(公開日:2023.07.24)
【バングラデシュ】 3年目となる子どもの保護システム強化:子どもと大人が社会をつくる
- バングラデシュ
2021年3月31日より実施しているバングラデシュ・コックスバザール県における子どもの保護システム強化事業は、2023年4月30日に2年間の活動を完了し、5月1日から、最終年となる3年目の活動を開始しました(事業の背景や活動詳細は、事業開始時の記事、2年目の事業開始時の記事をご覧ください)。
※子どもの保護とは、暴力や虐待、搾取から子どもたちを守ったり、それらの被害を受けた子どもたちを支援したりする活動です。
地域住民による、演劇などを通した子どもの保護の啓発キャンペーンの様子
※子どもの保護とは、暴力や虐待、搾取から子どもたちを守ったり、それらの被害を受けた子どもたちを支援したりする活動です。
地域住民による、演劇などを通した子どもの保護の啓発キャンペーンの様子
活動の対象地であるコックスバザール県は、長い海岸を有し、観光業や漁業が発達しています。この地域に暮らす子どもの中には、虐待や児童婚、児童労働などのリスクに晒されている子どもが多くいます。こうした状況に置かれた子どもの安全を脅かす課題は多岐にわたり、課題同士が相互に関連していることが多いほか、一人の子どもが複数の課題やリスクに直面していることもあります。
そのため、特定の課題への対応だけではなく、包括的な支援体制となる子どもの保護システムの構築が必要となります。しかし、バングラデシュでは、子どもの保護に関わる人員数の不足、行政機関間の情報共有や調整不足、地域住民レベルでの子どもを守る体制の不足など、子どもの保護システムが十分に機能していないことで、虐待やネグレクトなどの問題を抱える子どもの特定や支援を迅速かつ適切にできていないことが課題になっていました。
そこで、この事業では、主に3つの柱で活動を実施しています。2年目の活動成果と今後の取り組みを紹介します。
1. 地域住民主体の子どもの保護システムの強化
2年目の活動では、地域で子ども支援に中心的に取り組む組織として38の地域子どもグループ、16の子どもの保護委員会が新たに形成されました。
そして、これらのグループへ子どもの保護に関する研修を行い、研修では子どもに対する暴力や虐待をどのように防止、対応できるかなどについての議論も行いました。
研修後、地域の子どもや養育者、地方行政機関の職員や地域の指導者に対して、虐待や搾取などについて伝える活動を実施しました。
このほか、家庭訪問を通じて特に脆弱な立場にある子ども80 人に、子どもを支援するさまざまな行政や支援団体に報告、適切な対応が行われるように支援を行いました。
地域子どもグループの活動に参加する子どもたちは、次のように話してくれました。
「児童労働をしている友人がいて、本人は学校に通いたいと思っていましたが、本人の意思だけでは学校に戻ることが難しい状況でした。友人と地域子どもグループのメンバーで話し合いを行い、両親を説得する方法を一緒に考えました。地域子どもの保護委員会もサポートしてくれ、教育の重要性と子どもが教育を受けることで得られる世帯に及ぼす将来的なメリットを根気強く訴えることで、学校への通学について両親の説得に成功しました。」
「子どもをたたくことで、子どもに起きるネガティブな変化について私の家族に伝えたところ、家族が私も含め子どもをたたかなくなりました。私自身も自分のきょうだいを叩かなくなり、前よりも家族の話を聞くようにしています。」
「地域子どもグループの形成当初は、『そんな活動をしても意味がない』『時間の無駄』といった冷やかしを受けたり、家族や友だちからも、あまり理解してもらえなかったりしました。しかし、子どもグループが児童婚を防いだり、学校に行けていない子どもを特定して地域子ども保護委員会と対応にあたったり、障害のある子どもを特定して提携団体を通じて支援につなげたり、2年間の活動を通して、さまざまな成果をあげてきました。その結果、今では地域の人々に冷やかされることもなくなり、最近では『自分の家族も支援してほしい』『こんな子どもがいたけど何かできることはないか』と頼ってもらえることが増えてきました。」
3年目も、地域子どもグループ・地域子どもの保護委員会の形成や能力強化を継続し、地域住民が中心となって、子どもの保護に関する課題に対応していけるよう支援していきます(地域子どもの保護委員会の活動については、こちらで詳しく紹介しています)。
2. 行政の子どもの保護システムの強化
子どもを支援するさまざまな行政職員(例えば担当省庁や警察、司法関係の職員など)の能力強化を行いました。
また、行政機関自らが継続して研修を行えるよう、研修パッケージの開発に着手しました。さらに、1年目から行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の作成を進めていましたが、2年目は、国レベルの行政機関や国際機関などとの細かな調整・協議を進めました。
3年目も引き続き行政職員への能力強化を続けていくとともに、行政機関が利用する研修カリキュラム、教材などの資料の完成に向けて取り組みを進めます。さらに、行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の完成と最終確認、運用開始を目指します。
行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の協議の様子
3. 政策提言活動
地方行政機関や報道機関への政策提言や情報提供を実施し、子どもの保護システム強化に関する重要性を周知しました。
2年目は、1つの市と15のユニオンから年間予算を収集し、子どもの保護分野に割り当てている予算を分析し、各地方行政機関の予算配分の状況を確認しました。
そして、子どもの保護分野に、より多くの予算が確保されるよう、地方行政機関への政策提言を実施しました。
政策提言の会合の結果、子どもの保護の重要性が認識され、地方行政機関より予算追加に取り組むことが約束されました。事業が他地域にも展開されるモデルとなるよう、3年目は議員と関係省庁への政策提言を行っていきます。
子どもの保護システムへの予算配分について地方行政機関に提言する様子
活動を通して、子どもたちをはじめ地域の人たちが、自身が暮らす地域の課題に気づき、子どもたちを守るための行動を取り始めています。
1年目と2年目の活動から得た学びや教訓を活かして、3年目の活動も地域の人たちや行政機関と密に協働し、バングラデシュの人たちがバングラデシュに暮らす子どもたちを守ることができるように、支援を続けていきます。
本事業は皆様からのご寄付と、外務省 日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
(海外事業部 松田友美)
そのため、特定の課題への対応だけではなく、包括的な支援体制となる子どもの保護システムの構築が必要となります。しかし、バングラデシュでは、子どもの保護に関わる人員数の不足、行政機関間の情報共有や調整不足、地域住民レベルでの子どもを守る体制の不足など、子どもの保護システムが十分に機能していないことで、虐待やネグレクトなどの問題を抱える子どもの特定や支援を迅速かつ適切にできていないことが課題になっていました。
そこで、この事業では、主に3つの柱で活動を実施しています。2年目の活動成果と今後の取り組みを紹介します。
1. 地域住民主体の子どもの保護システムの強化
2年目の活動では、地域で子ども支援に中心的に取り組む組織として38の地域子どもグループ、16の子どもの保護委員会が新たに形成されました。
そして、これらのグループへ子どもの保護に関する研修を行い、研修では子どもに対する暴力や虐待をどのように防止、対応できるかなどについての議論も行いました。
研修後、地域の子どもや養育者、地方行政機関の職員や地域の指導者に対して、虐待や搾取などについて伝える活動を実施しました。
このほか、家庭訪問を通じて特に脆弱な立場にある子ども80 人に、子どもを支援するさまざまな行政や支援団体に報告、適切な対応が行われるように支援を行いました。
地域子どもグループの活動に参加する子どもたちは、次のように話してくれました。
「児童労働をしている友人がいて、本人は学校に通いたいと思っていましたが、本人の意思だけでは学校に戻ることが難しい状況でした。友人と地域子どもグループのメンバーで話し合いを行い、両親を説得する方法を一緒に考えました。地域子どもの保護委員会もサポートしてくれ、教育の重要性と子どもが教育を受けることで得られる世帯に及ぼす将来的なメリットを根気強く訴えることで、学校への通学について両親の説得に成功しました。」
「子どもをたたくことで、子どもに起きるネガティブな変化について私の家族に伝えたところ、家族が私も含め子どもをたたかなくなりました。私自身も自分のきょうだいを叩かなくなり、前よりも家族の話を聞くようにしています。」
「地域子どもグループの形成当初は、『そんな活動をしても意味がない』『時間の無駄』といった冷やかしを受けたり、家族や友だちからも、あまり理解してもらえなかったりしました。しかし、子どもグループが児童婚を防いだり、学校に行けていない子どもを特定して地域子ども保護委員会と対応にあたったり、障害のある子どもを特定して提携団体を通じて支援につなげたり、2年間の活動を通して、さまざまな成果をあげてきました。その結果、今では地域の人々に冷やかされることもなくなり、最近では『自分の家族も支援してほしい』『こんな子どもがいたけど何かできることはないか』と頼ってもらえることが増えてきました。」
3年目も、地域子どもグループ・地域子どもの保護委員会の形成や能力強化を継続し、地域住民が中心となって、子どもの保護に関する課題に対応していけるよう支援していきます(地域子どもの保護委員会の活動については、こちらで詳しく紹介しています)。
新しく地域子どもの保護委員会を形成した際に実施した打合せの様子
2. 行政の子どもの保護システムの強化
子どもを支援するさまざまな行政職員(例えば担当省庁や警察、司法関係の職員など)の能力強化を行いました。
また、行政機関自らが継続して研修を行えるよう、研修パッケージの開発に着手しました。さらに、1年目から行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の作成を進めていましたが、2年目は、国レベルの行政機関や国際機関などとの細かな調整・協議を進めました。
3年目も引き続き行政職員への能力強化を続けていくとともに、行政機関が利用する研修カリキュラム、教材などの資料の完成に向けて取り組みを進めます。さらに、行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の完成と最終確認、運用開始を目指します。
行政職員が子どもを支援する際の業務手順書の協議の様子
3. 政策提言活動
地方行政機関や報道機関への政策提言や情報提供を実施し、子どもの保護システム強化に関する重要性を周知しました。
2年目は、1つの市と15のユニオンから年間予算を収集し、子どもの保護分野に割り当てている予算を分析し、各地方行政機関の予算配分の状況を確認しました。
そして、子どもの保護分野に、より多くの予算が確保されるよう、地方行政機関への政策提言を実施しました。
政策提言の会合の結果、子どもの保護の重要性が認識され、地方行政機関より予算追加に取り組むことが約束されました。事業が他地域にも展開されるモデルとなるよう、3年目は議員と関係省庁への政策提言を行っていきます。
子どもの保護システムへの予算配分について地方行政機関に提言する様子
活動を通して、子どもたちをはじめ地域の人たちが、自身が暮らす地域の課題に気づき、子どもたちを守るための行動を取り始めています。
1年目と2年目の活動から得た学びや教訓を活かして、3年目の活動も地域の人たちや行政機関と密に協働し、バングラデシュの人たちがバングラデシュに暮らす子どもたちを守ることができるように、支援を続けていきます。
本事業は皆様からのご寄付と、外務省 日本NGO連携無償資金協力の助成を受けて実施しています。
(海外事業部 松田友美)