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ブータン
(公開日:2025.10.06)

【ブータンでの事業開始】子どもにやさしい社会的保護制度構築に向けて

 
ブータンは、国民総幸福量(GNH:Gross National Happiness)という独自の開発の原則を提唱している国で、経済成長を過度に重視する考え方を見直し、国民の幸福に資する開発の重要性を唱えています。かつて、幸福度ランキングで上位に並んだことをきっかけに「世界一幸せな国」というイメージがある人も少なくないかもしれません。

近年、経済発展が目覚ましい国の1つでもあり、2023年には低中所得国を卒業しました[1] 。一方で、貧困の問題も深刻で、約21%の子どもたちが多次元貧困[2] の状態で暮らしており、都市部と農村地域の貧富差や、教育や医療といった基本的サービスへのアクセスの格差が問題になっています。


階段で遊ぶ子どもたちの様子


<社会的保護とは?>
病気やケガ、出産育児といった世帯の生計に影響を及ぼすライフイベントは誰にでも起こりうることですが、貧困家庭に暮らす子どもや、障害者、非正規雇用で働く人々など、特定のグループにとっては保障が受けられる仕組みの有無がその後の生活に大きく影響します。

このようなライフイベントが影響して生じる格差を埋めたり、慢性的な貧困削減のために国や政府ができることとして、社会的保護(Social Protection)があります。社会的保護の制度が機能すると、世帯の生計の安定やライフイベントのリスクへの備えが強化できることに加え、国レベルで経済発展や人的資本の開発につながると言われています。また、社会的保護は全ての人々の権利だという考えもあり、1948年に国連で採択された世界人権宣言でも社会的保護を受ける権利について言及されています[3]

一方で、現状ブータンでは、国レベルで包括的に定められた社会的保護に関する政策やガイドラインはありません。ブータンでは国の開発計画が5年ごとに作成されており、現在は2024〜2029年を対象とする第13次5ヶ年計画が実施されています。その中で、社会的保護の強化は大きな柱の一つとなっており、今まさに国家として社会的保護の仕組みを作り上げていく段階にあります。


<私たちが目指すこと>
セーブ・ザ・チルドレンは、社会的保護の制度が、特に脆弱な立場にある子どもたちにポジティブな影響をもたらすものになるよう、「子どもにやさしい社会的保護」というアプローチを各国で展開しています。セーブ・ザ・チルドレンが各国で行っている経験や知見を、今まさに社会的保護の仕組みの構築が始まろうとしているブータンで活かすことで「子どもにやさしい」視点を社会的保護制度に盛り込むができると考え、このたびブータンでの事業開始に至りました。

2025年7月には、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの職員、セーブ・ザ・チルドレン・ブータン事務所の職員、ブータン内閣事務局、財務省の担当者が一堂に会し、事業の開始に向けたミーティングを開催しました(下記写真参照)。今後は、ブータンにおいてどのような社会的保護の仕組みが必要か、実地調査や関係者との協議を通して検討し、特に貧困世帯が多い地域におけるパイロット事業の実施、その結果をもとにした効果的な支援策の特定を行っていきます。また、地方、国レベルでの社会的保護の仕組みの構築に向けた政策提言の根拠としても広く活用していきたいと考えています。

引き続き、政府の担当者や他支援団体と調整しながら、セーブ・ザ・チルドレンとして子どもの視点を取り入れた社会的保護制度の構築を目指していきます。


政府機関職員、セーブ・ザ・チルドレン・ブータン事務所職員とともに事業の開始に向けたミーティングに参加する筆者(左から2番目)


本事業は、個人・法人の多くの皆様のご寄付により実施しています。


(海外事業部 ブータン事業担当:清水 奈々子)


[1] UNICEF Country Office Annual Report 2023
[2] 単なる金銭的指標を越え、人々が日常的にどのような形で貧困を経験しているかを健康、教育、生活水準に関する指標を用いて測る。
[3] 世界人権宣言第22条および第25条参照。


 

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