おやこのカタチ

さまざまな国の
親子のつきあい方を学ぶ

スミヤさん

出身国:
モンゴル
家族構成:
10歳と12歳の息子、妻
モンゴルの首都ウランバートルに在住。44歳。2019年4月、セーブ・ザ・チルドレンのモンゴル事務所が実施するポジティブ・ディシプリン*の研修に参加。約2ヶ月間、毎週2時間のセッションに参加し、子どもとのあたたかいコミュニケーションの取り方、子どもの発達に応じた対応、問題解決の方法や自分の不安や感情をコントロールする方法などを学ぶ。そして、それらを日々の子育てで実践中。

*ポジティブ・ディシプリンは、養育者が子どものこころや体を傷つける罰を用いた子育てから少しずつ距離を置き、子どもの健やかな発達と学びを促すような子育てに移行していくことを目的として親・養育者を支援するプログラム。

ある1日の過ごし方

6:00
子どもたちとともに起床
6:30
朝食
7:00
子どもたちと一緒に運動、週3回は4km~5kmのジョギング
8:00
運動終了
9:00
掃除タイム、長男は家の中を掃き掃除、次男は皿洗いを担当
11:00
子どもたちは自宅からオンライン授業に参加

※新型コロナウィルス感染症拡大の影響により、モンゴルでは学校が休校となり、
教育省が学齢に合わせたオンライン通信教育を開始した

12:00
昼食
13:00
昼寝タイム
15:00
子どもたちは日課となっている勉強を進め、それを手伝う
16:00
夕食の時間
18:00
自由時間
21:00
就寝

子どもとの向き合い方は?

あなたの子ども
の性格を教えてください。

牛の骨を使った的当てゲーム*をする子どもたち

子どもたちは、それぞれに異なる個性や特徴を持っています。10歳の次男は粘り強く、正直で物おじせずに何でも聞いてきます。一方、長男はとても穏やかですが、自分から話すことに躊躇(ちゅうちょ)してしまうことが多く、ちょっとシャイなところがあります。

以前は、自分から話すことや人に聞くことをためらう長男をよく叱っていました。彼の性格をよく分かっていなかったのです。今は、彼の性格を理解しているので、無理に話したり質問したりしないようにしています。研修を受けたことで、子どもたちをよく理解できるようになり、毎日、友だちのように話をすることができています。

子どもとの向き合い方を
工夫することで、
子どもが変わったと感じることは
ありますか。

以前は「勉強しなさい」、「宿題をしなさい」とばかり言っていて、子どもたちに対して攻撃的なところがありました。でも、ポジティブ・ディシプリンの研修を受けたおかげで、自分の不安な気持ちを落ち着かせると、どんな問題も子どもとの話し合いで解決できると分かったのです。

今では、子どもたちと、学校で起こったことなどをよく話しています。そうすることで、子どもたちは心を開き、私を信頼してくれるようになりました。何か困ったことがあれば、相談に来てくれる。子どもたちに、人とのコミュニケーションの取り方をアドバイスすることもあります。

子どもとのコミュニケーションや
「親子のつきあい方」で
大切にしたいことはなんですか。

子どもとのコミュニケーションでは、日常的に子どもとよく会話し、子どもが間違ったことをする前に子どもを手助けし、子どもが誰と何をしているのかを知っておくことが大事です。問題は、子どもが間違ったことをしてから、親が叱ったり、たたいたりして、コントロールしてしまうことで、子どもとのコミュニケーションがうまくいかなくなってしまうことです。

子どもの過ちはどんどん積み重なって、それを修正するのが難しくなり、手遅れになってしまうこともあります。特に10代の子どもたちは、コミュニケーションをとって親との距離を縮めるよりも、親から距離を置く傾向があるため、特に意識して会話するなどが必要ですね。

子どもは間違ってしまうことがあります。むしろ間違いのない人はいませんよね。子どもが間違ってしまったとき、子ども自身が間違いを認識し、修正できる方向にサポートすることが大切です。子どもは、自分が何をしているのか、なぜそれがいけないのかを理解できないことがあります。なので、子どもを罰するというのは間違いなのです。

むしろ、私たち親は、子どもが自分の間違いとその結果を理解できるようにする必要があります。私はまた、罰するのとは逆に、子どもの過ちを擁護(ようご)してしまう親の例をたくさん知っています。罰することも子どもの過ちを擁護してしまうことも、どちらも間違った子育てなのです。

子どもがどんな環境で育つかはとても重要です。子どもは常に親の真似をし、親から学びます。ですから、子どもにとって温かい家庭環境を作ることが必要です。親同士のコミュニケーションや親と他の人とのコミュニケーションは、子どもが他の人とどのようにコミュニケーションを取るかのモデルとなります。

子どもとのコミュニケーションで一番大事だと思うのは、親子がお互いに理解し合うことだと思っています。相手を傷つけず、お互いにサポートし合い、オープンになんでも話せる関係でいたいと思っています。

子どもたちとの
コミュニケーションが、
どうしてもうまくいかないときは
どうしますか。

コミュニケーションが難しいと感じたら、一休みしたり、一旦立ち止まったりするようにしています。なるべく忍耐強く、寛容でいられるように努めます。自分を落ち着かせてから、子どもにその行動がどんな結果をもたらすのか説明し、どうすればそれを変えることができるか伝えます。自分が怒っているときに子どもに伝えようとすると、たいてい上手くいきません。親が、怒りにまかせてしまうと、子どもをたたいて、子どもを傷つけることもあります。他の親にも、リラックスした状態で子どもに話したり説明したりするようにアドバイスしています。

他の親を見ていると、子どもとの会話が少ないと感じることがあります。また、子どもを怒鳴ったり、叱ったりする様子もよく見ます。私は言葉を使うのが苦手なのですが、友人や親戚に子育てのアドバイスをしています。多くの親がこうしたポジティブな子育ての方法を学べば、良い変化があると思います。

子育ての状況は?

子育ての中で、
こんなサポートがとても助かった、
などありますか。

ポジティブ・ディシプリンの研修に参加したことが、一番のサポートになりました。研修で学んだことを他の親に伝えることで、少しでも他の親をサポートしたいと思っています。息子たちの学校に行くと、ポジティブな子育てができていない親が多いことがよく分かります。私は親側の間違いについて伝えたいと思っていますが、親たちはそれほど心を開いてくれません。「我が家の子どものしつけはあなたには関係ない」といった考えがあるようです。一方で心を開いて、私のアドバイスを前向きに受け入れてくれる親もいます。そういう方へは学校の保護者会に出席したときにアドバイスすることがあります。

モンゴルでの子育ての
状況について教えてください。

モンゴルが子どもへの体罰を全面的に禁止してから5年が経ちました。今の子どもたちは、大人に比べて自分が持っている権利についてよく理解するようになっています。子どものためのホットライン108がつくられて、何かあったらそこに電話することで、子ども自身が自分の権利を守ることができるようになったのは良いことだと思います。

親の意識も変化していて、体罰が使われることも少しずつ減ってきています。以前に比べると、今の親はポジティブなしつけに関する情報を多く持っています。インターネット上にもたくさんの情報がありますし、どこにいても情報にアクセスすることができます。ただ、親が子どもの過ちを隠したり擁護したり、あるいは子どもをたたいたり叱ったり、子どもに十分なケアや注意を払わなかったりする傾向は今でも続いていると感じます。

ご自身にとっての子どもとは?

ご自身にとって、
「子ども」とはどんな存在で、
どんな子ども時代を
送ってほしいですか。

子どもたちは私のルーツや人生を引き継いでいってくれる大切な存在です。子どもたちは、自分の目標のために、粘り強く、自律的に、一生懸命働くようになると思います。2人には、私よりも立派な人間になってほしいです。彼らが大人になったとき、今身に付けている態度や習慣は間違いなく彼らの資本となると思うのです。親は自分の子どもがやっていることを決して禁じてはいけない。子どもが間違ったことをしてしまったときだけ、それを直すためのアドバイスをしたほうがいいでしょう。

私たち夫婦は、子どもたちに、人の役に立つこと、親に感謝すること、正直で誠実なこと、人とうまく付き合うことができるような人格者に育ってほしいと思っています。

*スタッフが家族を訪ねたとき、子どもたちは、古代遊牧民時代から続くモンゴルの伝統的な遊びのひとつである牛の足首の骨の的当てゲームをしていました。このゲームには、「4匹の動物」、「馬やラクダのレース」、「的当て」などいくつかの種類があります。牛の足首の骨を使った射的は、モンゴルの伝統的なスポーツのひとつとされています。

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