トップページ > スタッフブログ > カンボジア > 【カンボジア】学校での暴力に立ち向かった子どもたち〜キムさんの声〜

カンボジア
(公開日:2024.04.26)

【カンボジア】学校での暴力に立ち向かった子どもたち〜キムさんの声〜

 
4月30日は「子どもの体罰を終わらせる国際デー」(International Day to End All Corporal Punishment of Children)です。世界中で、毎年13億人以上の子どもたちが体罰を受けています。セーブ・ザ・チルドレンは2030年までに、あらゆる場面で子どもへの体罰を撲滅するための事業を実施しています。


自転車で学校に通うキムさん

安全な場所であるべき学校での子どもに対する暴力が深刻なカンボジア。そのような状況を改善し、子どもたちが安心・安全に学校で学ぶことができるよう、セーブ・ザ・チルドレンは子どもたち、学校・地域の大人たちと協力して、暴力の根絶に取り組んでいます。(過去の記事:事業開始2年目の記事はこちら、事業開始1年目の記事はこちらからご覧ください。)

今回は、教師による身体的・精神的虐待を過去に経験し、自らや友だちを守るために行動を起こした子どもたちが共有してくれた話をご紹介します。

10歳のキムさんはコンポンチャム州の農村で生まれました。生まれて間もなく両親は離婚し、現在は祖母と2人で暮らしています。好奇心が旺盛で、学ぶことや人と交流することが大好きです。

キムさんは、小学4年生になったばかりの2022年、担任教師から暴力を受けました。
「私の先生は授業中、よく私たちをたたいていました。休み時間にクラスメイトと遊んでいたときのことです。先生は私たちを怒鳴りつけ、私に対して無礼な子どもだと言いました。私は先生に首をきつくつねられ、はっきりとした傷跡が残りました。先生は私の友人たちの顔も平手打ちしました。私たちは先生の前で泣かないよう我慢しました。」

しかし、当時はこの先生の行為が暴力的行為であるとは思っていませんでした。
「先生が怒鳴ったり、誰かをたたいたりすると、クラスの全員が黙っていました。学校に来るたびに恐怖を感じていました。先生に向かって、なぜいきなりたたいたのかと聞いたことがあります。先生はただのボディタッチで、からかおうとしただけだと言っていました。」

その日、キムさんは自転車で家に帰りながら泣き、祖母にクラスで起こったことを話しました。キムさんの祖母はその後、孫娘と他の生徒の安全な学習空間を確保するため、校長先生と話をしました。

校長によれば、当時の担任教師は、クラスの子どもたちに暴力をふるったことを否定し、証拠もなかったということでした。校長先生は、子どもたちに校長先生へ直接報告するよう呼びかけました。

キムさんの同級生であるソイさんは、教師による暴力的行為について、成績を落とされることを恐れてあえて話さなかったといいます。
「このことを校長先生に報告するのが怖かったんです。私たちの名前が公開されて、先生がそれを知れば、成績を落とされると思いました。」

2023年3月に、セーブ・ザ・チルドレンが実施する事業の一環で、キムさんが通う学校の学校運営委員会と生徒会に対して、子どもの権利、子どもに対する暴力の形態、暴力の予防や暴力を受けた場合の通報方法などをテーマとした研修が実施され、複数ある通報制度の1つとして、2023年4月には意見箱が設置されました。

キムさんは、生徒会のメンバーとして研修に参加し、彼女が抱えている悩みと研修で学んだことが関係していることに気づきました。そして、意見箱へ投書する方法があることを知りました。
「私は自分が悩んでいることを書き、校長先生に教師を変えてくれるようお願いしました。意見は匿名で意見箱に入れました。それでも心配でしたが、問題に対処するための方法だと思い、試すことにしました。」


意見箱へ投書する様子を再現するキムさん

校長は、6月に意見箱を開けたときには27件の苦情があり、それを証拠にキムさんの担任教師を学校の事務室に異動させたといいます。
「これらの苦情には、生徒に対する暴力や教師と生徒の口論の内容が含まれていました。ほとんどの生徒が、その教師を自分のクラスから外すよう求めていました。」


事業スタッフに当時の様子を話す校長先生(左)

キムさんは、セーブ・ザ・チルドレンの事業を通じて設置された通報制度と意見箱が、生徒を守り、安全な学校環境を確保する上で役立っていると考えています。

また、学習などの悩みを抱えている生徒が声を上げ、支援を求めることも重要だといいます。この事業では、キムさんのような生徒会メンバーが他の生徒たちと研修からの学びを共有することも支援してきました。
「私たちの苦情を受けて学校が動いてくれ、新しい先生を連れてきてくれたことをうれしく思っています。新しい先生と一緒に学ぶのは楽しいです。子どもに対する暴力の種類と、暴力に対してどう対応すべきかを理解できるようになりました。私は暴力と闘い、同じような経験をするかもしれない他の生徒たちと(学んだことを)共有したいと思います」と、キムさんは言います。

本事業は皆様からのご寄付と、日本NGO連携無償資金協力からの支援で実施しています。

(海外事業部 カンボジア駐在員 宮脇麻奈)

 

あなたのご支援が子どもたちの未来を支えます

もっと見る

月々1500円から、自分に合った金額で子どもの支援ができます。
定期的に年次報告書や会報誌をお送りしています。

1回から無理なくご支援いただけます。

PAGE TOP