世界では、年間約810万人の5歳未満の子どもたち、また約36万人の妊産婦が適切な医療を受けられずに亡くなっています。
1歳半の女の子の診察をするコミュニティ・ヘルスワーカー(グアテマラ)
その主な理由には、貧困や病院が遠いといった問題に加え、保健人材の不足が挙げられます。医者や助産師や、地域で働くヘルスワーカーが近くにいなければ、病気を診断・治療し、出産を介助し、子どもたちにワクチン接種やビタミンAの投与を行うことはできません。子どもたちが必要とする治療やケアを受けられずに命を落としているのは、技術やノウハウの問題ではなく、医療を担う人が周りにいないからなのです。
2015年までに国連ミレニアム開発目標4および5(※)を達成するためには、少なく見積もってもあと350万人のヘルスワーカーの育成が必要とされています。単に数さえ増やせば良いということでなく、ヘルスワーカーが質の高い研修を受けることによりその技術を向上させ、医療が届いていない地域に優先して配備され、適切な報酬や機材の提供を受けることにより、地域の医療を継続的に担えるようにすることが重要です。
世界保健機関(WHO)によると、現在世界57ヵ国において1,000 人に対し看護師・医者・助産師の数が2.3人以下と危機的に不足している状況で、このうち36ヵ国がサハラ以南アフリカの国々となります。
例えばシエラレオネでは、7人に1人の女性が出産時に亡くなっていますが、首都フリータウンの200万人の人口に対し、産婦人科医はたった6人しかいません。シエラレオネでは、2010年に妊産婦と乳幼児を対象に医療費が無償化されたことに伴い、病院における出産数が倍増しましたが、ヘルスワーカーの不足に対処するためには長期的な安定した援助が必要とされています。
ヘルスワーカー育成の重要性は、2006年に世界保健機関(WHO)の「世界保健報告」で焦点があてられて以来、2008年の第1回保健人材グローバルフォーラムやそれに続く2008年・2009年のG8サミット、2010年の国連サミットの「女性と子どもの健康の実現に向けたグローバル戦略」など、多くの国際会議の場で取り上げられ、世界の国々が果たすべきコミットメントが示されてきました。
しかし、ミレニアム開発目標達成のためには、より多くのヘルスワーカー育成への対応を先進国・開発途上国ともに加速しなければなりません。2011年1月末にバンコクで開催された第2回保健人材グローバルフォーラムにはセーブ・ザ・チルドレンからも参加し、「世界の国々は保健人材不足の問題に、迅速に対応を」と訴えました。
セーブ・ザ・チルドレンは、特に地域の医療を担うコミュニティ・ヘルスワーカーが果たすことのできる役割とその効果の高さに注目してきました。コミュニティ・ヘルスワーカーは、高度な教育や技術訓練を受けなくても、数週間の基礎的な研修を受けることにより、出産時の介助を行ったり、新生児のケアや栄養について地域のお母さんたちに助言したり、ワクチン接種を行ったり、一般的な子どもの病気を診断・治療したり、また重篤な症状を見分け、医療機関への照会を行うことができます。
出産から5日目の母子を訪問し、体温を測るコミュニティ・ヘルスワーカー(マラウィ)
全ての子どもたちの近くに確実にヘルスワーカーを配備できるよう、世界の国々は今すぐ行動を起こさなくてはなりません。
次回の【PICK UP!】では、地域の医療を担うコミュニティ・ヘルスワーカーの声をお届けする予定です。
※2000年9月の国連ミレニアム・サミットにおいて、2015年までに国際社会が達成すべき8つの具体的目標として、国連ミレニアム開発目標(MDGs)が合意されました。その4番目の目標は5歳未満児の死亡率を1990年の3分の1に削減することを、5番目の目標は妊産婦死亡率を1990年の4分の1に削減することを掲げています。