イエメン(公開日:2026.03.27)
【イエメン ノンフォーマル教育事業完了報告】子どもたちの学習を支えるための支援で見えた変化
イエメンにおける子どもたちへの教育は大きな課題になっています。イエメン全土で現在学校に通うことができていない子どもたちは320万人に上り[1] 、 紛争が激しい地域から国内の他の地域に逃れてきた国内避難民の子どもたちは、特に学習機会を得にくい状況にあります。(最新の事業背景の詳細は、2025年9月に開始した事業の記事をご覧ください。)
こうした状況を受け、2024年10月20日から2025年7月19日にかけて、セーブ・ザ・チルドレンは、現地パートナー団体のSOUL for Developmentと協働して、ラヒジュ県で国内避難民キャンプにおけるノンフォーマル教育支援を実施しました。この事業では同県の国内避難民キャンプに居住する子どもたちが教育を継続できるよう、学習支援センターを運営し、質の高い学習の継続支援と安心・安全な学習環境の整備を行いました。
授業が円滑に行われ、生徒たちが学習に集中できるように、学習支援センターに登録した210人の生徒へ筆記用具やノートが入った学習キットを提供し、公教育のカリキュラムに準拠した通常授業を実施しました。また、長らく教育から離れてしまったことで学習に遅れが生じていた生徒38人に対して補習授業を実施しました。また、放課後にはスポーツや描画、手芸などの課外活動を実施し、子どもたちが授業以外の活動からもまなびを得られるようにしました。
子どもたちが安全な学習環境で安心してまなびを継続できるようになるには周囲の大人からの理解やサポートも不可欠です。学習支援センターの保護者会や生徒会のメンバーを中心に、地域住民に対して教育の重要性や児童労働のリスク、適切な衛生習慣などに関する啓発活動を全7回実施しました。
また、教員へは基礎的な読み書き・計算に関する指導法のほか、子どもたちの学習意欲を引き出すための教授法や紛争の影響を受けて心理的なストレスや負担を抱えている子どもたちへアプローチするための心理的応急処置(Psychological First Aid: PFA)、生徒のコミュニケーションスキルや問題解決能力を伸ばすための社会性と情動の学習(Social and Emotional Learning: SEL)などに関する研修を行いました。また、保護者会は校舎の修繕や整備に必要な物品、衛生用品を受け取り、校舎の清掃や修繕活動を行いました。さらに、活動地域では、子どもたちの保護者も教育を受けていないという課題が、保護者会から提起されたため、38人の保護者に対する補習授業を実施しました。
これらの取り組みの結果、教員の態度や姿勢、通学路の安全性や校内環境などについて質問した事後調査では、対象となった生徒89人全員が「安全な環境で安心して学習できていると強く感じる」と回答しました。生徒の学習成果も着実に改善されており、活動地域全体において子どもたちの教育を支える風土が醸成されつつあることを感じています。
最後にこの事業で支援を受けたナダさん * のストーリーを紹介します。
学習支援センターへの入学直後、ナダさん(7歳)は精神的にある困難を感じていました。ナダさんは自分自身を表現することにたびたび怖気づいてしまうことがあり、特に文字を書くときはその小さな指で本当にペンを握ることができるのか疑ってしまうほどでした。しかし、ナダさんは学習に対する意欲は持ち続けていました。学校で成長し、成功したいという熱意にあふれていたのです。
セーブ・ザ・チルドレンと現地提携団体であるSOUL for Developmentによる活動への参加を通してナダさんに変化が訪れました。ノートやペンなどが入った学習キットを受け取り、学習支援センターには課外活動用の物品が配布され、ナダさんは友達と一緒に課外活動に参加することができるようになりました。また、校舎の修繕活動も行われたことで安全な環境が整い、安心して学習に集中できるようになりました。ナダさんの学習支援センターにおける日々はゆっくりと輝き始めました。少しずつ不安は期待に変わっていき、学習支援センターでの時間を本当に楽しむことができるようになってきたのです。
周囲の教員による温かく献身的なサポートも、ナダさんの変化においてかけがえのないものでした。各教員は、研修を通じてナダさんのように学習に困難を感じている生徒をどのように理解し、支援すれば良いのか学んでいました。研修では生徒が困難に直面した際の支えになるよう感情のコントロールやクリティカルシンキングなどのスキルの伸ばし方についても取り扱われ、生徒が自分たちのことを見てくれていると感じるよう、気配りと配慮に満ち溢れた授業を実践していきました。ナダさんは活動に参加し、自分自身を表現することに自信を持つようになったのです。
学習支援センターは希望と可能性がある場所になっていきました。
ナダさんの両親は啓発活動に参加した後、自分たちの支えや関与がどれだけ子どもの教育、そして人生に大きな影響を与えるかを学びました。そして、ナダさんの学習の過程を支える決意をし、ナダさんを見守っています。
ナダさんは著しい成長を見せました。読み書きの能力は向上し、ペンを握ること、そして文字を書くことに自信を持てるようになり、自分の考えを表現することができるようになり始めました。これはナダさんの自尊心と幸福感を満たすことにもつながりました。学期の終了時点ではナダさんはクラスにおける成績上位の生徒の1人になっていました。家族や教員、事業スタッフからの支援により、学習に困難を感じていた1人の生徒から周囲のロールモデルとなったのです。
ナダさんのストーリーは国内避難民キャンプにいる多くの人々のうちの1人の話です。ナダさんと彼女の友だちは輝かしい未来に向けてさらに学びを深め、新しい道を切り開くために学習し続けられることを望んでいます。
セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下においても、子どもたちが暴力などから守られ、安心・安全な環境で学習を継続することができるようイエメンでの支援を継続していきます。
本事業は個人・法人の多くの皆さまからのご寄付により実施しました。
※プライバシー保護のため名前は変更されています。
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(海外事業部 イエメン事業担当)
[1]OCHA, “Yemen Humanitarian Needs andResponse Plan 2025”, p.44




