(公開日:2023.02.21)
【ウクライナ危機から1年】紛争が子どもたちに及ぼした影響:報告書『大きな犠牲』
- ウクライナ
ウクライナ危機から1年が経ちます。2022年に、紛争が激しくなって以降、ウクライナに暮らす子どもたちは、平均920時間(38.3日間)にわたり、地下室などでの避難生活を強いられました。
この数値は、昨年ウクライナでは平均1時間にわたる空襲警報が1万6,207回だされ、1回の警報で家族は8時間地下室などに避難を余儀なくされていたことから算出しました。
オレさん(4歳)は、「私たちが地下室にいるのは、空襲警報のサイレンが鳴るからです。(ここに来たら、)もうサイレンは鳴ることはなく、(ここで)お絵描きや人形で遊ぶのが楽しいです」と語っています。
首都キーウのような大都市では、家族は子どもたちとともに地下駐車場や地下鉄の駅に避難しています。その中には、戦闘が激しくなった初期の段階から地下にテントを設置していた家族もいました。
子ども2人と夫がいるマリナさんは次の通り話します。
「戦闘機が離陸するとき、私たちは身支度を整えます。紛争が始まったばかりの頃は怖かったですが、今では日常になりました。地下鉄のホームに避難している家族は、水や食料を詰めたリュックを持ち、持参した小さな椅子に座ったりしています。多くの家族にとって、攻撃があるたびに、地下鉄ホームに避難することは、習慣になっています。」
娘のオレナさん(12歳)は、避難生活について、「空襲警報が鳴っている間はスマートフォンを見たり、学期中は宿題をしています。避難しているのは爆撃に遭うかもしれないからで、安全のためです。つまらないと感じることもありますが、けがをするよりはいいです。」
爆撃のなかで日常生活を送る子どもや大人は深刻な精神的苦痛を抱えています。世界保健機関(WHO)は、紛争を経験した5人に1人が、何らかの精神疾患に直面するリスクが高く、戦闘行為の期間が長引けば長引くほど、その症状はより深刻になると推定しています。
この数値は、昨年ウクライナでは平均1時間にわたる空襲警報が1万6,207回だされ、1回の警報で家族は8時間地下室などに避難を余儀なくされていたことから算出しました。
報告書『大きな犠牲(A Heavy Toll)』
たとえば、北東部ハルキウ州では、計1,500時間にのぼる1,700回の空襲警報がだされ、ドネツクやザポリージャでは、それぞれ1,100時間以上警報が出されました。
南東部の戦闘が激しい地域では、砲弾はやむことなく、家族は自宅から離れ、地下室など電力や水、暖房もない場所への避難を強いられました。
当時ハルキウに暮らしていたソフィアさん(16歳)は昨年2月24日のことを次の通り振り返ります。
「みんな死ぬのが怖く、泣き叫んでいました。」
その後、ソフィアさんは、何度か避難を繰り返した後、ボランティアと協力して8人の子どもたちとともに避難し、今はウクライナ西部で祖母と暮らしています。
西部は最も安全な地域と考えられていますが、それでも空襲警報が頻繁に鳴り響いています。警報がでると、ソフィアさんは、いつもなら暗く寒い家の地下室で1時間過ごしますが、学校に行っているときに空襲警報がでたときは、避難するのが困難だと話します。
「空襲警報のサイレンが鳴ったら、上級生(9年生から11年生)は、防空壕がある役場に行きます。学校からそこまで走って5分、歩いて15分です。もし停電中に警報がでたら、サイレンは聞こえません。ミサイル攻撃があった場合、防空壕への避難までに47秒の猶予しかありません。」
家具が揃えられた防空壕のような設備や、必要な家財をそろえることは、誰にでもできることではないため、多くの人が暖房設備も不充分な集合住宅の地下室などに避難しているのが現状です。
ウクライナ東部ドニプロ州では、攻撃がより頻繁に起こっています。実際、爆撃によってアパートが破壊され、46人の市民が犠牲になりました。ドニプロ市の郊外にある幼稚園の先生は、セーブ・ザ・チルドレンに対し、空襲警報は今や生徒たちの生活の一部になっていると話しました。
およそ200人の生徒を避難させる必要がある幼稚園の先生は、次の通り述べます。
「子どもたちは約3分で、服を着て、外に出て、防空壕まで避難します。正直、子どもたちはそこが好きで、『次はいつ洞窟に行くの?』と聞いてくるほどです。もちろん、泣きだす子どももいます。
当時ハルキウに暮らしていたソフィアさん(16歳)は昨年2月24日のことを次の通り振り返ります。
「みんな死ぬのが怖く、泣き叫んでいました。」
その後、ソフィアさんは、何度か避難を繰り返した後、ボランティアと協力して8人の子どもたちとともに避難し、今はウクライナ西部で祖母と暮らしています。
西部は最も安全な地域と考えられていますが、それでも空襲警報が頻繁に鳴り響いています。警報がでると、ソフィアさんは、いつもなら暗く寒い家の地下室で1時間過ごしますが、学校に行っているときに空襲警報がでたときは、避難するのが困難だと話します。
「空襲警報のサイレンが鳴ったら、上級生(9年生から11年生)は、防空壕がある役場に行きます。学校からそこまで走って5分、歩いて15分です。もし停電中に警報がでたら、サイレンは聞こえません。ミサイル攻撃があった場合、防空壕への避難までに47秒の猶予しかありません。」
家具が揃えられた防空壕のような設備や、必要な家財をそろえることは、誰にでもできることではないため、多くの人が暖房設備も不充分な集合住宅の地下室などに避難しているのが現状です。
ウクライナ東部ドニプロ州では、攻撃がより頻繁に起こっています。実際、爆撃によってアパートが破壊され、46人の市民が犠牲になりました。ドニプロ市の郊外にある幼稚園の先生は、セーブ・ザ・チルドレンに対し、空襲警報は今や生徒たちの生活の一部になっていると話しました。
およそ200人の生徒を避難させる必要がある幼稚園の先生は、次の通り述べます。
「子どもたちは約3分で、服を着て、外に出て、防空壕まで避難します。正直、子どもたちはそこが好きで、『次はいつ洞窟に行くの?』と聞いてくるほどです。もちろん、泣きだす子どももいます。
私たちはインクルーシブ教育も行っており、防空壕内に「1人でいられる場所」を設けています。しばらく一人でいたい子どもにとって、周囲の音が聞こえない静かな場所は必要です。」
そして、空襲警報によるストレスを軽減するため、先生は時に遊びを取り入れた訓練を実施し、子どもたちが緊急事態に速やかに避難できるように準備しています。
避難先の地下室には、絵を描いたり、遊んだり、踊ったりするための設備も整っています。すべての生徒が、水やお菓子、防寒着、お気に入りのおもちゃなどが入った非常用持ち出し袋を棚に入れて備えています。
そして、空襲警報によるストレスを軽減するため、先生は時に遊びを取り入れた訓練を実施し、子どもたちが緊急事態に速やかに避難できるように準備しています。
避難先の地下室には、絵を描いたり、遊んだり、踊ったりするための設備も整っています。すべての生徒が、水やお菓子、防寒着、お気に入りのおもちゃなどが入った非常用持ち出し袋を棚に入れて備えています。
避難先の地下室で友だちと遊ぶオレさん(一番右)
オレさん(4歳)は、「私たちが地下室にいるのは、空襲警報のサイレンが鳴るからです。(ここに来たら、)もうサイレンは鳴ることはなく、(ここで)お絵描きや人形で遊ぶのが楽しいです」と語っています。
首都キーウのような大都市では、家族は子どもたちとともに地下駐車場や地下鉄の駅に避難しています。その中には、戦闘が激しくなった初期の段階から地下にテントを設置していた家族もいました。
子ども2人と夫がいるマリナさんは次の通り話します。
「戦闘機が離陸するとき、私たちは身支度を整えます。紛争が始まったばかりの頃は怖かったですが、今では日常になりました。地下鉄のホームに避難している家族は、水や食料を詰めたリュックを持ち、持参した小さな椅子に座ったりしています。多くの家族にとって、攻撃があるたびに、地下鉄ホームに避難することは、習慣になっています。」
娘のオレナさん(12歳)は、避難生活について、「空襲警報が鳴っている間はスマートフォンを見たり、学期中は宿題をしています。避難しているのは爆撃に遭うかもしれないからで、安全のためです。つまらないと感じることもありますが、けがをするよりはいいです。」
爆撃のなかで日常生活を送る子どもや大人は深刻な精神的苦痛を抱えています。世界保健機関(WHO)は、紛争を経験した5人に1人が、何らかの精神疾患に直面するリスクが高く、戦闘行為の期間が長引けば長引くほど、その症状はより深刻になると推定しています。
セーブ・ザ・チルドレンは、報告書『大きな犠牲(A Heavy Toll)』を発表し、ウクライナ危機によるさまざまな暴力や権利侵害が子どもたちへ及ぼした影響についてまとめています。
私たちは、この紛争に関わるすべての当事者や関係者に、国際人道法と人権法の順守と、民間人および民間施設、特に家や学校、病院などを攻撃しないことを保証するよう要請します。そして、子どもに対する人権侵害の加害者は、その責任を負わなければならないことも訴えます。
セーブ・ザ・チルドレンは、2014年からウクライナ東部で子ども支援活動をしてきました。2022年2月24日以降、支援活動を拡充し、食料や水、現金、安心・安全な空間(こどもひろば)をはじめとする緊急支援活動を、43万6,500人の子どもを含む80万人以上に届けてきました。
私たちは、この紛争に関わるすべての当事者や関係者に、国際人道法と人権法の順守と、民間人および民間施設、特に家や学校、病院などを攻撃しないことを保証するよう要請します。そして、子どもに対する人権侵害の加害者は、その責任を負わなければならないことも訴えます。
セーブ・ザ・チルドレンは、2014年からウクライナ東部で子ども支援活動をしてきました。2022年2月24日以降、支援活動を拡充し、食料や水、現金、安心・安全な空間(こどもひろば)をはじめとする緊急支援活動を、43万6,500人の子どもを含む80万人以上に届けてきました。