【活動報告】法的観点からセーフガーディングの人材管理について学びました

セーブ・ザ・チルドレンは、国際協力や人道支援活動に関わるNGOがセーフガーディングの取組をともに学び、強化していくための「子どもと若者のセーフガーディング実践研修」を実施しています。
全7回の研修を通して、参加団体が⼦どもや若者支援に携わるNGOとしての組織的責任や、問題背景と実情についての理解を深め、国際基準に沿ったセーフガーディングの制度や仕組みを、各々の団体内に導⼊し強化していくことを目的としています。


2022年5月17日に開催した第5回研修では、「人材の募集・採用時の留意点と被害発生時の対応」と題し、セーフガーディングの中でも法律との擦り合わせが不可欠なテーマについて弁護士を招いて深く学びました。講師として、「NPOのための弁護士ネットワーク」の創設者で理事の樽本哲弁護士が登壇し、15団体からの34人の参加者と、オブザーバー2人を加えてのオンライン研修となりました。



このテーマを扱ったのは、子ども支援の場で不適切行為を行った人物が職を変え、転職先で問題を重ねるという背景があるためです。海外では、子どもと接する仕事に就く人を採用する際、採用する側が過去の経歴照会をすることを義務付けている国もありますが、日本ではそのような制度がまだ整っていません。職を求める人の権利を侵害することなく、子どもや若者支援に適する人材をどうやって確保していくのか、ということが課題の一つです。

そこで、今回はまず、セーフガーディングに関連する人材採用や処遇をめぐる課題や国際的動向について振り返ったうえで、スタッフ採用時に留意すべき日本の法令について学び、さらに懲戒処分情報などに関する適法な情報取得や管理のあり方についても法令上でどのような点に留意しなればならないのか、具体例をあげながら教えてもらいました。そのうえで、仕事に応募する方々の権利を守りながら、どうやって子どもや若者に関わるスタッフとして働く人材を見極めるのかについて意見交換を行いました。

さらに、何らかの問題が発生した場合に、団体としてどのように向き合うのか、被害者のケアや、法人や役員の法的責任という視点も踏まえ、考慮・対応すべき要素について考える時間を持ちました。
手続き論だけに終わるのではなく、そのことが及ぼす影響の甚大さや、それに対峙する責任の重みを再確認することになりました。


研修の参加者から寄せられた感想の一部をご紹介します。
  「採用時の対応について、他の団体がどのように対応されているのか意見交換をしたり、専門家の方から具体的な説明を受けたりする機会がないため、貴重な機会だった」
  「組織内で取組みを始めたばかりだが、リファレンスチェック(経歴や身元の照会)実施の際の注意点、同意を得ること、個人情報の取り扱い等、改善すべき点が具体的に見えてきた」


昨今は、子どもに対する不適切な言動、とりわけ性的加害を見過ごしてはならいと、日本国内でさまざまな動きが出ています。
例えば、児童生徒へ性暴力を行った教員が再び簡単に教職に就くことを防止する法律や、雇用者側が被雇用者の性犯罪歴の有無を確認するDBS(Disclosure and Barrier Service)という制度についての検討が進んでいます。

過ちを犯した人の人権や更生という側面も考慮しながら、何よりも子どもの権利を最優先し、再発を防ぎ、子どもたちを守っていくために社会が何をすべきか、という視点を大事に議論が進んでいくことを望みます。

本事業はJICAの「NGO等提案型プログラム」の一環として、NGOの組織運営や事業実施上の能力強化を行う目的のスキームを利用したものです。また、実施にあたっては、JANICの「子どもと若者のセーフガーディング・ワーキンググループ」が協力しています。

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