〜女性のヘルスワーカーの育成と配備に力を入れている国々では、
妊産婦、新生児、子どもの死亡率が劇的に低下しています〜
私は、マムダに何でも相談できるのよ。なぜって彼女は同じ女性だから。
女性だけが女性の気持ちがわかるの。マムダの存在は私の生死に関わるわ。
彼女のおかげで安全に出産できたのよ。
Murjahan 45才 5人の子どもの母親(バングラデシュ)
【毎年・・・】
【ご存知ですか?】
ニジェールの母と子子どもの人生にとって最も危険な時期は、出産中とその直後です。5歳未満で亡くなる乳幼児のうち、生後1ヵ月までの新生児が40%以上を占めます。専門的な介助を得ず家庭で出産する年間約5,000万人の途上国の母親にとっても、出産は非常に危険な時期です。
妊産婦および新生児死亡の相互に関連し合う問題の解決のためには、妊娠中、出産中、そして出産直後から1ヶ月後まで、母親とその赤ちゃんが専門的なケアを受けられるようにしなくてはなりません。世界の多くの国では、様々な理由により、女性のヘルスワーカー(保健従事者)が近くにいてそのケアを受けない限り、妊産婦と乳幼児は自らの命を守ることができない状況にあります。
セーブ・ザ・チルドレンは、母子の命を救い、病気を回避するという観点で、女性のヘルスワーカーの育成と配備への投資がいかに効果を上げたかを検証し、「母の日レポート」(母の日レポートへリンク)としてまとめました。低コスト・低技術で高い効果が期待できる施策が広く普及すれば、何百万人もの命を救うことができると期待しています。
多くの途上国ではヘルスワーカーが大幅に不足しており、生命の危機に瀕した母親とその子どもを助けることができずにいます。世界の57ヵ国で医療従事者が圧倒的に不足しており、10,000人につき医師・看護師・助産師が23人以下しかいません。このうち36ヵ国はサハラ以南アフリカの国です。ヘルスワーカーの不足に加え、その配置には偏たりが見られ、貧しく、僻地で社会から取り残された家族には医療が届かない状況です。
リビエラ 助産婦のAnnieと妊婦のDehdeh
(撮影:Aubery Wade)多くの途上国での経験が、助産婦など女性のヘルスワーカーの育成・配備への投資が死亡率削減のカギを握っていることを証明しています。女性やその子どもにとって、病気により医療の助けが必要だとしても、社会的・文化的な壁により男性の医療従事者を訪ねることが出来ないケースが多くあります。特に農村部では、女性が外部のヘルスケアを受けに行くべきかどうかを夫や長老者が決定することが多く、ヘルスワーカーが男性の場合、診療を許さないケースもあります。
また、特に女性特有の妊娠・出産、性に関わることや母乳育児については、女性は一般的に女性のヘルスワーカーに診てもらうことを希望します。女性が他の女性からケアを受けることにより大きな安心や満足感を感じれば、治療可能な症状が深刻な状態に悪化する前に、専門的サービスを利用する確率は高くなります。
バングラデシュ ワクチン注射の準備をする看護婦
(撮影:Peter Caton)医師の育成や病院の運営には多くの資金が必要です。しかし途上国では、適切な研修とサポートを受けた地域のヘルスワーカーの存在により、人々の命を救う保健サービスを効率的に提供できるケースが多くあります。
公教育を数年受けた女性なら、一般的な乳幼児の病気の診察と治療を行い、ワクチン接種を普及し、栄養改善や母体安全、基本的な新生児ケアを促進する技術を身につけることが可能です。ヘルスワーカーは、地域に根差して活動し、最も必要としている母親や子どもにすぐにリーチできる状況であることが最も効果的です。
バングラデシュにおける最近の調査では、限られた公教育と6週間の実地訓練しか受けていない女性のコミュニティ・ヘルスワーカーでも、新生児死亡率の34%削減に貢献できたことが報告されています。
女性間の関係が築く力を活かして母親と子どもの健康状態を改善する方法が、世界の農村部におけるいくつもの研究成果の中で示されています。エチオピア、マラウィ、マリ、セネガルの農村部では、おばあさんがより適切な新生児ケアの方法を学んでいます。また、ネパール、インド、ボリビアの農村部では、妊娠、出産、新生児ケアに関する共通の問題を解決するために女性たちが組織化されました。これらの努力により、産前ケア、介助を伴う出産、完全母乳育児の増加や45%にも及ぶ乳幼児死亡率の削減などの成果がもたらされました。
バングラデシュでは、何万人もの女性のヘルスワーカーが家族計画、母体安全、基本的な新生児ケアを推進したことにより、1990年以来5歳未満児死亡率が64%低下しています。
インドネシアでは、同じ時期に「全ての村に助産婦を」と銘打ったプログラムの成果もあり、妊産婦死亡率が42%削減されました。ネパールでも5万人の女性のコミュニティ・ヘルスワーカーの育成を 行い、農村部に配備した結果、妊産婦および子どもの死亡率が同様に低下しています。
パキスタンでは女性ヘルスワーカーたちが1,100万人の女性に対し出産時に破傷風に感染するのを防ぐための予防接種を実施した結果、新生児の破傷風による死が半減しました。
エチオピアでは比較的最近の国家計画で農村部への女性のヘルスワーカーの配備を開始したところ、既に予防接種率の増加、マラリア罹患率の低下、現代的避妊法利用の向上などの成果が見られます。
<セーブ・ザ・チルドレンの提言>
セーブ・ザ・チルドレンはこれらを踏まえ、子どもの死亡率削減に向けた活動「EVERY ONE」キャンペーンを展開していきます。
※2000年9月の国連ミレニアム・サミットにおいて、2015年までに国際社会が達成すべき8つの具体的目標として、国連ミレニアム開発目標(MDG)が合意されました。その4番目の目標(ミレニアム開発目標4)は5歳未満児の死亡率を1990年の3分の1に削減することを、5番目の目標(ミレニアム開発目標5)は妊産婦死亡率を1990年の4分の1に削減することを掲げています。