シリア危機(公開日:2024.11.19)
【シリア危機】国内避難民キャンプの水・衛生環境改善
シリア危機発生から13年が経過しましたが、シリアでは依然として全人口2,350万人中1,670万人が人道支援を必要としており、これは2011年の危機発生以来最悪の状況と言われています1。
特に、私たちの事業地は、シリア国内のなかでも最も支援が届きにくい地域の一つと言われています。2023年2月に発生した地震に続き、同年10月に激化した紛争、2024年5月に発生した洪水、そして今年10月再び紛争が激化しており、人々は困窮を極めています234。全人口約510万人のうち、支援を必要とする人の数は約420万人に上り、国内避難民の数も約350万人に達しています。そして、そのうち約200万人が国内避難民キャンプでの生活を余儀なくされています5。
キャンプに暮らす人たちにとっての大きな課題の一つが水・衛生に関する問題です。シリアでは、長期化する紛争やそれに伴う経済の衰退、電力不足、気候変動など、さまざまな要因が水・衛生サービスへのアクセスを妨げています6。事業地では、約40%の避難民キャンプにおいて水・衛生へのアクセスが確保されておらず、多くの住民が地元政府などから提供される断続的な水の支援や、市場で販売される高額な水を購入し生活しており、これらの水は安全でない場合もあります。また、衛生管理が行き届いていないキャンプも多く、住民らは常にコレラなどの水系感染症のリスクを抱え生活をしています7。
セーブ・ザ・チルドレンはこういった状況を改善するため、連携団体と協働し、皆さまからのご寄付とジャパン・プラットフォームの助成を受け、避難民キャンプにて活動を実施しました。2022年8月から2023年8月まで実施した事業では、水道システムの整備と子どもの保護、心理社会的支援の活動を行い(詳細はこちら)、同キャンプに暮らすすべての世帯が安全かつ十分な量の水にアクセスできるようになりました。
一方、2023年2月にシリア国境付近で発生した地震により、新たに多くの世帯が同キャンプにおいて避難生活を開始しました。水道が通っていない地域に住む新たな住民が、生活に必要な最低限の水を得るため、やむを得ず水道パイプに傷をつけるということが多発し、その結果、水の汚染や水圧の低下からくる供給量の減少が発生していました。また、水道システムの運営費不足により、水道システムが正常に機能せず、十分かつ安全な水の供給が行えていない状況にありました。さらに、共用の水・衛生施設では、照明が不足しており、夜間のトイレや給水所などへの移動に危険が伴っていたほか、地震後に新たな避難民が流入したことで、子どもたちは夜間の不安を感じ、安心してトイレを利用できなくなっていました。障害者や妊婦、高齢者に適したトイレも整備されておらず、物理的な不便や危険を被っている状況も改善する必要がありました。
そこで、2023年8月に開始した継続事業では、以下の3つの活動を行いました。
1. 安全な水へのアクセス改善
2. 水・衛生施設およびその周辺の安全確保
3. 感染症予防に関する啓発
コレラ予防に関する計412回のセッションを実施し、5歳未満の子どもを持つ母親600人に対してコレラの感染対策についての研修を行いました。多くの母親が複数回セッションに参加し、コレラに対する意識を高め、子どもを含む家族を守るために必要な知識を身につけることができました。啓発活動に参加した母親のうち、衛生習慣に関するテスト(全10問)の正答数が事前テスト時に比べて事後テストで2問以上増加した割合は、目標値であった70%を超える87%に達しました。
この事業は本年5月に完了しましたが、シリア国内の状況は今もなお厳しい状況にあります。2024年9月に勃発したイスラエル軍によるレバノンの攻撃により、シリアからレバノンに避難していた避難民を含めた約42万5千人がレバノンからシリアへ避難しており、シリア国内の人道危機はますます深刻化しています8。
<いのち・みらい貯金箱>
セーブ・ザ・チルドレンは、国内外の緊急・人道支援の最前線で、保健医療、食料やこころのケアなど幅広い支援を提供し、子どもたちの命と未来を守るために活動しています。「いのち・みらい貯金箱」は、緊急支援が必要な地で迅速に支援を行うための資金です。世界各地の自然災害や人道危機における支援に役立てられます。
(海外事業部 酒井萌乃)
特に、私たちの事業地は、シリア国内のなかでも最も支援が届きにくい地域の一つと言われています。2023年2月に発生した地震に続き、同年10月に激化した紛争、2024年5月に発生した洪水、そして今年10月再び紛争が激化しており、人々は困窮を極めています234。全人口約510万人のうち、支援を必要とする人の数は約420万人に上り、国内避難民の数も約350万人に達しています。そして、そのうち約200万人が国内避難民キャンプでの生活を余儀なくされています5。
キャンプに暮らす人たちにとっての大きな課題の一つが水・衛生に関する問題です。シリアでは、長期化する紛争やそれに伴う経済の衰退、電力不足、気候変動など、さまざまな要因が水・衛生サービスへのアクセスを妨げています6。事業地では、約40%の避難民キャンプにおいて水・衛生へのアクセスが確保されておらず、多くの住民が地元政府などから提供される断続的な水の支援や、市場で販売される高額な水を購入し生活しており、これらの水は安全でない場合もあります。また、衛生管理が行き届いていないキャンプも多く、住民らは常にコレラなどの水系感染症のリスクを抱え生活をしています7。
セーブ・ザ・チルドレンはこういった状況を改善するため、連携団体と協働し、皆さまからのご寄付とジャパン・プラットフォームの助成を受け、避難民キャンプにて活動を実施しました。2022年8月から2023年8月まで実施した事業では、水道システムの整備と子どもの保護、心理社会的支援の活動を行い(詳細はこちら)、同キャンプに暮らすすべての世帯が安全かつ十分な量の水にアクセスできるようになりました。
一方、2023年2月にシリア国境付近で発生した地震により、新たに多くの世帯が同キャンプにおいて避難生活を開始しました。水道が通っていない地域に住む新たな住民が、生活に必要な最低限の水を得るため、やむを得ず水道パイプに傷をつけるということが多発し、その結果、水の汚染や水圧の低下からくる供給量の減少が発生していました。また、水道システムの運営費不足により、水道システムが正常に機能せず、十分かつ安全な水の供給が行えていない状況にありました。さらに、共用の水・衛生施設では、照明が不足しており、夜間のトイレや給水所などへの移動に危険が伴っていたほか、地震後に新たな避難民が流入したことで、子どもたちは夜間の不安を感じ、安心してトイレを利用できなくなっていました。障害者や妊婦、高齢者に適したトイレも整備されておらず、物理的な不便や危険を被っている状況も改善する必要がありました。
そこで、2023年8月に開始した継続事業では、以下の3つの活動を行いました。
1. 安全な水へのアクセス改善
水道システムの整備と修繕を行い、かつ給水所用変圧器を設置しました。さらに、給水所の安定した稼働を確保するために、給水所管理者、オペレーターなどを新たに雇用し、提携団体が給水所の維持管理に関する指導を行いました。この結果、2023年2月に発生した地震後に避難した住民を含む、同キャンプ内の全住民が安全かつ十分な水にアクセスできるようになりました。
2. 水・衛生施設およびその周辺の安全確保
水・衛生施設とその周辺、および主要な道沿いに、計50個のソーラーライトを設置しました。これにより、女性や子どもたちが日没後もより安全に、水・衛生施設を利用することが可能になりました。また、障害者や妊婦、高齢者などのニーズに配慮し、113基のトイレを、洋式トイレの採用やドアノブの変更、スロープの設置など、インクルーシブな内装に改良したことで、誰もが物理的な不便や危険を感じることなく、トイレを使用することができるようになり、すべての住民がより安心かつ安全な生活環境を享受することが可能となりました。
3. 感染症予防に関する啓発
コレラ予防に関する計412回のセッションを実施し、5歳未満の子どもを持つ母親600人に対してコレラの感染対策についての研修を行いました。多くの母親が複数回セッションに参加し、コレラに対する意識を高め、子どもを含む家族を守るために必要な知識を身につけることができました。啓発活動に参加した母親のうち、衛生習慣に関するテスト(全10問)の正答数が事前テスト時に比べて事後テストで2問以上増加した割合は、目標値であった70%を超える87%に達しました。
この事業は本年5月に完了しましたが、シリア国内の状況は今もなお厳しい状況にあります。2024年9月に勃発したイスラエル軍によるレバノンの攻撃により、シリアからレバノンに避難していた避難民を含めた約42万5千人がレバノンからシリアへ避難しており、シリア国内の人道危機はますます深刻化しています8。
災害や人道危機から子どもたちの命と未来を守るためのセーブ・ザ・チルドレンの活動へのご支援をお願いします。「いのち・みらい貯金箱」へのご寄付 https://bit.ly/400trpi
<いのち・みらい貯金箱>
セーブ・ザ・チルドレンは、国内外の緊急・人道支援の最前線で、保健医療、食料やこころのケアなど幅広い支援を提供し、子どもたちの命と未来を守るために活動しています。「いのち・みらい貯金箱」は、緊急支援が必要な地で迅速に支援を行うための資金です。世界各地の自然災害や人道危機における支援に役立てられます。
(海外事業部 酒井萌乃)
1OCHA, Syrian Arab Republic,2024
2 UNHCR, Syria OPERATIONAL UPDATE, January-February 2024
3 OCHA, SyriaSituation Report, 15 May 2024
4OCHA, Syria Situation Report,18 October 2024
5OCHA, Syria Situation Report,18 October 2024
6 OHCA, HUMARITARIANNEEDS OVERVIEW SYRIAN ARAB REPUBLIC, March2024, P87
7 OCHA, Syria Situation Report,18 October 2024
8 UN, UN News Syria facing alarmingregional spillover, UN envoy warns, 23October 2024