『コロナ×子どものまなぶ権利とおかね』ヒアリング 約6割の中高生世代が自分や周囲で「学校にかかる費用に困難を感じる」と回答 学校に必要な教材や給食費、部活動費、進学費用等の負担軽減求める―1都8県(岩手・宮城・長野・埼玉県、東京都、千葉・神奈川・岐阜・岡山県)中高生世代606人のアンケート結果より

子ども支援専門の国際NGO公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:井田純一郎/専務理事・事務局長:三好集、本部:東京都千代田区)は、子どもの貧困問題解決と意見表明権の保障に向けた取り組みの一環として、2021年4月から7月に実施した「『コロナ×子どものまなぶ権利とおかね』ヒアリング」の実施結果を発表しました。


本ヒアリングは、従来からの学校にかかる私費負担や新型コロナウイルス感染症の影響がある中で、経済的に困難な状況にある子どもたちの学習環境の現状について気になっていることや困っていること、政府や社会に求めたいことなどを理解し発信することを目的として実施しました。

アンケート調査とインタビューによる聞き取りの結果、以下のようなことが明らかとなりました。(有効アンケート回答数606件、インタビュー参加者9人)
1.約6割の中高生世代が自分や周囲で「学校にかかるお金で困っている人がいると感じることがある」と回答した。

2.「困っている人がいる」と回答した中高生世代のうち、66.9%が「有料の塾(じゅく)や通信教育などで学ぶことができない」、63.6%が「制服を買う・そろえるのが大変」と回答した。また、「オンライン・家庭学習に必要なもの(インターネット、パソコン、勉強できる場所など)がなく、オンライン・家庭学習ができない」(52.6%)、「進学先をあきらめたり、変えたりしないといけない」(51.8%)、「部活動・クラブ活動に必要なものが買えず、参加がむずかしい」(50.1%)もそれぞれ過半数を超える回答となった。

3.新型コロナウイルス感染症拡大以前と比べて、学校での学びへの影響について、「わからない、難しいと感じることが増えた」のは33%で、約3人に1人であった。その理由として、半数近くが「塾に通えなくなった」、「オンライン・家庭学習に必要なものをそろえられなかった」、「お金が理由で進路をあきらめたり変えたりしないといけなくなり、勉強のやる気が低下した」と回答した。

4.大人や政府への要望として、約6割が「学校に必要な教材は学校が用意する」、5割以上が「部活動・クラブ活動にお金がかからないようにする」、「給食費・通学時の昼食費を無料にする」をあげた。

5.「何かをしたくてもお金がかかるから あきらめたりする(東京都・高2)」「学校の勉強だけではついていけず塾に通いたいが通えない(東京都・高1)」「お金無いから授業料払えないし、お弁当も持っていけない時は誰かにわけてもらう(東京都・高2)」「教材とかも自分で払っている(神奈川県・高3)」といった声が寄せられた。(ヒアリングからの抜粋)

セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちの意見を受け、すべての子どもを対象とした教育の無償化を求め、関係省庁や地方自治体等に向けて以下の施策を講じるよう提言しています。
■提言
(1)高等学校等までの教育の無償化のロードマップを策定する
当事者である子どもたちの意見を聴きながら、すべての子どもを対象とした中等・高等教育の「広義の無償化」に向けたロードマップを検討・策定することを求めます。

(2)給食を無料にする/昼食代の補助をおこなう
義務教育課程における給食の無償化と高等学校等における昼食費の補助を求めます。

(3)通学していない人もふくめ、多様な学びの支援をふやす
補習や少人数学級のための教職員・学習指導員等の加配やオンライン学習の経済的・人的サポートなど、多様な学習支援の環境整備を進めるとともに、これらの予算が適切に執行されるよう、フォローアップ調査の実施を求めます。

(4)大学等進学にかかる立て替え・前払いをなくし、給付型奨学金をふやす
子どもの教育への公的支出を抜本的に引き上げ、子どもの現在と将来の学びが経済的事情に左右されないよう予算配分・執行することを求めます。

(5)中学・高等学校等ともに最終学年の前から、進路にかかるサポート情報をわかりやすく届ける
経済的困難を抱える世帯の子どもが中学・高校卒業後の進路について経済的な影響を実感し、そのために学習意欲も低くなっていることから、修学支援制度などの進路選択や受験にかかる情報なども含めて、最終学年の前から早めに、子どもにわかりやすい方法・内容で届けられるよう求めます。

ヒアリング調査結果報告書(全文・詳細版・12ページ)はこちら
報告書(ダイジェスト・多言語版・4ページ)は下記から:
日本語ダイジェスト
やさしい日本語
スペイン語
中国語(簡体字)
英語

提言書(全文)はこちら
提言書(やさしい日本語)はこちら


<本調査結果を受けての今後の活動>
セーブ・ザ・チルドレンは、本ヒアリング結果をもとに、経済的に困難な状況にある子どもが、世帯の経済状況に左右されることなく安心して学ぶことができるよう、提言に示した内容を国や自治体、教育関係者などに働きかけていきます。また、今後本ヒアリング結果に関し子どもと大人を対象としたオンライン発表会と有識者を交えたトークセッションを予定しており、子どもの学ぶ権利や教育の無償化について社会啓発活動にも取り組んでいきます。

<セーブ・ザ・チルドレンの日本の子どもの貧困問題解決への取り組み>
セーブ・ザ・チルドレンは、2010年から日本の子どもの貧困問題解決への取り組みを開始し、現在、1)経済的に困難な状況下にある子どもや養育者への直接支援、2)子どもの貧困対策充実に向けた世論形成のための社会啓発、3)子どもの貧困問題に関する政策・施策のより良い整備に向けた政策提言という3つの柱をもとに、活動しています。
子どもの権利条約の一般原則のひとつである「子どもの意見表明権(第12条)」に着目し、子どもが意見を表明し聴かれる機会づくりにも取り組んでいます。

参考資料
<「コロナ×子どものまなぶ権利とおかね」ヒアリング概要>
【調査の目的】

国連子どもの権利条約は、すべての子どもの学ぶ権利(教育を受ける権利・第28条)、子どもに関わるすべてのことについて意見を表明しきちんと聴かれる権利(意見を聴かれる権利・第12条)を定めている。新型コロナウイルス感染症の影響があるなかで、経済的に困難な状況にある子どもたちの「学ぶ権利」が守られているのか、子どもの声を聴き、現状を把握することで、問題改善に向けて国・自治体への政策提言につなげる。

【主な調査内容】
・中高生世代を対象としたアンケート調査:学校生活における経済的影響について、新型コロナウイルス感染症の影響拡大以降、経済的影響が及ぼす学習の理解度について、経済的影響に左右されない子どもの学ぶ権利を保障するための取り組みについて大人・政府への要望
・中高生世代を対象としたインタビュー調査:主に上記のアンケート調査内容に沿った、セーブ・ザ・チルドレンのスタッフとの自由な対話形式によるインタビュー

【調査の実施状況】
・調査地域 : 1都8県(岩手・宮城・長野・埼玉県、東京都、千葉・神奈川・岐阜・岡山県)
・調査対象 : セーブ・ザ・チルドレンの活動(食料品支援、子ども給付金)を通じてつながった中高生世代の子ども
・調査方法 : アンケート調査:保護者および協力団体を通じてオンラインアンケートを案内し、任意回答。また、紙面での自記式にて任意回答。
インタビュー調査:保護者および協力団体を通じてインタビュー案内を送付し、協力が得られた子どもに対し、オンラインもしくは対面で1時間のインタビューを実施した。
・実施期間 : 2021年4月2日~7月8日
・有効回答数 : 606件(アンケート調査)、 9件(インタビュー調査)




【取材のお申し込みや、本件に対する報道関係の方のお問い合わせ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 広報 太田
TEL: 03-6859-0011 携帯:080-2568-3144
E-mail: japan.press@savethechildren.org
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