アメリカ合衆国(公開日:2020.05.25)
新型コロナウイルス感染症 ロックダウンで子どもたちは長期的な精神的苦痛の危険に
セーブ・ザ・チルドレンが、アメリカとドイツ、フィンランド、スペイン、イギリスで約6,000人の子どもたちとその親を対象に調査を実施しました。その結果、新型コロナウイルス感染症対策にともなうロックダウン(都市封鎖)や社会的制限、休校措置などにより子どもたちの4人に1人は不安な気持ちを抱えており、その多くは、うつ病を含む長期的な精神的苦痛の危険に晒されていることや、65%にのぼる子どもたちが退屈や孤独感を抱えていることが明らかになりました。
現在、ロックダウン措置を緩和している国もあるものの、多くの学校は休校措置を継続しており、その結果、世界で1億3,000万人の子どもたちがその影響を受けています[1]。そして、厳しい規制は全世界で今後も続く見通しで、十分な住環境がない子どもたちや社会的支援が利用できない子どもたち、貧困下の子どもたちなど、とりわけ脆弱な立場に置かれている多くの子どもたちや若者たちが、高い危険に晒されています。
調査結果によれば、無力感や孤独感、社会的排除やスティグマ、大切な人と離ればなれになることへの恐怖は、これまでにも感染症の流行時に多くみられましたが[2]、その一方、ストレスや退屈、社会的孤立の長期化、外で遊ぶことができないこと[3]が、不安やうつ症状などが多くの子どもたちのメンタルヘルスに影響を及ぼしています[4]。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・社会心理的支援チーム 子どもの保護シニアアドバイザーである アンソフィー・ディブダルは次のように述べます。
「定期的に外で過ごす人々は、脳内でネガティブな感情を繰り返す領域をあまり使うことがありません。つまり、子どもたちが今ずっと屋内環境で過ごしていることが、ネガティブな感情やうつ症状を引き起こす要因の一つと考えられます。」
セーブ・ザ・チルドレンがアメリカやヨーロッパ諸国 で最近実施した調査において、子どもたちは、不安や退屈、そして恐怖を感じると回答しており、友だちと外で遊べないことや教育に遅れが生じることへの恐怖は、彼らの喪失感や不安感を高めています。
そのほかにも、調査からは、次のようなことが明らかになっています。
スペインでは、2,000人近くの低所得世帯にインタビューを行い、うち4人の1人以上が通常よりも高いレベルのストレスを感じており、多くの家庭の子どもたちが家族の状況について恐怖や苦悩、悩みを抱えていることが明らかになりました。
また、私たちが、ニカラグアで60人、インドネシアで68人の子どもたちから聞いた話しでも、共通する結果を得ました。ニカラグアの子どもたちは、学校に行けないことや家族の誰かの体調が悪くなることへの恐怖やフラストレーションを抱いていました。インドネシアでは、66%の子どもたちが現在の感染症の世界的な大流行の状況、とくに新型コロナウイルス感染症にかかることを心配していました。
「私は恐れています。世界的に流行していて、感染した人もいます...私の母は仕事に行っているので、怖いです」とニカラグアのカーラさん(11歳)は話します。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・社会心理的支援 チーム長のマリー・ダールは次のように話します。
「子どもたちが元気に過ごしているからといって、パンデミックが彼らの心や健康に影響を与えていないということではありません。安定した環境下にいる子どもたちはうまくやり過ごしているかもしれませんが、多くの子どもたちがそのように幸運なわけではありません。
貧困や家庭内暴力、またそのほかの要因により脆弱な立場に置かれた子どもたちは、長引くロックダウンにより本当に危機的な状況へ追いこまれてしまいます―この事態が改善されない最悪の場合、子どもたちのうつ病やメンタルヘルス問題をさらに悪化させかねません。新型コロナウイルス感染症のメンタルヘルスにおける影響は、 感染症の流行よりもさらに長きにわたる可能性があります。
子どもたちは、大人もこれまでの人生で経験したことがないような規模の大きな混乱に、苦しんでいます。彼らの生活に突然多くの変化が起こっており、この危機がもたらす長期的な影響については分からないことが非常に多いため、私たちは若い世代の心に与える影響を最小限にするために注意を払い、実行可能なすべての策を講ずる必要があるのです。
学校を再開した国もありますが、多くの子どもたちは、いまだに教育の機会を失っている状態です。すべての国が、ロックダウン期間のみならず、学校が再開し社会生活に復帰した後も、子どもたちの精神的苦痛や、落ち込んでいる兆候に気づき、対策を取ることが重要です。」
セーブ・ザ・チルドレンは、すべての政府に対して、感染症拡大対策の一環として、子どものメンタルヘルス、健やかな成長(well-being)そして学習への投資を優先させるよう呼びかけています。これには、病気や隔離、死別により親と離ればなれになってしまった子どもたちのニーズに応えるのみならず、環境が十分に整っていない世界の最貧国や政情不安が深刻な国、また紛争による影響を受けているコミュニティに住む子どもたちへの支援も含まれています。
さらに、セーブ・ザ・チルドレンは次のことを呼びかけています:
[1]UNESCO, COVID-19 Educational Disruption and Response https://en.unesco.org/covid19/educationresponse
[2]IASC, Interim Briefing Note, https://interagencystandingcommittee.org/system/files/2020-03/IASC%20Interim%20Briefing%20Note%20on%20COVID-19%20Outbreak%20Readiness%20and%20Response%20Operations%20-%20MHPSS_0.pdf
現在、ロックダウン措置を緩和している国もあるものの、多くの学校は休校措置を継続しており、その結果、世界で1億3,000万人の子どもたちがその影響を受けています[1]。そして、厳しい規制は全世界で今後も続く見通しで、十分な住環境がない子どもたちや社会的支援が利用できない子どもたち、貧困下の子どもたちなど、とりわけ脆弱な立場に置かれている多くの子どもたちや若者たちが、高い危険に晒されています。
調査結果によれば、無力感や孤独感、社会的排除やスティグマ、大切な人と離ればなれになることへの恐怖は、これまでにも感染症の流行時に多くみられましたが[2]、その一方、ストレスや退屈、社会的孤立の長期化、外で遊ぶことができないこと[3]が、不安やうつ症状などが多くの子どもたちのメンタルヘルスに影響を及ぼしています[4]。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・社会心理的支援チーム 子どもの保護シニアアドバイザーである アンソフィー・ディブダルは次のように述べます。
「定期的に外で過ごす人々は、脳内でネガティブな感情を繰り返す領域をあまり使うことがありません。つまり、子どもたちが今ずっと屋内環境で過ごしていることが、ネガティブな感情やうつ症状を引き起こす要因の一つと考えられます。」
セーブ・ザ・チルドレンがアメリカやヨーロッパ諸国 で最近実施した調査において、子どもたちは、不安や退屈、そして恐怖を感じると回答しており、友だちと外で遊べないことや教育に遅れが生じることへの恐怖は、彼らの喪失感や不安感を高めています。
そのほかにも、調査からは、次のようなことが明らかになっています。
- ・ アメリカで回答した約半数(49%)の子どもたちは心配だと回答し、3人
に1人以上(34%)の子どもたちは恐怖を、そして4人の人(27%)の子
どもたちは不安な気持ちを訴えました。 - ・ フィンランドで調査対象となった子どもたちの70%は不安感を、55%以上
の子どもたちが倦怠感を訴えました。 - ・ イギリスでは、インタビューを実施した20%の子どもたちが休校措置によ
る将来への不安を訴え、およそ60%の子どもたちが、身の回りの人が病気
にかかるのではないかと不安を募らせていました。 - ・ ドイツでは、3人の1人(33%)の子どもたちが、留年するのではないかと
不安視していました。
スペインでは、2,000人近くの低所得世帯にインタビューを行い、うち4人の1人以上が通常よりも高いレベルのストレスを感じており、多くの家庭の子どもたちが家族の状況について恐怖や苦悩、悩みを抱えていることが明らかになりました。
また、私たちが、ニカラグアで60人、インドネシアで68人の子どもたちから聞いた話しでも、共通する結果を得ました。ニカラグアの子どもたちは、学校に行けないことや家族の誰かの体調が悪くなることへの恐怖やフラストレーションを抱いていました。インドネシアでは、66%の子どもたちが現在の感染症の世界的な大流行の状況、とくに新型コロナウイルス感染症にかかることを心配していました。
「私は恐れています。世界的に流行していて、感染した人もいます...私の母は仕事に行っているので、怖いです」とニカラグアのカーラさん(11歳)は話します。
セーブ・ザ・チルドレンのメンタルヘルス・社会心理的支援 チーム長のマリー・ダールは次のように話します。
「子どもたちが元気に過ごしているからといって、パンデミックが彼らの心や健康に影響を与えていないということではありません。安定した環境下にいる子どもたちはうまくやり過ごしているかもしれませんが、多くの子どもたちがそのように幸運なわけではありません。
貧困や家庭内暴力、またそのほかの要因により脆弱な立場に置かれた子どもたちは、長引くロックダウンにより本当に危機的な状況へ追いこまれてしまいます―この事態が改善されない最悪の場合、子どもたちのうつ病やメンタルヘルス問題をさらに悪化させかねません。新型コロナウイルス感染症のメンタルヘルスにおける影響は、 感染症の流行よりもさらに長きにわたる可能性があります。
子どもたちは、大人もこれまでの人生で経験したことがないような規模の大きな混乱に、苦しんでいます。彼らの生活に突然多くの変化が起こっており、この危機がもたらす長期的な影響については分からないことが非常に多いため、私たちは若い世代の心に与える影響を最小限にするために注意を払い、実行可能なすべての策を講ずる必要があるのです。
学校を再開した国もありますが、多くの子どもたちは、いまだに教育の機会を失っている状態です。すべての国が、ロックダウン期間のみならず、学校が再開し社会生活に復帰した後も、子どもたちの精神的苦痛や、落ち込んでいる兆候に気づき、対策を取ることが重要です。」
セーブ・ザ・チルドレンは、すべての政府に対して、感染症拡大対策の一環として、子どものメンタルヘルス、健やかな成長(well-being)そして学習への投資を優先させるよう呼びかけています。これには、病気や隔離、死別により親と離ればなれになってしまった子どもたちのニーズに応えるのみならず、環境が十分に整っていない世界の最貧国や政情不安が深刻な国、また紛争による影響を受けているコミュニティに住む子どもたちへの支援も含まれています。
さらに、セーブ・ザ・チルドレンは次のことを呼びかけています:
- ・ すべての子どもたちがロックダウン中とその後に支援を利用できるように
すること。そのために、社会福祉などを必要不可欠なサービスと認識し、
十分な資源や能力を確保し、その業務を優先化すること。 - ・ ロックダウンの期間中、学校や社会サービス、行政は、学校が再開しさら
なる支援が提供されるまでの間、子どもの状況を確認・記録し、遠隔で事
例管理を継続して行うこと。これには、すべての子どもたちが、健康や衛
生、安全のためのメッセージも含まれた遠隔学習教材にアクセスできるよ
うにすることも含まれます。 - ・ 親や教師は、子どもたちが日常を維持し、遊びや学校・自宅での学習を続
けられるよう必要な支援を受けられること。 - ・ 行動の突然の変化、異常な持続的な悲しみ、過度の心配、集中力の欠如、
睡眠障害、または疲労など、兆候を早期に発見するためのメカニズム。う
つ病など、迫り来るメンタルヘルスの問題を指摘する可能性があります。 - ・ 子どもたちの行動の突然の変化や、いつもとは異なる長引く悲しみ、強い
不安、集中力の欠如、睡眠障害、疲労など、子どもたちの兆候を早期に発
見し、深刻なメンタルヘルスの問題につながらないための仕組みを設置す
ること。
[1]UNESCO, COVID-19 Educational Disruption and Response https://en.unesco.org/covid19/educationresponse
[2]IASC, Interim Briefing Note, https://interagencystandingcommittee.org/system/files/2020-03/IASC%20Interim%20Briefing%20Note%20on%20COVID-19%20Outbreak%20Readiness%20and%20Response%20Operations%20-%20MHPSS_0.pdf
[3] Promoting Healthy movement behaviours among children during the COVID-19 pandemic, https://www.thelancet.com/pdfs/journals/lanchi/PIIS2352-4642(20)30131-0.pdf
[4] US National Library of Medicine National Institute of Health, Depression from childhood through adolescence: Risk mechanisms across multiple systems and levels of analysis, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4327904/
■PROTECT A GENERATION 新型コロナウイルス感染症からこの世代を守るための5つの活動分野
■セーブ・ザ・チルドレンが、新型コロナウイルス感染症 緊急子ども支援として行っているさまざまな活動や情報のご紹介
[4] US National Library of Medicine National Institute of Health, Depression from childhood through adolescence: Risk mechanisms across multiple systems and levels of analysis, https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4327904/
■PROTECT A GENERATION 新型コロナウイルス感染症からこの世代を守るための5つの活動分野
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