セーブ・ザ・チルドレンとは

子どもの権利条約

3.その他の法的文書

「子どもの権利条約」は子どもに法的保護を提供する唯一の人権条約ではありません。セーブ・ザ・チルドレンは、例えば「市民的及び政治的権利に関する国際規約」、「経済的、社会的、および文化的権利に関する国際規約」、あるいは「子どもの権利および福利に関するアフリカ憲章」のように、特定の保護を提供する人権法・人道法の分野におけるその他の国際的・地域的または国内の条約や規約を活用することを支持します。
これらは子どもの権利の擁護と促進のために政府・NGOの両者ともに活用することができます。


4.「子どもの権利条約」の実践:権利に基づく開発アプローチ

これまで、子どもの福祉を改善するための介入や活動は特定のニーズに基づいて行われてきました。しかし、セーブ・ザ・チルドレンは子どものための開発援助や活動を行う際に「権利に基づくアプローチ」を採用しています。それはこのアプローチが特別の利点を備えているためです。

<権利は義務でもある>
「子どもの権利条約」は、子どもの権利が守られるように、子どもたちの利益のために努力しなければならないという義務を政府に課しています。権利に基づくアプローチはこの任務と義務を反映しており、全ての子どものニーズと権利が満たされるよう大人に対してその責任を追求するものです。

このアプローチは大人たちーー親、親族、コミュニティー、政府、国際社会ーーに家族の大切さを認識させ、個々の子どもを保護し、子どもたちが抑圧されずに社会の中で最大限の可能性を引き出しながら育つことができるようにすることを要求します。権利に基づくアプローチを採ることにより、以前は善意・慈善・善行(子どもたちのニーズを満たす)であったことが、義務や任務、責任に転換します。

「子どもの権利条約」には子どもの権利の実現を監視し促進するための国際的に承認されたシステムが備わっています。「子どもの権利条約」は変化というものが一夜にして訪れることはないことを理解しています。この条約の施行を監視する目的は、国家が子どもに対する義務を果たすためにその国の資源・政治的状況・歴史・文化のなかで最大限の努力をすることを確実にすることです。

<依存からエンパワーメントへの変化>
「ニーズに基づいたアプローチ」では、子どもたちは彼らのニーズを支援するためのプログラムや活動の対象者です。一方、「権利に基づくアプローチ」では教育・保健医療・家族・家庭・安全な環境といった子どもたちのニーズを反映しながらも、子どもたちが生きる社会の中でより活発な役割を果たす能力と素質に格段の重点を置きます。
「権利に基づくアプローチ」においては子どもたちは権利の主体・保持者であり、周囲の大人に対して権利を要求することも出来ると考えられます。それは子どもにとって何が可能であるかという展望をより豊かにするものです。

<権利は責任を促進することができる>
責任を持って行動するということは他者を尊重することであり、健全な社会を作る礎となります。子どもの権利の実現が保証されるよう活動すること、また子どもが社会の中で最大限に活発な役割を果たすことができるようにすることで、社会に利益がもたらされます。

それは子どもがより幅広く責任ある役割を果たし、肯定的な自己イメージを持つように励ますこと、例えば、子どもの意見を聞き真剣に受け止めるような社会を発展させること、子どもたちをとりまくコミュニティーや社会が彼らを配慮し彼らの権利を守っているのだと示すこと、などで可能となるのです。

このため、「子どもの権利条約」の重要な条項の一つでは、子どもの教育が、「すべての諸人民間、民族的、国民的および宗教的集団ならびに先住民間の理解、平和、寛容、性の平等および友好の精神の下で」(第29条)自由な社会において責任ある生活を送れるようにするための準備でもあるべきだと強調しています。

<子どもの権利の相互依存性>
ニーズというものはしばしば何らかの階層に順位付けられます。しかし、権利はこのように順位を付けることはできません。権利は分割することができず、すべてが同等に重要なのです。その絶対的な相互依存性と相補性(例えば、保健、適切な生活水準、および教育)は、それらが子どもの最大限かつ調和的な発達においてすべて等しく必要であることを意味します。

権利の相互依存性を認識することによって、単に身体的に満足のできる状態にあるというだけでなく、むしろ子どもの完全な情緒的・知的・社会的・文化的発達を含む全体性が強調されます。この相互依存性への理解がセーブ・ザ・チルドレンが活動計画を作る際のアプローチを支えています。子どもたちの全般にわたる状況を詳細に評価し、彼らの権利を実現するために最適な戦略的介入がなされます。このような手法によって、セーブ・ザ・チルドレンの活動のインパクトは長期的に見てより効果的かつ持続的となりうるのです。

例えば、子どもの健康を改善するために母親たちと活動するには、ジェンダーに基づく差別・基礎教育・水と衛生といった様々な問題に注意を払う必要があります。路上で生活している子どもに関する活動をするためには、教育システムの欠点、家族の貧困、肉体的および性的虐待などの問題に配慮しなければなりません。同様に、児童労働は貧困と、雇用を促進し家庭収入を増加することのできる教育の機会不足に起因する社会問題として理解する必要があります。

このような領域にこそ問題の解決策があるのです。セーブ・ザ・チルドレンが児童労働が大きな問題となっている地域、パキスタンやバングラデシュなどで教育支援と収入創出プログラムに焦点を当てているのはそのためです。子どもの権利の実現に影響を及ぼす様々な要素の相互関連性を認識することで、より効果的な支援を行っていくことができるのです。

チャイルド・ライツ・プログラミング―権利に基づくアプローチをプログラミングにどういかすか―(A4・52ページ・1.5MB)

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