHO)は、その時点でイエメン国内全体で72人の感染者と13人の死亡 を確認したと報告しています 。
イエメンの保健医療施設は、今回の感染症流行に対応できるほど整っていません。感染拡大が確認されるまでに、すでに国内にある保健医療施設のうち半数しか完全に稼働しておらず、病院が閉鎖し始めてからはその数は減る一方です。くわえて、イエメン全土で人工呼吸器が500台しかなく、新型コロナウイルスの検査を行っているのは4ヶ所だけです。5月2日時点において、検査が完了した人数は200人と報告されています[4]。
既存の保健医療施設のなかには、隔離施設として利用されている施設もあり、国内に38ヶ所の新型コロナウイルス感染症隔離施設が設置され、集中治療室にベッド520床が用意されました[5]。
セーブ・ザ・チルドレンは、4ヶ所の隔離施設と約75ヶ所の保健医療施設を支援し、感染症予防に関する啓発活動も行っています。
セーブ・ザ・チルドレン イエメン事務所代表ザビエル・ジュベールは次のように話します。
「新型コロナウイルス感染症は、この国を限りなく危機的な状況へと追い詰めています。アデンで急増している死者は、このウイルスが非常に速いスピードで感染拡大することや、現在確認されている感染者数よりも実際の感染者数が多いことを示唆しています。病院は次々に閉鎖するなか、患者は追い返されるか、亡くなるまで放っておかれているのです。
紛争当事者たちは恒久的な停戦を実現できておらず、それが新型コロナウイルス感染症や他の病気による死者の急増という事態を招いています。すべての当事者たちはその責任を問われるべきです。今すぐに紛争をやめ、イエメンの人々や医療従事者、人道支援団体が新型コロナウイルス感染症の影響を最小限におさえることに注力できるようにすべきです。
また、アデンだけでなく、国全体で適切な防護具の供給や感染症の検査能力を高めることもとても重要です。医師が自らの仕事を恐れ、患者が必要な治療を受けられない場合、直接の影響を受けるのは、栄養不良の子どもたちや他の病気により脆弱な状態にある患者たちです。イエメン国内での死亡者数の急増は、保健医療体制と人々が脆弱な状態に置かれていることを示す凄惨な証拠なのです。」
[1] Press Announcements of Civil Status and Civil Registry Authority in Aden, 7-12th May
[2] Civil Registration Department at Yemen’ Ministry of Interior
[3] Yemen’s Ministry of Health
[4] Yemen Humanitarian Country Team (HCT)
[5]https://reliefweb.int/report/yemen/yemen-covid-19-preparedness-and-response-snapshot-9-may-2020-enar
